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第1部
12 観劇で意識させよう作戦!
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少し寒さも緩んできたある日の休日。俺とギルは街の中心に新しく建てられた劇場に来ていた。
今日は王都から話題の歌劇団が来て公演を行うのだ。当然チケットは即完売、満員御礼だったが、俺はギルに頼み込んでチケットを確保してもらった。
「ギル、チケットありがとう」
「メイソン家に招待チケットが送られて来たんだけど、誰も興味無くて困ってたんだ、空席にするのも心苦しいし。あ、ここが席だね」
流石領主のメイソン家。座席は舞台に近いボックス席だった。豪華な装飾の室内は全体を深い赤で統一してあり、ベルベットのソファーは座り心地も良い。
「それにしても珍しいね。前は観劇に興味ないって言ってなかったっけ?」
ギルの指摘通り、俺は観劇よりもピクニックとか運動したりとかの方が好きだった。というか、本格的な観劇は初めてだ。でも、この公演に来なくてはいけない重要な理由があるのだ。
今回の劇のストーリーは、幼馴染の騎士と姫が離れ離れになり、紆余曲折しながらも互いを思い合うラブストーリーらしい。騎士と姫。そう、まさにギルとリリーの立場と同じだ。
今日の俺のミッションはこの劇を見せ、リリーとの関係を意識させること。そう、名付けて、『観劇で意識させよう作戦』だ!
「この劇だけはどーしてもギルと見たかったの!」
ぐっとこぶしを握り力説すると、ギルは目を細めて笑った。
その時、開演を告げる音楽が音楽が流れ、会場のざわめきが消えていく。俺たちは静かに舞台を見つめた。
「う、ううぅ~~~……」
「レイ、もう泣かないで」
「だって、だってぇ……」
ギルに支えられ、ふらふらと歩きながら、渡されたハンカチを受け取る。
涙は流しつくしたはずなのに、何故かまだまだ止まらなかった。
終演後、俺たちは夕食を摂りに近くのレストランに入った。
そこで料理と酒を楽しみながら、劇の感想を交換しあった。
結論から言うと、劇は悲恋だった。身分差すら乗り越え、愛を貫いた騎士だったが、姫を守って最後に命を落としてしまうのだ。騎士の愛を理解した姫はその遺志を継ぎ、生涯独身のまま立派な女王として国を治める。
切ないながらも感動的な話だった。
俺は観劇中にボロ泣きし、ギルと話している最中にも少し泣いてしまった。その涙は感動によるもので、悲しみによるものではなかった。
でも、レストランを出て歩いている途中、ふと思ったのだ。もし、劇と同じようにギルが死んでしまったら……?
リリーに危機が迫った時、ギルは命をかけて守ろうとするだろう。
ギルが死ぬ。
そう考えるだけで、悲しくなって涙が止まらないのだ。
俺は腕にしがみつきながらギルを見上げた。
「死なないよね?」
「えっ?」
「ギルは(リリーを)ひとり残して死んだりしないよね?」
ギルは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに花が綻ぶように笑った。
「もちろん。俺はふたりで生き残る方法を目指すよ」
ギルに頭を撫でられて、ようやく涙が止まった。悲しみが去ると、今度は逆に楽しくなってきて、つい鼻歌が漏れた。
「♪~~♪♪~~」
「気持ちを伝えあった時の歌だね」
「そう! あのシーン、良かったよなぁ……」
夜の庭園での密会。逞しい騎士の朗々とした歌声に姫が見事な金髪を揺らしながら応える。二人の距離は徐々に縮まり、最後はその影が重なる――
幻想的で美しいシーンだった。
「我が心に宿る炎、それはあなたへの愛。運命が結んだ出会い、その糸を解くことはできない」
ギルが歌いだしを口ずさんでチラリを俺を見た。オーケー分かった。騎士と姫ごっこだな。俺はギルの手を離し、少し距離を取って向かい合った。
「あなたと出会った日から、私の心は奪われてしまった。あなたの勇ましい姿、その優しさに惹かれてしまったの」
「運命が結んだ出会い、その糸を解くことはできない。あなたを守り抜き、あなたを愛し続けることを誓う」
「あなたと一緒にいると、私は安心できる。このまま、時が止まってしまえばと思うほどに、私はあなたを愛しています」
劇中の二人を真似して、手を取り合ってくるくる回る。
「あなたの美しい銀の髪に煌めく光は、まるで世界を照らす光のよう」
途中歌詞の間違いに気付いたが、指摘する方が野暮だろう。構わず歌い続ける。
「あなたが私の側にいてくれる限り、恐れることは何もないわ」
「「この愛を大切に、あなたと共に歩んでいこう」」
ギルが俺をぎゅっと抱きしめる。完全再現だ。
「ふふ、ふふふ……」
楽しくってたまらくて笑いが止められない。温かい腕の中で、俺の意識は遠退いていった。
今日は王都から話題の歌劇団が来て公演を行うのだ。当然チケットは即完売、満員御礼だったが、俺はギルに頼み込んでチケットを確保してもらった。
「ギル、チケットありがとう」
「メイソン家に招待チケットが送られて来たんだけど、誰も興味無くて困ってたんだ、空席にするのも心苦しいし。あ、ここが席だね」
流石領主のメイソン家。座席は舞台に近いボックス席だった。豪華な装飾の室内は全体を深い赤で統一してあり、ベルベットのソファーは座り心地も良い。
「それにしても珍しいね。前は観劇に興味ないって言ってなかったっけ?」
ギルの指摘通り、俺は観劇よりもピクニックとか運動したりとかの方が好きだった。というか、本格的な観劇は初めてだ。でも、この公演に来なくてはいけない重要な理由があるのだ。
今回の劇のストーリーは、幼馴染の騎士と姫が離れ離れになり、紆余曲折しながらも互いを思い合うラブストーリーらしい。騎士と姫。そう、まさにギルとリリーの立場と同じだ。
今日の俺のミッションはこの劇を見せ、リリーとの関係を意識させること。そう、名付けて、『観劇で意識させよう作戦』だ!
「この劇だけはどーしてもギルと見たかったの!」
ぐっとこぶしを握り力説すると、ギルは目を細めて笑った。
その時、開演を告げる音楽が音楽が流れ、会場のざわめきが消えていく。俺たちは静かに舞台を見つめた。
「う、ううぅ~~~……」
「レイ、もう泣かないで」
「だって、だってぇ……」
ギルに支えられ、ふらふらと歩きながら、渡されたハンカチを受け取る。
涙は流しつくしたはずなのに、何故かまだまだ止まらなかった。
終演後、俺たちは夕食を摂りに近くのレストランに入った。
そこで料理と酒を楽しみながら、劇の感想を交換しあった。
結論から言うと、劇は悲恋だった。身分差すら乗り越え、愛を貫いた騎士だったが、姫を守って最後に命を落としてしまうのだ。騎士の愛を理解した姫はその遺志を継ぎ、生涯独身のまま立派な女王として国を治める。
切ないながらも感動的な話だった。
俺は観劇中にボロ泣きし、ギルと話している最中にも少し泣いてしまった。その涙は感動によるもので、悲しみによるものではなかった。
でも、レストランを出て歩いている途中、ふと思ったのだ。もし、劇と同じようにギルが死んでしまったら……?
リリーに危機が迫った時、ギルは命をかけて守ろうとするだろう。
ギルが死ぬ。
そう考えるだけで、悲しくなって涙が止まらないのだ。
俺は腕にしがみつきながらギルを見上げた。
「死なないよね?」
「えっ?」
「ギルは(リリーを)ひとり残して死んだりしないよね?」
ギルは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに花が綻ぶように笑った。
「もちろん。俺はふたりで生き残る方法を目指すよ」
ギルに頭を撫でられて、ようやく涙が止まった。悲しみが去ると、今度は逆に楽しくなってきて、つい鼻歌が漏れた。
「♪~~♪♪~~」
「気持ちを伝えあった時の歌だね」
「そう! あのシーン、良かったよなぁ……」
夜の庭園での密会。逞しい騎士の朗々とした歌声に姫が見事な金髪を揺らしながら応える。二人の距離は徐々に縮まり、最後はその影が重なる――
幻想的で美しいシーンだった。
「我が心に宿る炎、それはあなたへの愛。運命が結んだ出会い、その糸を解くことはできない」
ギルが歌いだしを口ずさんでチラリを俺を見た。オーケー分かった。騎士と姫ごっこだな。俺はギルの手を離し、少し距離を取って向かい合った。
「あなたと出会った日から、私の心は奪われてしまった。あなたの勇ましい姿、その優しさに惹かれてしまったの」
「運命が結んだ出会い、その糸を解くことはできない。あなたを守り抜き、あなたを愛し続けることを誓う」
「あなたと一緒にいると、私は安心できる。このまま、時が止まってしまえばと思うほどに、私はあなたを愛しています」
劇中の二人を真似して、手を取り合ってくるくる回る。
「あなたの美しい銀の髪に煌めく光は、まるで世界を照らす光のよう」
途中歌詞の間違いに気付いたが、指摘する方が野暮だろう。構わず歌い続ける。
「あなたが私の側にいてくれる限り、恐れることは何もないわ」
「「この愛を大切に、あなたと共に歩んでいこう」」
ギルが俺をぎゅっと抱きしめる。完全再現だ。
「ふふ、ふふふ……」
楽しくってたまらくて笑いが止められない。温かい腕の中で、俺の意識は遠退いていった。
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