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今どこにいるんだよ?

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 その言葉に、居ないと思う方がおかしかったんだってハッとさせられて、でも、ご夫婦でここに住み込み、って思ったら何だか不思議な感じもしてしまって。


「八千代さんのご主人は庭師なんだ。この屋敷の庭の管理はもちろん、普段は他所へ出かけて行ってあちこちの庭を整備しておられるよ」

 ひとつの庭自体の手入れは、年に数回ぐらいしかないらしい。
 この屋敷ここの手入れは先月済んだばかりなんだとか。


 だとしたら、私が八千代さんのご主人――福田ふくだ源治げんじさんとおっしゃるらしい――に会える日は、とうぶん先かしら。

 そんなことを思って、何の気なしに
「レアキャラですね」
 って言ったら、私の言葉に一瞬だけキョトンとした顔で箸を止めた頼綱よりつなに、次の瞬間にはクスッと笑われた。

「もちろん仕事中のげんさんはそうかもしれないが、基本週末はこっちに戻って来てるし、すぐにでも顔、合わせることになるんじゃないかな? ひとつ屋根の下にいるわけだしね」

 言われてみれば、そうだった!


「まぁ遠方のお仕事も多くて家を空けることも結構あるからね。そういう時は八千代さんもここで俺たちと一緒に食べるんだ。でも源さんが帰ってきてる時は夫婦水入らずで食事することにしているんだよ」

 それでさっき、八千代さん、「今日自室で」っておっしゃったんだって気が付いた。

 ということは今朝はご主人も一緒にいらっしゃるってことなのね。

 あの大量に見えた取り分けも、2人分と思えば納得だ。

 いや、むしろ1人あたりの分量は私より少なめかもしれないっ。

 燃費悪いとか思ってすみませんっ!
 効率悪かったのは私の方でしたっ!


***

 そんなこんなで頼綱よりつなと2人きり。
 向かい合わせでの何となく気まずい朝食を終えて。

 食後の片付けを済ませて、ひとまず自室に戻ろうとしたら、後を追ってきたらしい頼綱に呼び止められた。


花々里かがり。俺は今日、午前中だけ仕事で家をあけるけど、昼過ぎには戻ってくるから――」


 何だか昨夜のお風呂の一件以来、頼綱よりつなを前にするとソワソワと落ち着かない気持ちになってしまう。

 半日とはいえ、彼が家をあけてくれるというのは有難いなってホッとして。
 留守の間に私がお出掛けしちゃえば、とりあえず夕方までは顔、合わせずに済むんじゃないかしら?

 ふとそんなことを思いついて、心の中でニヤリとする。

「そ、そうなんですねっ♪ お疲れ様ですっ! 行ってらっしゃいませっ♪」

 顔をほとんど見ないまま、でも思わず語尾に音符まじりでそそくさとそう返してしまった。

 あー、いけないっ!
 こういう胸のうちを悟られそうなの、態度に出さないよう気をつけるぞって心に決めたばなりなのにっ。

 つい顔がにやけちゃう。

 これはひとまず逃げるが勝ち、とばかりに与えられた洋室にこもろうときびすを返したら――。

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