老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
255 / 342

255話 ギルドマスターライコ

しおりを挟む
 ライコは驚くしか無かった。

 自分を赤子扱いした白狼隊のトップが目の前にいる人の良さそうな美青年。

 そして隔絶した実力者達が、まだ幼の残る少年。美しい女性。強いて言えば一番強そうに見える男性、ただ口調はオカマ口調だ。そして可愛らしく愛らしく神々しくもある犬。

 聞いていたことは聞いていたが、実際に実物を目の前にして、さらに信じられなくなるという不思議な現象に陥っていた。



「大変失礼な質問になると思うのですが、白狼隊の他の隊士の方々よりも皆さんお強いのですよね?」



「そうですね、隊長格5名でも頑張れば一人で対応できますね」



「な、なんと……」



 ユキムラは控えめにそう答えたが、実際には全隊士が相手でもユキムラ一人で勝利は可能だ。



「白狼隊の皆様もそうでしたが、アレほどの力をどのように手に入れるのですか?」



「あ、それならライコさんも一緒に訓練参加しますか?」



「え!? よろしいのですか?」



「もちろんですよ、もし他にも参加したい人がギルドでいたらどうぞいらしてください」



 あまりのトントン拍子にライコも肩透かしを食らってしまう。

 

「なんというか、その……よろしいのですか? 自分たちの優位を簡単に譲るような提案を……」



「ええ、特に優位でいなければいけないわけでもないですし、できれば皆が脅威と立ち向かえる力を手に入れて欲しいと思っているので」



 あっけらかんとそう話すユキムラにライコはもう驚きを通り越してしまった。

 大変魅力的な商品を扱うサナダ商会のトップであり、非常に強力な冒険者達である白狼隊のトップである人間が、私心無く、単純に皆のために行動している。

 話を聞けば聞くほどそうとしか思えない。

 それは大変素晴らしくライコにとってもありがたいことだが、そんな人間をライコは見たことがなかった。それでも、今、目の前に確かにそういう人間がいる。

 しばらくユキムラと話したライコはすっかりユキムラを気に入ってしまっていた。



「本日は大変有意義な時間が過ごせました。

 貴方と知り合えたことは私にとって大きな財産になる。

 これからもよろしくお願いします。

 ギルドは常に公平でいますが、私個人は貴方への協力を惜しみません」



 帰り際の握手は最初の握手よりも力強かった。



 ギルドとの協力体制は確立された。さらに各町から届く宝達がそれをさらに強力なものにしてくれるだろう。

 国相手の交渉はギルドを通じてダンジョンの宝の内訳が届いてからになる。

 各町の宝の管理を手伝っている仲間たちからの連絡で、一月以内ほどで本部へと宝が移送されるだろうという話だった。それまでは人材育成を継続して時間を待つことにする。

 

「それで今は龍の巣への道はどうなってるのかな?」



「整備は開始されたばかりなのでまだまだですが、我々が参加すれば数日で完了すると思います。

 そうすれば都から数時間でダンジョンまで到達できるようになります」



「そしたら早速、明日から協力して終わらせちゃおう。

 各メンバーとの打ち合わせや訓練もして、攻略時期も決めちゃおう。

 ライコさん達も連れて行かないとね!」



 普通のこの世界の人が、訓練で新しい扉を開けてグングン強くなっていくのを見るのはユキムラにとってこの上ない楽しみだった。

 VOでも新人がどんどんゲームに嵌っていくのを見ていくのが楽しみだったりした。

 もちろんそんな熱意あふれる人たちも一人二人と引退していくのも見てきたが、それでもハマって上手になっていく姿はどんな時も嬉しいものだった。



「そういうわけで、まぁしばらくはこの町で滞在することになるので僕達の家も久々に購入しよう!」



「分かりました。手配しておきますね」



「あ、それでねレン。土地だけ買ってもらってもいいかな?

 ハウスビルドしたくてね。ダメかな?」



「もちろん大丈夫ですよ! それで探しておきますね」



「道作りはソーカちゃんと私で終わらしといちゃうわねぇー」



「おまかせください! お家うちは楽しみにしておきますねユキムラさん」



「ワン!」



「任せといてよ!」



 レンはすぐに土地の手配を行う。

 このテンゲンという都市は、中央に帝が住む天守。なぜかここは日本式城郭になっている。

 その周囲を堀で囲まれ二の丸が本丸を囲うように作られている。

 本丸は行政区画となっており生活サービス全般にかかわるものはここに集まっている。

 本来の意味での本丸とはかけ離れた区画わけだ。

 この二の丸は比較的裕福な人が暮らしている。

 さらに堀の外が三の丸。庶民の街だ。

 石垣に掘り造りなのに、建物は中華風というちぐはぐさも面白いとユキムラは思っている。

 レンはいくつかの土地をすぐにピックアップしてくれたが、ユキムラが選んだのは三の丸。

 中央大通りから裏に入ってすぐの、元々は劇場があったが失火で焼け落ちて、劇場自体は二の丸に再建されたという比較的広い土地だ。

 失火のあったところは縁起が悪いとされ、周囲を含めて広めの土地を購入できた。

 いつもニコニコ現金払いですぐに所有権がサナダ商会へと渡る。

 ここら辺の口利きはレンの根回しの賜物だ。

 こうして、翌日の予定は決まる。

 ユキムラ、うっきうきの久しぶりのハウスビルディングである。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...