老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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230話 おかしな二人

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「レン様、どうか卑しい私めの背中にお座りくださいませ」



 九は四つん這いになってレンの足元に控えている。



「いや、いい」



 レンは呆れたようにため息を付いてその横にずらされた椅子に腰掛け食事を待つ。



「はぁーーーん、レン様の冷たい扱い……はぁはぁ……たまらない……」



 朝食の時もこの騒ぎだ。

 レンがこてんぱんにした一件から九はずっとこの調子だ。

 上気してはぁはぁ言いながらレンにつきまとっている。

 レンは迷惑そうにしているが、何がいいのかそれも九にとってはご褒美なようだ。

 九はすでにユキムラ製の武器、防具に換装している。

 扇子という変わった魔力媒体は以前のものを材料に別世界の性能に変わっている。

 着物も見た目の美しさ、艶やかさからは計り知れない力を秘めている。

 黙って立っていればまさに花魁、色気と艶っぽさの溢れる女性なのだが、いまやなんとも残念な人になってしまっている。



「ソーカ様、どうか卑しい私めの背にお座りください」



 朧も同じように四つん這いになってソーカの座るべき場所に待機している。



「朧、ユキムラ様に言って武具取り上げるわよ?」



 汚いものを見るように一瞥し、自分の椅子に腰掛ける。



「ひぃ! その冷たい目線……朧は、朧は……!」



 四つん這いのまま小刻みに身体を震わせる朧。



「邪魔しないで、あっちの隅に立ってなさい」



「はいぃぃぃ!!!」



 こっちも同様である。

 取り付いた甲冑と刀はユキムラ製、取り付いた瞬間に妖怪としての格が上がって鎧武者から怨霊大名にクラスアップしたそうだ。

 それでもソーカの下僕として今は振る舞っている。



「師匠ー、この人達で大丈夫なんですかー?」



「ユキムラさん、あいつ連れてくんですか?」



 今は二人揃って部屋の隅で空気椅子の刑に処せられている。

 罰を与えておかないと罰を! 罰を! と煩いので仕方なく喋ることを禁じて空気椅子が定番になっている。朧なんて別になんの苦痛もないが必死な形相で頑張っている。

 罰という事実が嬉しいようだ。ユキムラたちには全く理解ができなかった。



「ははは、まぁ、戦いでは結構役に立つから……」



 今は与えられた宿場で朝食を頂いている。

 ユキムラの予想通り和食が出される。

 素朴で懐かしい味に思わずほっこりする。

 ソーカも二人に文句は言いながらも、おひつが3個ほど空になっている。



「さて、あの二人も新装備に慣れたみたいだし。今日からダンジョン入りしようか」



「そうですね、札術や式神は面白かったです「本当ですかレン様!?」 ……おすわり」



 札術や式神、陰陽術は九がレンに教えていた。



「ああ、俺も新しい事はすっごく楽しかった! ありがとう九」



「いえいえ、ユキムラ様はレン様のご師匠様、私の至らぬ技でよろしければいかようにも」



「そうしてれば少しはマシなのになぁ……」「なんでございましょうレン様? 私叱られるの? 叱られちゃうのー!?」



 はぁーーーと大きなため息をつくレン。

 VOではプレイヤーは妖術や陰陽術は使えない、敵とNPCだけの技だ。

 けど、この世界ではユキムラもレンもその技を使うことが出来た。

 完全に新しい技の出現にユキムラは興奮を隠せなかった。

 レンと一緒に一晩中、九を付き合わせて実践していた。

 すでに二人は九を超える使い手になっている。

 特にレンは陰陽術と相性がよく戦略的な幅が大きく広がった。

 

「ようやく我が、超絶技法業物 大妖刀 村雨 真打ち 改 の力を見せる日が来たのでござるな!」



 なんとも残念な名前になってしまっている妖刀村雨。

 呪いのバッドステータスがつくのだが妖怪には無効というか強化になるのでその刀に決定した。

 長年使っていた長船を利用して打ち直しているので、すぐに朧の身体に馴染んでくれた。

 ユキムラの思いつきで、具足の色は黒と濃い紫で禍々しくしてある。

 なかなか迫力があり、中身があの変態でなければダンジョンで出会ったら苦戦を覚悟するだろう。



「朧、喋っていいって言った?」



「ひぃん!(嬉しそうに)」



「なんで、こうなんだろうねぇ、ははは……」



「妖怪って面白いのねぇ……」



「変態ばっかりです……」



 レンもソーカもため息しか出ない。

 それでも二人の実力はかなりのものだった。

 一部の妖怪は身につけているものとかでも格が上がるそうで、レベルが上がる以外にも種族変化で強力になる。

 九も九尾の狐から大妖狐 九尾へと変化している。

 VOではなかった妖怪のシステムにユキムラは変態なことを差し引いても楽しくて仕方がなかった。



 朝食を終えたユキムラたちは夜叉姫を救出に向かう旨をぬらりひょんへと伝える。



「重ね重ね、姫をよろしくお願いします。

 恥ずかしながら我らでは鬼どもの奥深くまでは攻め入ることが出来ませんでした」



「それでは、行ってまいります」



「御武運を……」



 鬼たちがねぐらにしているのは死の風穴を2つに分ける岸壁を抜けるトンネル、その途中から枝分かれする洞窟だ。

 洞窟の入り口に歪みを感じる。



「ここからがダンジョンのようですね師匠!」



「九、朧、ここから異空間に入る。

 たぶん君たちが知る鬼よりも強大な奴らが現れるから、最初のうちはあまり突っ込まないように」



「はいな」「承知」



 それから全員歪みへと侵入する。



「ん?」



「どうかしましたか師匠?」



「いや、なんか、変な感じが? まぁ、いいか……」



 今までのダンジョンとは微妙に違うような気配を感じるも、ユキムラはその違和感の原因はわからなかった。

 ダンジョン内に入り洞窟を進んでいくと巨大な空間が広がっていた。



「こ、こんな作りではなかったはずだが……」



 朧が困惑している。

 目の前の巨大な空間に佇む巨大な日本式城郭、堀や石垣によって形成されるダンジョンになっている。



「地底城か……ロマン溢れるねぇ……」



「見たこともない作りの城ですね……」



「あら、レンちゃんはテンゲンの都には行ったこと無いのね。これはテンゲン式の城よ」



「そうですレン様なんでしたら城の作りを手取り足取り教えて差し上げます!」



「うーん……、いいや」



「はぁん(嬉しそう)」



「さぁて、これは骨が折れそうだ。皆気合を入れていこう!」



 サナダ ユキムラによる城攻めの開戦である。
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