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*お仕置き

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 あごにかけたままだった俺の手を振り解くと、音芽おとめが俺を睨みつけたまま言う。

「それ、お互い様じゃんっ!」

 いつもなら俺がちょっと目をすがめたり睨んだりしただけで怯えたようにうつむく音芽が、今回に限っては一切視線を外そうとしなくて。

 まるで目をそらしてたまるか!と挑まれているようで、俺は正直驚いた。

 基本的には押さえ込まれやすい奴なくせに、たまにこんな風に強情になって俺をたじろがせる。

 そういうところも音芽の魅力のひとつだと思っていながら、やはり正面切って反抗されると、気持ちを汲んでもらえないもどかしさで段々怒りがいや増していくのも事実で。

「は? 何で俺がお前に苛つかれなきゃなんねぇんだよ? おかしいだろ」

 腹立たしさを吐息に溶かすようにして吐き出したら、音芽おとめが心底落胆したような目で俺を見る。

 何でそこでお前がそういう目になるんだよ。
 気持ちが伝わらなくて苛立ってるのは俺なんだけど?

「やっぱり温和はるまさは私のこと、妹ぐらいにしか思ってないんだよ」

 怒気に目端を赤く染めた音芽が、何もかも俺が悪いと言わんばかりの表情で不満をぶつけてくる。

 けどちょっと待てよ。
 俺のことを兄貴ぐらいにしか思っていないのは音芽のほうなのに、何で俺のほうがそう思ってるていになってんだよ。

 納得いかねぇんだけど?

 そう思ったら、俺はどうにも怒りが抑えられなくなった。

「――俺がいつお前を妹扱いした?」

 思わず声に感情が滲んで、低まってしまう。

 俺がまとう空気の変化を感じ取ったのか、音芽おとめが一瞬ひるみそうになって、でも、すぐに負けてたまるかっと言わんばかりに拳を握り締めると、果敢にも俺を睨みつけてきた。

「さっきだって鶴見つるみ先生に私のこと、妹って言ってたよ? 忘れたの?」

 そうしておいて音芽が告げた言葉は――確かにその通りだ。
 でもな、俺がどんな思いでヤツにそう告げたか……分からなかったとでも言う気か?

 だとしたらお前こそどうかしてるだろ。

 そもそも鶴見に俺のことを兄のような存在だと話したのは他でもない。音芽自身じゃねぇか。
 そんなことも分からずに上げ足を取ってくるとか……上等だよ、バカ音芽。

 俺がお前のことをどんな目で見ているのか、本気で身体に教え込まないと分からないんだな。

 俺は音芽をベッドに押し倒すと、彼女を冷ややかに見下ろした。
 ベッドに縫いとめられて、身じろげないのを悟った音芽が、驚いたように俺を見上げてくる。

 やっぱお前は非力だもんな、音芽。男に力ずくで押さえつけられるの、怖いだろ?

 でもな、悪いけど今更やめてやるとか、無理だから。

 煽ったのはお前だからな?
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