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■あなたには言えない秘密の才能/オマケ的SS11

不審者

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 兎にも角にも、こう言う時は塩対応に限る。

 まぁそうしたところで結局、こう言う時の音芽おとめは俺の反応なんてお構いなしで引き下がらないことも知っている。

 要するに無駄な抵抗。



 あの日音芽を初めて抱いて以来、どうも俺は音芽に対して前ほど強く出られなくなっていて。

 要はあれだ。

 好きだと認めてしまった途端、虚勢が張れなくなったというか。

「見て見て? ここに温和はるまさの名前を入れるでしょ?」

 ほらな、興味ないって言ったのにコレ。

 スマホを片手に俺のそばに近付いてきて、「でね、この〝診断〟ボタンを押すと……」

 画面が切り替わった途端、音芽が固まったのが分かった。

「何が出たんだよ」

 別に興味はないけどそんな反応されたら気になんだろ。

「あ、ほら、あくまでもお遊びだし」

 慌てて画面を隠そうとする音芽を捕まえて、スマホを取り上げる。



 見れば、

〝診断結果
霧島きりしま温和はるまさには【不審者】の才能が眠っています。〟

と出ていて。


 俺と目があった途端、音芽がソワソワと視線を泳がせた。

「あ、ほら、ネタだからっ。は、温和はるまさ私、気にしないしっ」

 一生懸命「ネタだから」と繰り返す音芽おとめに、俺は意地悪したくてたまらなくなる。


「なぁ音芽。その言い方だと俺が不審者だって認めてる前提になってるよな?」

 グイッと音芽の手を引っ張って、腕の中に閉じ込める。

「そ、そんなことっ」

 俺に捕まえられたことで身の危険を感じたらしい。ギュッと身体を硬くして、俺の腕から逃れようとする音芽を否応なく抱き上げて、寝室に運ぶ。

 そのままベッドに転がして、逃げる隙も与えず音芽の小さな身体を組み敷くと、
「俺を変な目で見た責任、取ってもらわねぇとな?」
 耳元に唇を寄せて、わざと吐息を吹き込むように低めた声でささやいてやる。

「ひゃっ」

 途端、愛らしい悲鳴をあげて首をすくめる音芽が可愛くて、俺は彼女の耳朶を唇で挟むように甘噛みをした。


「あ、やっ。――は、るまさっ、ごめ、なさっ」

 このところ毎日のように音芽を抱いているけれど、音芽は風呂に入ってからでないと、なかなか抱かせてくれない。
 音芽が相手なら、風呂に入っていようとなかろうと関係ねぇのに、音芽のやつ、かたくなに「汚いから」とか言って俺を拒むんだ。

 正直俺は風呂に入る前の音芽のにおいの方が、変に石けんの香りに邪魔されないで好きなんだけどな。
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