老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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51話 オークの村に訪れた悪夢

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 ユキムラは森を歩いている。

 俯瞰視点で周囲の状況を把握しながら安全に、自分の通った道筋がわかるように小型の照明を定期的に設置していく。

これは新型で特殊な魔道具を通して見るとはっきり輝いて見えるモード、秘匿モードと、通常の照明モードがある。 今は奇襲を目指しているので秘匿モードだ。

 オークが通る獣道をどんどんと奥へと進んでいく、奥へとね(オークだけに……)、何体か魔物を切り捨てながら奥へと進んでいく。

 レンはユキムラのすぐ後ろをついてきている。ふと森の中で篝火のような物が目に入る。

 

「レン、頭下げて隠密行動取るよ見張りがいる」



 ユキムラとレンはマントを身にまとう。

 これも魔道具だ、周囲の背景を投影して音を遮断する。

さらに光を歪めることで光学迷彩の効果も持つ。



 こういった森とかで奇襲をかけるのに非常に役立つ一品になっております。



「あら~結構おおいね、見える範囲でー……32,33,34そのあたりか、建物も多いし3倍は見とくか。うーん、悪いんだけどレンそっちの影で結界張って待っててくれない? 流石にこの数だとオークと言えどレンを守ってられなくなるかも……」



 こうして話していても外には音は漏れません。



「分かりました、師匠も無理はしないでくださいね」



 レンは指定した場所へ移動する、防御結界を発生装置を使うと、かなり強固な結界をドーム状に発生させる。内部にいるレンはマントのせいでわかりにくいが、周囲の草とかがガサガサと結界に押されて動き音を出す。



【グモッ?】



 当然オークの意識を引いてくれる。

 ドスドスと重そうな足音をさせながら、不自然に開いた空間へと近づいていく、ユキムラは足音もなく2体のオークの背後へと回り込む。

 斬られた方も気が付かないほどに鋭く、一刀のもとに首をはねる。

 そのまま村の中へと侵入する、まだ村の入口の異変に気がついたオークはいない。

 比較的物陰で作業をしているオークを狙い、一体、また一体と始末していく。

 気配もせず音もしない、しかし次々とオークは魔石へとその身を変える。

叫ぶ間も与えない。

 

「このままだと一方的過ぎてリハビリにならないな。そしたらレン見ててねー」

 

「はい、師匠!」



 インカムで連絡を取り、おもむろにマントを収納する。



【!?】



 いきなり村の真ん中に人間が現れた、オークは大混乱だ。



【グ、グボー!!】



 やっと一体襲い掛かってきた。

 無茶苦茶に振り下ろした棍棒を持つ腕を弾き、一刀のもとにぶった斬る。

 振り下ろそうとした棍棒が地面に落ちる前に、二つになったオークが魔石に変わる。

防御から攻撃までに一切の淀みがなく流れる様に動く。



「見てた? 今のがカウンターってやつね」



 呑気に講義をしているユキムラ。

 

「まぁ、カウンターはタイミングがシビアだから、今みたいなテレフォンで練習するのがいいよ」



 魔石へと変わったオークの姿に周囲のオークの感情が戸惑いから少しの恐怖、そして憤怒に変わる。



【ブオーーーー!!!】



 一層大きな声を上げる、敵の襲来を明確に仲間たちへと伝える雄叫びなのだろう、簡素な藁葺の家々から殺気立ったオークが飛び出してくる。

 一番立派な木造の家から一際大きなオークがのそりと出て来る。



「あれがボスっぽいね、オークリーダーかハイオークかな?」



「師匠、大丈夫ですか?」



「ああ、問題ないさよく見ててね」



 体勢を整えたオークたちが襲い掛かってくる、



「多数を相手にするときは出来る限り襲われる方向を絞るように考えて動いてね」



 俯瞰視点はユキムラにしか無い。それを利用した戦闘ではだめなのだ。

 ユキムラは素早く比較的大きな家に向かって走り出し、目の前にいるオーク2体に弩を放つ、眼球に当たり苦しむオークをすれ違いざまに切り捨てる。



「武器の持ち替えは隙にもなるから慌てないこと、あと先に展開を予想しておく、

 もし持ち替えに手間取って襲われたらすぐにプランを変えられるようにすること」



 家の壁を背にして襲ってくるオークを矢で牽制しながら、カウンターや槍などリーチが長い武器も使い敵を圧倒していく。

 レンはまばたきするのも忘れてユキムラを見ていた。

 敵を複数相手にしない立ち位置の調整や攻撃タイミングをずらさせるテクニック、ユキムラの戦いは大量の情報が詰まっていた。

 ユキムラの言葉、行動そのすべてを一切漏らさず吸収していくレン、彼の加速度的な成長を支えるのは師匠であるユキムラへの信仰とも取れる深い信頼と、その素直な性根であった。



 そうこうしているうちに、圧倒的な数の差はすでに無くなっていた。

 はじめは怒りにより奮い立たせた闘争心も、大量の味方が為す術なく斬り伏せられていく姿を、まざまざと見せつけられ半ば消沈してきている。



【グボォアアアアァァァァァァ!!!!】



 一層大きな雄叫びをボスオークが上げる。

 同時に残されたオーク達は無表情になり、そのボスオークのそばへ操られているように集まっていく。

ユキムラは無理な追撃は行わず経過を見守っている。



 操られたように集まっていくオークは、ボスオークに次々に喰われていく。

 その巨大な口を歪に広げ一口で頭から貪り食べていく。

 その異様な姿にレンは恐怖を覚えた。

 ユキムラはこんなイベントあったっけ? 

とズレたことを考えている。

 

 ボキリ、グチュリ、グッチャクッチャ



 聞くに堪えない酷い音を立ててとうとうすべてのオークを平らげるボスオーク。

 身体からボコボコと肉が盛り上がり、煙が立ち上がる。

 顔は歪み腕や足、身体が膨れ上がる。

 

【ガルラァアァアアアアア!!】



 ギュンッと肉体がしぼみ、そして段々と新たな肉体を形どっていく。

 その姿は一段と巨大な牙、今までの醜悪な防具ではない金色に輝く鎧、巨大な戦斧、丸太のように太い四肢、威風堂々とした出で立ちに変化する。



「ああ、オークロードに成ったのか」



 ユキムラはこともなげに話す。

 レンは距離があったので無事だったが、その禍々しくも強力なオーラに当てられ、それだけで失禁しそうになっていた。身体がガタガタと震え奥歯がカチカチとぶつかりあった。あまりの恐怖にそのまま気を失いそうになる。



「大丈夫だよレン、俺がいる」



 インカムから届くその声に意識の糸を手繰り寄せることが出来た。

 同時に全身を安心感が包む。

 ああ、やはり師匠だ。僕の師匠だ。

 レンの信仰がまた深くなるのであった。

 
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