婚約破棄された、女はすごくあざとい

ルイ

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「リリエル様、本当に王都を離れられるのですか?」

 数日後、公爵家の屋敷。私は母と侍女たちに囲まれながら、慎ましく微笑んだ。

「ええ。わたくし、少し自分を見つめ直したいのです」

 母は寂しそうにため息をつきながら、私の手をそっと握った。

「……あなたは優しすぎるのよ、リリエル。婚約破棄されるような子ではないのに……」

「お母様……」

 私はわざと俯き、か細い声で呟く。そして、声を震わせながら囁くのだ。

「……わたくしが、至らなかったのでしょうね……」

 これを言えば、どうなるかは分かりきっている。

「そんなことはありません!」

 すぐに侍女たちが泣きそうな顔で口々に訴えた。

「リリエル様がどれほどお優しく、誰よりも美しいか、わたしたちは知っています!」
「王太子殿下の見る目がなかったのですわ!」

 ——はい、第四段階、成功。

 私は悲劇の令嬢として、皆の同情を一身に集め続ける。そうすれば、王都を離れるという私の決断も「痛ましくも美しい旅立ち」に変わるのだから。

(ここまで順調ね。でも……)

 私はふと、窓の外に目を向けた。王太子アレクシス殿下の動向が、少し気になる。

 婚約破棄の後、彼は何を思っているのかしら? 貴族たちの間では「あまりにも冷酷」「リリエル様が気の毒すぎる」との声が広がりつつある。彼の評判は間違いなく落ちているはず——

(……まあ、彼が今さら私を惜しんだとしても、もう遅いのだけれど)

 私はあくまで「哀れな婚約破棄令嬢」として去る。そうすれば、彼はじわじわと「もしかして、間違ったのでは?」と思い始めるはず。それこそが、私の最後の罠。

 私が去った後に後悔しても、もう遅いのだと、そう思い知らせてあげるのだから。

「リリエル様、お支度が整いました」

 侍女のひとりがそう言うと、私はゆっくりと微笑んだ。

「ありがとうございます。……それでは、参りましょうか」

 玄関を出ると、そこにはすでにレオン様が待っていた。

「お待たせしました、レオン様」

 そう言うと、彼は優しく微笑んだ。

「心配しないでください。私が必ず、お護りします」

 ええ、頼もしいわ。でも、この旅の目的は「傷心を癒す」ことじゃない。

(私が新たな人生を見つけるための、舞台作りよ)

 そう、私はどこまでも計算高く、あざとく生きるのだ。

 だって私は——すごくあざといのだから。

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