悪役になるのは嫌なので、さっさと表舞台から退場したいと思います。

深樹ロア

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幼少期編

15 仲良しこよし

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 リオネスとの仲直り?を無事に終えた数週間後の今日、俺はエニアくんとリオネスの2人と一緒に遊ぶ約束をしたので、今は遊ぶ用の服装にお着替え中である。いや、お着替え中というより……これは着せ替え人形みたいな感じかもしれない。

「やっぱり、ライにはこれが似合うと思うんだけど」
「ぐっ……た、確かに…で、ですがこっちも負けてませんよ!」
「あ、あはは…」

 先程から兄様とアリーが今日の俺の服装を巡って対決している。ちなみにエルザは兄様、クルルはアリーの選んだ服に似合うタイやアクセサリーをそれぞれ選んでいた。

「ほら、ライにはこのグレーのフリルブラウスが似合うと思うんだけど」
「そ、それはそうですが!こっちの王道の白いフリルブラウスの方が、クライド様の白い肌と艶のある藍色の髪に映えていいと思います!」
「…それは、そうだけど……」

 もうずっとこんな感じである。いい加減にしないと、約束の時間がすぐに来てしまうというのに。…もういいか、俺が決めたら1発だろう。

「…2人とも遅いです。もう約束の時間も迫っているので、今日は兄様の選んでくれた方にします。アリーのやつは、前に似たようなの着たし」
「やった」
「えぇ~!」

 兄様は小さく手を握って喜んでいたし、アリーはガーン!という効果音がぴったりなくらい落ち込んでいた。だが、兄様の方も似合うとすぐにやる気になっていた。単純すぎやしないかアリー。
 …というか前も思ったが、なんで俺の服装はフリフリが付いている服ばかりが選ばれるのだろうか。

 そうこうしてる間に、今日の服装1式が決まったようだ。グレー色のぶかっとしたフリフリ付きのブラウスに紫色の宝石が着いたフリルタイ。黒いハーフパンツと足首までの長さの黒い靴下を履いて完成である。何故かまたもやメイクをされたのだが、そんなに必要なのだろうか。

 着替えとメイクが終わると、ちょうどタイミングよくリオネスとエニアくんが到着したという知らせが届いた。
 玄関口まで兄様達と迎えに行くと、パーティーの時とまではいかないが、それでも十分なくらいオシャレな格好をした2人が護衛と共に待っていた。

「あ!エニアくん、リオネス!ごめんね待たせちゃって!」
「かっ……!」
「……!」

 何故か2人とも目を見開いて固まってしまった。何を見ているのか気になって後ろを向くと、兄様達がうんうんと頷いていた。何があったのだろうか。

「…?エニアくん、何かあったの?」
「いや、なにもないよ?…それより、今日の服装もとても似合ってるね!」
「そう?ありがと!」
「…この服は自分で選んだのか?」
「気になる所そこなの?兄さん…」
「だってこんなにもかわ………良く似合っているんだぞ?素晴らしい感性の持ち主だ、是非感謝を述べたい」
「それはそうですね」

 ハッとした表情で頷くエニアくん。…そんなに似合ってるのか、これ。選んだ兄様も嬉しいだろうな。

「この服を選んだのは兄様だよ。俺の服装を巡ってずっとアリーと張り合ってたんだから」
「そうだったのか、ありがとうベリオル殿」
「光栄です。でも最終的には、ライが僕の方を選んでくれたんですよ。ね、ライ」
「だって時間がなかったので…」 
「ふふっ、それでも嬉しいんだよ。さぁ、ここでの立ち話はここまでにしようか。ライ、今日遊ぶ用の部屋にご案内出来るかい?」
「はい兄様!こっちだよ、2人とも!」

 俺は兄様に頭を軽く撫でられて、リオネス達を遊ぶ用の部屋に案内をした。

 案内した部屋は広々としていて、普段の部屋が五つ分くらいある広さだ。俺は安全のため外に出られないので、今日はここでお話をしたりちょっとした魔術を見せて貰ったりするのである。

「そうだクライドくん」
「ん?」
「僕ね、誕生日の翌日に”属性判定の儀”を受けたんだ。それで僕は《炎》と《光》だったんだ!」
「エニアくんは二属性持ちだったの!?凄い!」

 属性判定の儀は、6歳を迎えた子ども達が受ける儀式で、その名の通り自らが使える…素質がある属性を知ることができる。何故6歳からかというと、5歳あたりまではどの属性に体が馴染むか定まっていない為である。そもそも判断方法が、各属性の精霊達の力が集められた水晶に手をかざして、その時に反応した精霊の属性がその人の属性だと判断される。ゆえに、俺はまだ5歳のため受けていないはずだ。
 そして、二属性持ち。二属性持ちはかなり少ない確率で存在していて、二つの属性を扱うことができる人のことだ。普通は体に馴染む属性は一つだけなのだが、稀に《水》と《樹》,《風》と《雷》などの相性がいい属性2つの素質がある人もいる。そんな人たちは、精霊が見えたり会話ができたりするらしい。
 凄い凄いとエニアくんを褒めていると、何故かリオネスがむすっとした顔でこっちを見ていた。

「ん?どうしたリオネス?」
「別に、エニアばかり褒められてずるいなと思っただけだ…」
「リオネス……お前だって凄いよ。だって、努力はそう簡単に続けられるものじゃない。それを悪意に晒されようとも投げ出さなかったんだから、リオネスは十分偉いよ」

 えらい、えらいとリオネスの銀髪を撫でてやると、空色の瞳を満足そうに細めて俺の手に擦り寄ってきた。
 …相変わらず顔面偏差値高いな、さすがは攻略対象者。にしても、髪がサラッサラですごく手触りがいい。俺の髪はふわっとしているのでちょっとだけ羨ましい。なんて思っていたら、後ろからクスッと笑う声が聞こえてきた。

「ふふっ…ライって、こんなに大人っぽい一面もあったんだね」
「あっ……」

 兄様達がいたことをすっかり忘れていた。待てよ、てことは今の流れを兄様に見られてたってことか!?…やばい、ものすごく恥ずかしい。

「ライ、顔真っ赤だよ?大丈夫?」
「い、いえ…大丈夫です兄様……」

 兄様には甘えた面しか見せてなかったのもあり,その後もしばらくは顔の熱が下がらなかった。
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