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貴方のものだと思えるから

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「ね、そういえば誕生日はどうだったの?」

 ふと話題を切り替えるようにして投げかけられた言葉に、私はビクッと肩を跳ねさせて瞳を揺らす。
 同時に、ほっぺたがぶわりと熱くなったのが自分でも分かった。

 四季しきちゃんがそんな私を見てクスクス笑って。

「たくさんたくさん幸せにしてもらえたんだね。良かった」

 そうして、瞳を細めて吐息を落とすの。

「わっ、私っ、何もっ」
 ――言ってないよっ!?

 そう続けようとしたけれど、目は口ほどに物を言うというやつなのかもしれない。

「今日ひとりで頑張ろうって思ったのって、ひょっとしてその影響もある?」

 四季ちゃんに真剣な眼差しで見つめられて、私は小さくうなずいた。


「私、奏芽かなめさんに全部全部もらってもらえたから……もう奪われるモノはないって思えて。それで」

 言ったら、四季ちゃんが何かを察したみたいに一瞬だけ瞳を見開いてから「うん、そうだね」ってうなずいてくれた。


「あ、あとね、私。奏芽さんから――」

 そこで、首元に手をやってゴソゴソして。

「これ」
 そう言って四季ちゃんに手の中のものを差し出した。

「これ……」

 私が四季しきちゃんに見せたのは、ゆらゆらと揺れるダンシングストーンがあしらわれた、小さな三日月型のネックレスで。
 ピンクゴールドのプチっとしたそれには、〝BESIDE YOU(いつもあなたのそばに)〟という文字が刻まれている。

「誕生日プレゼントにって、奏芽かなめさんから」
 それをギュッとすると、奏芽さんと繋がれている気がして気持ちが落ち着くの。

 何故なら――。


 私が言う前に
「ひょっとしてペアアクセ?」
 って聞いてくるとか、四季ちゃん相変わらず察しが良すぎてドキッとしちゃう。

「うん」

 私の小さなピンクゴールドの月を、奏芽さんの大きなDLC加工の黒い月に嵌め込めるようになっているそのデザインは、奏芽さんに護られているという実感を私にくれるの。

 このネックレス、「BESIDE YOU」の刻印とは別に、私のには「with K」、奏芽さんのには「with R」という文字が刻まれている。

 離れていても私は奏芽さんと繋がれている。

 そう思えるアイテムが、心臓に近いところにあるのって、気持ちを落ち着かせてくれる効果があるんだなって実感して。
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