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それでも朝はやってくる

何ですぐ俺に言ってこなかった?

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「――お、おはよー」
 扉を開けて、とりあえず挨拶をしてみる。
 うん、声、裏返ってないよ、ね? 普通に言えた、よね?
「――手当て。昨日……ちゃんと最後まで出来てねぇから……」
 温和はるまさは私のおはように、軽く「ああ」と返しただけで、すぐ本題に入った。
 手には救急箱を持っていて、それを私に見せると、
「入るぞ」
 どうぞ、とも言ってないのに勝手に部屋に上がり込む。そのままリビングまでズカズカ歩いて行って、私を振り返ると、
「何してる、早く来い」
 とか……相変わらずの暴君ぶり。

 昨夜のうちに部屋干ししていた洗濯物、取り込んどいて正解だった、と私がソワソワしていることなんてきっと温和はるまさには分からないんでしょうね。そう思うと、なんか悔しい。

「もう、ハルに……っ、――温和はるまさ、勝手すぎ」
 ハルにいと言いそうになった瞬間、不機嫌に睨まれて、私は慌てて温和はるまさ、と言い直す。
 スカンツの生地が足に擦れないように生地をつまんで温和はるまさの所まで行くと、目線で椅子に座れとうながされた。

 渋々従ったら、勝手に裾をたくし上げられて、傷口をさらされてしまう。

「ひゃっ、ちょっ、なに勝手にっ」
 スカートではないけれど、なんの断りもなく女の子の服をめくるとか、ないからっ!

 真っ赤になりながら慌てたら、剥き出しの傷口を見た温和はるまさに、呆れた顔をされた。

「お前、絆創膏ぐらい貼っとけよ。なんでそのままなんだ」
 そこまで言って、ハッとしたように、「もしかして絆創膏すら買い置きしてないとか言わねぇよな?」と睨まれる。
 ひえー。持ってません、行きがけに買おうと思ってましたっ。
 言えば、当然のように叱られた。
 その口調は学校で子供たちを叱る時の先生モードの温和はるまさで。
 この年になって、先見せんけんめいがないとか言って、子供みたいに叱られるとは思ってもいませんでした。

 ごめんなさいっ。

「そもそも――こんな状態だったら歩くのもしんどいだろーが。何ですぐ、俺に言ってこなかった?」
 とか、私、そこまでメンタル岩石じゃないですっ。

「だって温和はるまさ……、昨夜」

 言おうとして、膝に消毒をしてくれている温和はるまさから睨むように見上げられて、私は何も言えなくなる。

 温和はるまさの中では、昨夜私にキスしたことも、それで私が泣いたことも、無かったことになってしまっているのかな。

 考えただけで、何だか胸の奥がギュッと苦しくなった。きっと消毒された所がみて痛いからだ。
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