老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
175 / 342

175話 近海の主

しおりを挟む
「おお、この状態でも普通に剥ぎ取りできるんだね」



 甲羅には大穴、内部はぐちゃぐちゃだが剥ぎ取りを行うと、シーザウルスの甲羅、シーザウルスの肝、シーザウルスの魔石、シーザウルスの肉などを剥ぎ取ることが出来た。



 ユキムラがホクホクと剥ぎ取りを終えると口を開けたまま機能不全になっていた街の人達が再起動を終了していた。まだ現状を正確に理解できない程度の機能障害は残ってはいた。



「今の、主、GU、消えて、主が、街が……」



 ラクパも含めて目の前で起きたことの整理がつかないようだ。



「落ち着いてください。近海の主であるシーザウルスはこれから街の守り手となるGUによって退治されました」



 レンが端的に今起きたことを説明して回っている。

 その後も皆がきちんと話せるようになるのには時間がかかったが、GUの有効性は十二分に伝わってくれた。



「基本的には一つの街に5体配備していきたいと思っています。東西南北の監視と街内での救護などに一体、こちらには医療用に特化させていこうかと思います」



「正直話していることはあまり理解できないが、シーザウルスを赤子扱いする物が五体この街を護ってくれるということでいいんですな?」



「はい、コントロールユニットはラクパさんにお渡しします。

 魔物以外への攻撃は上位命令で禁止しています。まぁ犯罪者を取り押さえるとかは出来ますが……」



「なんと言っていいかわからんな、いや、ありがとう。街の安全のためにも有効に使わせていただきたい。ユキムラ殿には頭があがらん……」



「いえいえ、他の街の方への紹介などは本当にありがたいので。お気になさらないでください」



 フィリポネア共和国には大きな街が5個ある。

 北西のベイスト、北東シズイル、中央海底洞窟ダンジョンのそばセンテナ、南東ウラスタ、そして王都フィリポネアだ。その他、小さな村もあるがだいたい街の周囲に存在していていざとなったら大きな街への避難を徹底してもらえばいい。

 

 今回試作したもので良ければ50体くらいは作成できる。

 医療用などの特化機体や、それぞれに特色をもたせたり、ユキムラの脳内には妄想が広がっていた。



「やはり防御特化、攻撃特化、速度特化、遠距離特化をパーティとして支援型をバックアップに回せば……」



「師匠、妄想がだだ漏れです。一応商会の顔合わせもあるんですから他の商店の方々にもご挨拶をお願いしますよ」



 ユキムラ達はゴタゴタが終わった後、領主が開く夕食会へと招待されていた。

 

「レンにそういうのは任せるよー……」



「商会のビジネスの打ち合わせはしますけど、会長は師匠なんですからご挨拶と世間話ぐらいはお願いします!」



「また余計なこと話しそうで怖いんだよー」



「何を今更……」



 パーティ仕様の華やかなアロハシャツにホワイトの麻のズボン。通気性の良い素材で作られたシューズ、長身で鍛え上げられた肉体に完璧なデザインで作られた服がフィットしている。

 清潔に短く刈り揃えられた黒髪にため息が出るほどの美男子。

 レンも少し身長では劣るもののよくトレーニングされた肉体、少し長めの金髪に幼さの残る端正な顔つき。

 この二人が会場の端っこで絡んでいると、その場が会場の中心のように男女を問わず人目を引く。



「ユキムラ様、あちらの王都御用達の商会の方がお話がしたいそうです」



 美しい赤毛をパーティ用に盛っている。最近とくに少女から女性へと変貌してきた美しい顔つきはパーティ用の化粧によってさらに一輪の花のように艶やかに彩られている。

 ヴァリィのスタイリストとしての技術力は超一流だ。それに素材の良さも加わり会場に咲き乱れる花束のようになっている。ドレスも艶やかで艷やか、会場の男性の目線を一身に引き受けている。

 その鍛え上げられた肉体に女性らしい美しいライン、所作振る舞いは凛として、同性も思わず目を奪われてしまう。おねーさま……なんて呟く客まで出る騒ぎだ。

 ヴァリィも派手ではあるがその肉体と相まって妙なマッチ感がある。

 その恵体には上位冒険者たちも一目を置いている。

 タロはかわいいアロハシャツを着てお行儀よく座っているのでその周囲には常に人混みが耐えない。

 知的で美しく可愛いタロがおめかしをしているのだから仕方のないことだ。



 ユキムラは挨拶で少し疲れていたが、パーティで出された各種料理には大変満足していた。

 新鮮な魚介類やスパイスをふんだんに使用した料理はこの国の気候と合わせてお酒の友としてたまらない相性の良さがあった。

 なお、近海の主は美味だった。噛みごたえのある肉にスパイスの辛味がマッチして大人気料理になっていた。

 さっぱりと飲みやすいビールをユキムラたちが寄贈した冷蔵庫でキンキンに冷やして提供しており、サナダ商会の製品のアピールにも一役買っている。

 ココナッツを使ったお酒などもユキムラは珍しがっている。

 パーティでは巧みにレンとソーカがユキムラの作った玩具などを紹介していろいろなところで盛り上がっていた。

 冒険者たちはダーツに群がっていたり、商会の重役たちはチェスやリバーシなどに興味津々だった。

 女性陣はシャンプーやリンス、トリートメントや各種石鹸などに食いついていた。

 商会としての商品紹介としてはこれ以上無い成功と言っていいだろう。

 いろいろな人のつながりを作ることにも成功しており、サナダ白狼隊にとって得るものが大変多い、大成功と言ってよかった。



「またユキムラさん鼻の下伸ばしてる!」



「ソーカねーちゃんも諦めなよー、今は仕方ないでしょ……」



 ソーカが目を離すとすぐに女性陣に囲まれるユキムラにヤキモチを焼く羽目になった事以外は……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...