婚約破棄された、女はすごくあざとい

ルイ

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「リリエル様、本当に大丈夫ですか?」

 私を支えるレオン様の腕の中で、私は儚げに瞬きをした。

「……はい、少しだけ、目眩が……」

 私はゆっくりと立ち上がろうとするが、わざと膝をふらつかせる。すると、すぐにレオン様が私をしっかりと抱きとめた。

「無理をなさらないでください」

「すみません……ご迷惑を……」

 小さく俯き、申し訳なさそうに呟く。そうすれば——

「リリエル様が謝ることではありませんわ!」

「王太子殿下の方が酷いのです! こんなにも美しく、健気で、優しい令嬢を……!」

 ほらね。周囲の令嬢たちの怒りが、私の味方になってくれる。

(これで宮廷での私の立場はしばらく安泰ね)

 婚約破棄された令嬢は、下手をすればすぐに社交界で孤立する。だけど、私はそうはならない。私は、皆に愛される悲劇のヒロインを演じ続けるのだから。

 ただ、問題は——

(……このまま公爵家に戻るだけでは、つまらないわね)

 王太子妃の座はもうない。ならば、次に目指すべきは?

「……リリエル様?」

 レオン様が私を覗き込む。私は小さく微笑みながら、ゆっくりと彼の手を取った。

「レオン様、ひとつ……お願いがございますの」

「……なんなりと」

 優しく微笑む彼を見上げながら、私はゆっくりと言った。

「わたくし……しばらく、この王都を離れたいのです」

 すると、広間にいた貴族たちがざわめいた。

「まあ……リリエル様が王都を?」
「そんな……! 婚約破棄されたからといって、逃げる必要はありませんわ!」

 ふふ、違うのよ。私は逃げるんじゃない——

「……わたくし、少し、自分自身を見つめ直したいのです」

 そう、ここで「自分探し」という理由をつければ、誰も私を責めることはできない。それどころか——

「なんてお健気なの……!」
「傷ついた心を癒すために、旅に出るのね……!」

 はい、第三段階、成功。

 これで私は「ただの婚約破棄令嬢」ではなく、「新たな道を模索する美しく儚げな令嬢」になれる。そして、私を気にかける人々の関心はそのまま私に向いたまま。

「……分かりました。リリエル様のご希望であれば、私が護衛を務めましょう」

 レオン様がそう言った瞬間、私は小さく目を見開いたふりをする。

「そんな……恐れ多いですわ……」

「いえ、あなたを独りで行かせるわけにはいきません」

 ……ふふ、これで旅の同行者も確保ね。

 さあ、これからどんな物語が始まるのかしら?

 でも、大丈夫。

 だって私は——すごくあざといのだから。
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