【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん

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フェードアウトは許さない

変遷

 小学生のころ、丸一年をかけて彼女と通学路をともに歩んだことで、僕は葵咲きさきちゃんからの絶対の信頼を勝ち取ったはずだった。
 家が近所、おまけに母親同士が幼なじみというのも功を奏して、僕らはしょっちゅうお互いの家を行き来していたし、実際、僕は彼女の親御さんからの信頼も厚かった。お婆ちゃんに至っては幼い頃から見知った僕のことを葵咲ちゃん同様、実の孫のように可愛がってくれたものだ。
 そんなこんなで外堀固めはバッチリで、肝心の本丸にしたって、既に僕の手中にあるも同然だと思っていた。
 一緒にいるときは本当の兄妹のように手を繋いで道を歩いたし、彼女を僕の膝の上に載せて絵本の読み聞かせをしたことだって数知れない。
 僕が――というより僕の分身が――反応してしまいそうで丁重に断ったけれど、幼い頃の葵咲ちゃんは「お兄ちゃん、お風呂一緒に入ろう?」と誘ってくるほどに、僕に対して警戒心がなかった。
 その関係は、彼女が四年生に上がる辺りまで確かに続いていたはずなのだ。

 しかし――。



 思春期の女の子の気持ちというのは、9つ年の離れた兄がいるだけの僕には予測不可能だった。
 あんなに僕に懐いて、可愛らしい子犬みたいにまとわりついていた葵咲きさきちゃんだと言うのに。
 いつの頃からか、親しげに呼びかけられていた「お兄ちゃん」という呼び名が、どこかよそよそしい「理人りひとさん」に変わり、それもやがて「理人」と呼び捨てになってしまった。
 呼び名の変化にリンクするように、彼女との距離もどんどん開いていって……。

 順風満帆にしか思えなかった僕の光源氏計画は、一体どこで崩れてしまったんだろうか?

 敗因があるとすれば、僕の大学受験が大きい気がする。次いで、進学のため実家を4年間も離れてしまったことが、決定打になった。

 どうしても学びたいことがあり、苦渋の決断で遠方の大学に進学した僕だったが、長期休暇のたびに実家に帰り、葵咲ちゃんの家を訪問したけれど、彼女はどんどん僕に対して冷たくなっていって――。

 大学三年生に進学する年の春、彼女の高校合格祝いに駆けつけた時には、僕は葵咲ちゃんから完全に無視されるようになっていた。
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