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第二章―狙われた蝶―
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しおりを挟むあれから数日が過ぎた。
自分の家に戻ったものの、今はまだ何事もなく毎日を過ごせている。
テストも終わり、後は夏休みまっしぐらだ。
そんな私の目下の悩みは……
「小羽、早く見せなさい」
「依理。人には得意不得意があってね? ……あっ!」
問答無用で持っていた紙を奪われた。
とうとう帰ってきてしまったテスト結果。
まぁ想像通りというか何というか……。
先生達もつけ終わるの早過ぎだと思う。
一方の依理はというと。
「……え? これ満点が書いてあるよ?」
「自分の点数よ」
「……参りました」
勝負していたわけでもないのに、自然とその言葉が出てきた。
負けた……と思いすらしない。
私にはもったいないくらいの親友だよ、ほんと。
……でも、何よりまずは。
「定期考査終わったぁーっ!」
「うるさい。少しは落ち着きなさい」
「僕は学園祭がすっごくすっごく楽しみデス!」
ジョエル君がニコニコと話しかけてくる。
そんな彼をクラスの女の子達の視線が追いかけて来た。
この頃、女の子達の目がすっごく怖い。
依理が言うには“放っておいて大丈夫よ。ただの嫉妬だから”だそうだ。
そんなこと言ったって、私はみんなと仲良くしたいわけで。
「そうだね! あ、木下さん達が何か話したそうだよ? 行ってきなよ」
「本当ですカ? じゃあ、行ってきまス」
ジョエル君はこっちを羨ましそうに見ていた木下さん達の所に行った。
「ねぇ」
そう言って話しかけてきたのは、青山さんだった。
クラスの中でも目立つグループのリーダーだ。
「二人共、月代先生とジョエル君と仲がいいよね? どういう関係?」
「え? た、ただの先生とクラスメイトだよ?」
「ジョエル君はともかくとして、何であの……フゴフゴ」
「本当に何でもないから!」
「……そっ。ならいいや。ごめんね?」
青山さんはそのまま教室を出ていった。
青山さん、どっちかのことが好きなのかな?
そういえば、初めて面と向かってその事に触れられた。
バシバシと腕を叩かれて、ようやく依理の口を塞いでいたことを思い出した。
依理がとんでもないことを喋りだしそうだったので、咄嗟に口を塞いだのだった。
「小羽。普通忘れやしないでしょう? 人の口塞いでおいて」
「いや、その。いつもの悪いクセで……つい」
私は考え事をすると、一気に他の事に考えが回らなくなってしまう。
自分自身でもどうなんだと思う時が多々ある。
でも、人生今年で十六年。
刷り込まれたクセはなかなか消えなかった。
「……ま、いいわ。それで夏休みはどうするの?」
「うーん。お盆はお墓参りとかしなきゃいけないけど。後は空いてるよ?」
一昨年くらいまでは全員参加の補習があったらしいけど、今では定期考査の赤点者と希望者だけになったらしい。でも、赤点を辛うじて免れた私は依理という素晴らしい先生がいるので不参加。依理も一年だから参加しないって言ってるし。
だから丸々夏休みなのだ。
「夏休みくらいは何もかも忘れてパァッと過ごしたいわね」
「うん! お昼まで寝たりー、買い物したりー、おいしい物いっぱい食べたり!」
「あんまりグータラな生活してたら、あっという間に太るわよ? ま、小羽はもうちょっと肉がついた方がいいわね」
「な!? 華の女子高生に向かって太れと!?」
「あー、はいはい。ごめん、ごめん」
全然謝ってないし!
もう! 依理の馬鹿!
自分の方が痩せてるくせに!
「まっ、せっかくの補習なしの夏休みなんだし。目一杯楽しみましょうよ」
「うん! そういえば地元で夏祭りあるよね。ほら、神社の!」
「あぁ、そういえばそうね。……行くんでしょ?」
「行こ!」
「はいはい。……マンションにも様子見に行くわね?」
「うん。ごめんね?」
「いいのよ。あんたが謝ることじゃないわ」
この時までは、夏休みは楽しい長期休暇でいられた。
そう。
この時までは……。
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