幽霊保険

tatuya

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霊媒師 2

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「大丈夫よ。もう怒ってないから。ねえ。」
お願いするように、こちらに手を合わせてきた。そこまでされると心が動く。それに彼女がわが子のように大切に膝に抱えている幽霊に見て触れてみたいそう思っていた。

 どうしようか迷っていると、早くしてと彼女に急かされたので慌てて立ち上げり彼女のところへ行った。

「気を付けてね。膝の上に彼女が寝ているから。」
彼女の後ろに周り込んだが何も見えない。全て彼女の演技なのではないのかと思っていると彼女が言った。

「私の肩に手を置いて。」
ダークブラウンのシュシュで肩甲骨まである長い髪を一束にした。
戸惑ったがここでぐずぐずしていると嫌らしい想像しているのと誤解されそうだから、すうと彼女の右肩に置いた。

制服の柔らかさが彼女の肌と温もりと勘違いしドキドキした。

「可愛いでしょう。チーちゃんだって。」
お母さんのような優しい声で言った。彼女の長く真っ直ぐなまつ毛の先に背中を丸めて彼女にしがみつきいている幼女が寝ているのが見えた。紺色と白の横の縞模様の半そでに、白と黒チェック柄の長ズボンを履いていた。
年齢は3歳ぐらいだろう。幽霊には見えない。ぷっくりとしたほっぺに赤みがあり、触れれば温もりを感じそうだ。

夏の太陽に干したてふとんと甘酸っぱい汗のにおいが混ざった香りが、鼻に染みてくる。その匂いに気が付いたころには、舐められそうなほど近くに彼女の耳があった。

勢いよく彼女から離れた。

驚いた様子でこちらを見る彼女の膝は不自然にスカートが折れているだけで先ほど見た彼女は居なかった。

珠理ちゃんと目が合った。最初から見てないみたいに黒板のシミをじっと見つめた。そっと下を向いた彼女を視界の端に入れながら。じんわりと耳が熱くなった。

「珠理ちゃんって大変だね。幽霊に絡まれて。」
沈黙がいたたまれずに言った。喉に何かが詰まって最初の5文字を言った後、一度咳をして言った。余計に緊張してしまった。

「こんなことは初めてよ。話しかけられることはたまにあるけど、こんなに触れ合ったのは初めて。」

何も変わった様子は声から感じなかった。別に彼女には伝わっていなかったらしい。ほっとしたがちょっと悔しかった。

「人間に触れる霊って少ないの。いくら、私が霊感が強くても。じゃないと学校の廊下なんて歩けないわ。もう帰らないと。学校にはたくさんいるからね。」
ゆっくりと彼女が立ち上がった。チーちゃんはしっかり抱かれているのだと見えないけど分かる。こっちを振り返らず教室から出た。慌ててカバンを持ち、彼女が座っていたイスを元に戻して後を追った。
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