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とんとん拍子というのでしょうか

お前も俺のこと〝お兄ちゃん〟って呼んでいいんだぜ?

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「そうだ、ハル! お前も! 俺のこと〝お兄ちゃん〟って呼んでいいんだぜ?」

 まるで照れ隠しのようにカナにい温和はるまさにそう言って。
 私は思わず笑ってしまう。

 そっか。
 私たち結婚したらカナにい温和はるまさのお兄さんになるんだ。

「馬鹿か。誰がお前のこと兄貴なんて呼ぶかよ。それに……俺の方がお前より1時間早く生まれてんの忘れたのかよ」
 温和はるまさが不機嫌そうにそう吐き捨てて、すぐ横に立つ私の手をギュッと握ってきた。


 温和はるまさはそこで私たちのやりとりをニコニコしながら見つめていた双方の両親を見つめると、「何か計画してたのとすごい順番ぐちゃぐちゃになってしまったんですけど……」とバツが悪そうに前置きをしてから、ピシッと背筋を正して立った。
 私も、それに釣られて背筋を伸ばす。

鳥飼とりかいさん、音芽おとめさんと……お嬢さんと結婚させてください!」
 ってうちの両親に頭を下げた。
 私も温和はるまさに合わせて頭を下げてから、恐る恐る両親の反応をうかがう。

「――温和はるまさくんがもらってくれるなら安心だ」

 ややしてお父さんがポツン……とそうつぶやいて、グスッと鼻をすすって。
 お母さんが「もぉ、貴方ったら!」とハンカチを差し出す。

 それを見たら私も、鼻の奥がツン、としてしまって――。

 温和はるまさはうちのお父さんとお母さんの反応にホッとしたように肩の力を抜くと、今度は自分のご両親の方を向いた。

「そういうことなんで……宜しくお願いします」
 って、ちょっと待って……温和はるまさ
 それは余りにぞんざいだって!

 温和はるまさの雑すぎる挨拶に戸惑って、私は慌てて言葉をつむぐ。

「わ、私なんかじゃ温和はるまささんに釣り合わないかもしれないですが、どうか大好きな彼のお嫁さんにならせてくださいっ」

 うー。
 温和はるまさの、うちの両親へのしっかりした挨拶と比べてグダグダすぎるよぉー。

 でも、でも……。

 ギュッと目をつぶって頭を下げたら、「大歓迎よ!」っておばちゃんが言ってくれて。
温和はるまさにはもったいないくらいだよ」
 って、おじちゃんも言ってくれたの。


***


「疲れたぁー」

 車に乗り込むなりシートに埋もれてそうつぶやいた私に、温和はるまさが苦笑する。

奏芽かなめのやつ、気がついたら逃げてるし、やられたよな」

 さすがカナにいと言うべきか。
 私たちがモタモタしている間に、ちゃっかり居なくなっていて……お母さんに聞いたら「お兄ちゃん、明日早いって言ってたから」ってあっけらかんと返された。
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