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バイバイ、私の初恋の人

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「えっ? あ、うん……っ」

 思わず押され気味にそう答えたら、『電気付いてるから大丈夫だとは思ったけど、良かった! 家にいてくれて……』って、え?

 今、のぶちゃん、何て?

「のぶちゃん今……」

 聞き返そうとしたら、チャイムが鳴ってビクッとさせられる――。

 こんな時間になんだろうって思ったら『りんちゃん、チャイム鳴らしたの、僕』って電話から声がしてきて。

「え? のぶちゃん?」

 にわかには信じられなくて、インターホンのスイッチを押して確認したら、モニターには確かにのぶちゃんの姿があった。

 え。うそ。どうしよう!

 考えてみたら、のぶちゃんはうちを知っているんだった。
 こんな風に直接訪ねてきてくれることだって想定の範囲内だったはずなのに、どうして思いもしなかったんだろう。

 私は慌てて玄関のロックを外すと、扉を開ける。

りんちゃん、久しぶりだね。元気にしてた? ……って、あれ? もしかして……出かけようとしてた?」

 背中に背負ったままの小ぶりのサッチェルバッグにふと視線を移されて、そう問いかけられてしまう。

「あ、うん。出かけようと……っていうか。えっと……。――のぶちゃんから連絡があったらすぐに出られるようにって支度してたの」

 嘘をついても仕方ないので、連絡をもらったらこちらから出向こうとしていた旨も含めて素直に話した。

「そっか……」
 言って、そんなに広くない玄関内に一歩足を踏み入れてきたのぶちゃんを、私はキョトンと見上げる。

「……のぶちゃん?」

 聞いてなかったのかな?

 のぶちゃんが兄妹きょうだいという認識を越えてしまった今――。
 そうして私がのぶちゃんを“憧れのお兄ちゃん”としてしか見ていないと気付かされてしまった今――。

 「いくら幼なじみとはいえ、男女が部屋にふたり切りになるのは良くないと思って」って、私、ちゃんと伝えたはずなんだけどな?

 距離を詰めてきたのぶちゃんが、いつもとは少し様子が違うように感じられて、私は何となく不安になる。

 私の方へ近づいてきたのぶちゃんに押されるように半歩下がって彼を見上げたら、のぶちゃんの背後で玄関扉が乾いた音を立てて閉まって――。

 それと同時に後ろ手でドアに施錠をするのぶちゃんを見て、ますます不安になる。

「あ、あのっ、でっ、出かけ……ないの?」

 動揺していることを悟られたくなくて、努めて冷静な声を出したつもりだったのに、緊張して噛んでしまった。

「今日はね、車もちゃんと迷惑にならないところに停めたし、そこのコンビニでお弁当も買ってきたんだよ? 僕、仕事後で疲れてるし、出来たらアパートここで話したいな? ――ダメ?」

 手に提げたビニール袋を軽く持ち上げて見せられて、私は言葉に詰まる。
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