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 あれから数日。

 悪友で幼なじみ、そして音芽おとめの実兄の鳥飼とりかい奏芽かなめに電話をしたら、『ハル、お前そんな回りくどいことしなくても、たった一言、音芽に向かって俺と付き合えって言えばいいだけの話だろ?』と言われてしまった。

 ホント、兄妹きょうだいそろって馬鹿なのか?と思わずにはいられない。

「ふられちまったら身もふたもねぇだろ。そもそもアイツは俺のことお前とセットで兄貴の一人くらいにしか思ってねぇよ」

 不本意ながら、な。
 音芽が未だにふとしたときに俺のことを「ハルにい」と呼びそうになるのを、俺だって知らないわけじゃねぇ。

 前にも同じようなことを奏芽に言って、兄貴だと思われるのは心外だとぼやいたことがある。

 その時「だったらさ、ハルにいって呼ばれるたびにお仕置きしてやればいいんじゃね?」って奏芽に言われたっけ。

 音芽に対して、俺が素直に兄と呼ばれることを拒絶できたのは、ある意味奏芽のこの言葉が後押しになっていた。
 けど、よくよく考えてみれば、実の妹に対して何て酷いことをさせようとそそのかす兄だろうか。

 それとも、奏芽は奏芽なりに俺のことを認めてくれているってことなのか?

 俺なら例え音芽を傷つけたとしても、それに見合うだけの責任を取るだろう、って。

「俺一人で乗り込んでも別にいいんだけどさ、奏芽お前がいてくれた方が何かと心強いんだよ。――それにさ、お前、音芽いもうとを困らせるの好きだろ?」

 というか、恐らく奏芽かなめ音芽おとめがいじめられたときに見せる反応が好きなんだろうな、と思う。

 実際まぁ、その気持ちも分からなくはない。

 あいつの泣き顔は何ていうか、めちゃくちゃ可愛くてそそられるし。

『けど、あれだろ。週末ったって土曜だか日曜だかさえはっきりしてねぇんだろ?』
 電話口であからさまに溜め息を吐きながら奏芽が言うのへ、「ついでに言うと場所も分かってねぇな」と返したら『は? 何それ。お前、マジで馬鹿なの?』と返された。

 わー、それ、さっき俺がお前に対して思ったやつ。しかも俺は一応遠慮して口には出さなかったのに、お前は言うのかよ。

 思ったけれど、まぁ、確かに奏芽の言う通り。
 場所も日時も指定できないんじゃ、時間作れと言われても困るわな。

「とりあえず音芽問い詰めてその辺分かったらまた連絡するから……。お前もなるべくそのつもりでいてくれよ。――な?」

 有無を言わせぬ調子でまくし立てて「じゃあそう言うことだから」と電話を切ると、俺は本腰入れて音芽を問い詰めるか、と思った。
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