3 / 7
3 正規軍
しおりを挟む
「アスタロトは〝正義公〟の別名で知られるように生真面目で、使命感の強い種族です。彼女はカイムから提供された記録情報を解析した結果、私達に下された追討勅令や処刑命令が、実は中枢種族バラキエルによる独断と先帝名の潛称による行いだったことを発見しました。バラキエルは国璽、すなわち皇帝認証符号の使用を管理する皇帝秘書官長だったのですが、他の中枢種族と違い、親衛軍や正規軍に有力な従属種族を持っていませんでした。そこで彼女は自らの私兵軍団の司令官カイムに命じ、他種族に先んじて現皇帝を討伐させることにより、枢密院における自らの地位を高めようと謀ったのです。バラキエルの賭けは失敗しました。後に、主戦力を失ったバラキエルは他種族からの攻撃により、滅亡したことが判明しました」
図10:策謀
「皇帝側近の専横を知った〝正義公〟は、悲憤慷慨しました。内戦勃発の当初、アスタロトは政治的中立を尊重して、自らの艦隊に対し、中枢種族間の戦闘への介入を禁じていました。しかし彼女は、こうした帝国中央における悪質な策謀の存在と、戦闘の拡大による無政府状態化を前に、もはやいかなる中枢種族にも帝国を統治する能力なしとして、この命令を撤回しました。そして彼女はサタンに対し、状況は極めて困難であるものの、内戦で混乱に陥った正規軍艦隊を糾合し、親衛軍や外周星域内の友好種族とも協力して、壊滅を免れた宙域を防衛するよう進言したのです」
図11:進言
「時を同じくして、親衛軍のバールゼブル艦隊からも恐ろしい知らせがありました。中枢種族による超新星兵器の使用と、皇帝種族の消息不明が通報されたのです。これらを受けて現皇帝は、帝国の混乱と破壊を終息させるため、やむなく新王朝の創始を宣言しました。彼女は友好的な軍事種族である親衛軍のバールゼブルと正規軍のアスタロトに対し、中心星域の治安回復と敵対勢力の星域外進出阻止を命令しました。また彼女自身はアスモデウスと私を伴って開発途上星域に帰還し、さらには銀河系外周星域にも赴いて、事態の説明と協力要請を行うことを決定しました。これは新型駆動機関を装備した秘匿艦隊の出現や諸侯・軍司令官の分離・独立など、状況は依然として楽観を許さず、両星域における理解と支持が戦争の帰趨と戦後復興を左右すると考えられたためです」
図12:崩壊
「その後幸いにも、親衛軍種族の多くは内部抗争によって損耗した後に、バールゼブル艦隊の追撃を受けて壊滅または投降しました。当時の親衛艦隊は傀儡化された先帝のもとで、実質的には中枢種族とその系列種族が兵力を拠出して運営されていました。そのため内戦が生じると間もなく、彼女達もまた同士討ちを開始してしまい、バールゼブルの介入と優勢が明らかとなるや、一部の超空間駆動を有する種族のみがアンドロメダ銀河に逃亡したのです」
「一方、正規軍では親衛軍ほど中枢種族による系列化が及んでおらず、またアスタロトが私とカイムの戦闘事件を周知して、先帝なき後の抗争により同胞相討つことの悲劇を強く訴えました。そのため彼女達はその大半が新王朝に帰順して、帝国からの分離を企てた諸侯や軍司令官に対する平定・復帰作戦に参加しました。さらにこの作戦では、アスタロトの技術部門副司令官ヴォラクが姉妹種族のストラス・アミーと心を結び、量子情報戦と戦闘管制のための演算を行っています。これによりアスタロト艦隊は、相手方の通信と探知を妨害しつつ、最適な包囲陣形を形成して降伏を促すことにより、双方の犠牲を最小限に止めることができました」
「なおアスタロトは、正規軍の上官として私をサタンの副長官職に推薦した、前任者です。彼女はそれまで長く軍事部門副長官として現皇帝を補佐・警護し、彼女の〝未来あるもの〟への深き愛情と配慮に学んで、深く敬愛の情を抱くに至りました。また私達は人類文明への支援に際しても現皇帝に協力し、彼女は愛と豊穣の神イシュタル、私は畜産の神アメンとして皆様に記憶されています。今や人類の文明は偉大なる進歩を達成し、星間社会に参加して多大な貢献をなし得るまでに発展を遂げられました。アンドロメダ銀河遠征に先立ち、総司令官として当地を再訪した際は、現在の私と同様に、彼女の胸中もまた感無量の思いに溢れたことでしょう」
図13:女神
図10:策謀
「皇帝側近の専横を知った〝正義公〟は、悲憤慷慨しました。内戦勃発の当初、アスタロトは政治的中立を尊重して、自らの艦隊に対し、中枢種族間の戦闘への介入を禁じていました。しかし彼女は、こうした帝国中央における悪質な策謀の存在と、戦闘の拡大による無政府状態化を前に、もはやいかなる中枢種族にも帝国を統治する能力なしとして、この命令を撤回しました。そして彼女はサタンに対し、状況は極めて困難であるものの、内戦で混乱に陥った正規軍艦隊を糾合し、親衛軍や外周星域内の友好種族とも協力して、壊滅を免れた宙域を防衛するよう進言したのです」
図11:進言
「時を同じくして、親衛軍のバールゼブル艦隊からも恐ろしい知らせがありました。中枢種族による超新星兵器の使用と、皇帝種族の消息不明が通報されたのです。これらを受けて現皇帝は、帝国の混乱と破壊を終息させるため、やむなく新王朝の創始を宣言しました。彼女は友好的な軍事種族である親衛軍のバールゼブルと正規軍のアスタロトに対し、中心星域の治安回復と敵対勢力の星域外進出阻止を命令しました。また彼女自身はアスモデウスと私を伴って開発途上星域に帰還し、さらには銀河系外周星域にも赴いて、事態の説明と協力要請を行うことを決定しました。これは新型駆動機関を装備した秘匿艦隊の出現や諸侯・軍司令官の分離・独立など、状況は依然として楽観を許さず、両星域における理解と支持が戦争の帰趨と戦後復興を左右すると考えられたためです」
図12:崩壊
「その後幸いにも、親衛軍種族の多くは内部抗争によって損耗した後に、バールゼブル艦隊の追撃を受けて壊滅または投降しました。当時の親衛艦隊は傀儡化された先帝のもとで、実質的には中枢種族とその系列種族が兵力を拠出して運営されていました。そのため内戦が生じると間もなく、彼女達もまた同士討ちを開始してしまい、バールゼブルの介入と優勢が明らかとなるや、一部の超空間駆動を有する種族のみがアンドロメダ銀河に逃亡したのです」
「一方、正規軍では親衛軍ほど中枢種族による系列化が及んでおらず、またアスタロトが私とカイムの戦闘事件を周知して、先帝なき後の抗争により同胞相討つことの悲劇を強く訴えました。そのため彼女達はその大半が新王朝に帰順して、帝国からの分離を企てた諸侯や軍司令官に対する平定・復帰作戦に参加しました。さらにこの作戦では、アスタロトの技術部門副司令官ヴォラクが姉妹種族のストラス・アミーと心を結び、量子情報戦と戦闘管制のための演算を行っています。これによりアスタロト艦隊は、相手方の通信と探知を妨害しつつ、最適な包囲陣形を形成して降伏を促すことにより、双方の犠牲を最小限に止めることができました」
「なおアスタロトは、正規軍の上官として私をサタンの副長官職に推薦した、前任者です。彼女はそれまで長く軍事部門副長官として現皇帝を補佐・警護し、彼女の〝未来あるもの〟への深き愛情と配慮に学んで、深く敬愛の情を抱くに至りました。また私達は人類文明への支援に際しても現皇帝に協力し、彼女は愛と豊穣の神イシュタル、私は畜産の神アメンとして皆様に記憶されています。今や人類の文明は偉大なる進歩を達成し、星間社会に参加して多大な貢献をなし得るまでに発展を遂げられました。アンドロメダ銀河遠征に先立ち、総司令官として当地を再訪した際は、現在の私と同様に、彼女の胸中もまた感無量の思いに溢れたことでしょう」
図13:女神
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる



