婚約破棄されたので、自由に生きようと思います

ルイ

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村を襲う影

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 村長の話によれば、王都から「エルステッド公爵家の令嬢が視察に来る」という知らせが届いたのは三日前だったという。

(そんな話、私も家族も聞いていないはず……)

 何者かが私の名前を使い、この村に何か仕掛けようとしている——そう考えざるを得なかった。

「その知らせを持ってきたのは誰でしたか?」

「それが……使者と名乗る男でしたが、王宮の紋章が入った手紙を持っており、間違いないと思っていたのです」

(王宮の紋章……ますます妙ね)

 私はしばらく考え込んだが、今は確証がない。下手に騒いでも仕方がないので、一旦その話は保留にすることにした。

「それよりも、魔物の被害について詳しく教えてください」

「ええ、実は昨夜も……」

 村長が話そうとした、その瞬間——

 ——ギャアアアア!!

 村の外から、鋭い悲鳴が響いた。

「な、何だ!?」

「魔物だ!! 魔物が出たぞ!!」

 村人たちが一斉に騒ぎ出す。

(今の声……近い!)

 私はすぐに村の入り口へと駆け出した。護衛の騎士がいない以上、自分の身は自分で守らなければならない。

 村の外れに到着すると、そこには倒れた村人と、彼を襲おうとしている魔物の姿があった。

 それは狼に似ていたが、異様に大きく、黒い毛並みから禍々しい瘴気を発している。

「……魔狼(デモン・ウルフ)」

 この世界では、魔力を持った生物が時折異形の魔物へと変貌することがある。魔狼はその一種で、凶暴な性格と高い知能を持ち、群れで行動することもある危険な存在だ。

 私はドレスの裾を乱暴に引き千切り、動きやすいように整える。

(私を誰だと思っているの? エルステッド公爵家の娘よ。訓練なしで王太子妃教育ができると思ったら大間違いよ)

 そう、私は王太子妃としてだけでなく、王族を守るための最低限の護身術や戦闘技術も学んでいた。公爵家に生まれた以上、ただの飾りではいられないのだから。

 魔狼が私に向かって飛びかかる——その瞬間、私は腰に隠し持っていた短剣を引き抜き、刃を煌めかせた。

「——クソほど簡単ね」

 鋭い一閃が、闇を切り裂いた。
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