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兄たちの制裁
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奏芽の馬鹿、何だって鶴見にキスなんてすんだよ。
お前は音芽が色々思い出すかも、とか考えが及ばねぇような浅はかな男じゃねぇだろ?
そこまで考えて、もしかしたら、と思う。
もしかしたら奏芽のことだから、音芽が思い出すことを見越してわざと、って可能性もある。
どう見ても濃厚なやつをやらかす真意は俺には分からないが、音芽を揺さぶるつもりでやっている気は十二分にする。
奏芽は一見チャランポランそうに見えるけど、その実計算ずくで動いているところがある。
俺に音芽を抱いたままにさせたのも、もしかしたらそういうことを踏まえてのことだったんじゃないかと、今更のように思った。
同じ日に生まれた双子のような存在の奏芽だけど、こんな風に時々、俺はこいつには敵わないって痛感させられる時がある。
悔しいけど音芽の兄貴が奏芽で良かったと思わされることが多いのも事実で。
腕の中の音芽が小刻みに身体を震わせて、俺にギュッとしがみ付いてきた。
恐らく奏芽の目論見通り、音芽は封じた記憶を揺さぶられているんだと思う。
それが奏芽の計算だと分かっていても……それでも俺はやっぱり彼と違って、音芽には辛い思いをさせたくない、諸々のそういう辛いことから遠ざけてやりたい、と思ってしまう。
音芽が苦しんでいるのを見て、それを放置することは俺にはどうしても出来ねぇんだ。
トラウマを乗り越えない限り、音芽がこんな風に何かをきっかけに頭痛に悩まされたりすることは消えないんだと分かっていても尚。
悪いな、奏芽。
俺は音芽の背中を、無言で幼子をあやすように軽いタッチでぽんぽんと撫でてやる。
ややして音芽の身体から力が抜けたのを感じて、心底ホッとした。
なぁ奏芽。
お前、ショック療法は賭けだったのかも知んねぇけど、俺が音芽をなだめること自体は想定の範囲内だっただろ?
だから……文句はねぇよな?
***
奏芽は執拗な嫌がらせを鶴見に残して離れると、片手で口元を拭った。
悪友であるこいつが、快楽に関しては割と自由な男で、気持ち良ければ別に相手は男でも女でもこだわらない所があるのは知っていた。
けれど今の仕草からすると、好んでしたわけじゃなさそうだ。
お前は音芽が色々思い出すかも、とか考えが及ばねぇような浅はかな男じゃねぇだろ?
そこまで考えて、もしかしたら、と思う。
もしかしたら奏芽のことだから、音芽が思い出すことを見越してわざと、って可能性もある。
どう見ても濃厚なやつをやらかす真意は俺には分からないが、音芽を揺さぶるつもりでやっている気は十二分にする。
奏芽は一見チャランポランそうに見えるけど、その実計算ずくで動いているところがある。
俺に音芽を抱いたままにさせたのも、もしかしたらそういうことを踏まえてのことだったんじゃないかと、今更のように思った。
同じ日に生まれた双子のような存在の奏芽だけど、こんな風に時々、俺はこいつには敵わないって痛感させられる時がある。
悔しいけど音芽の兄貴が奏芽で良かったと思わされることが多いのも事実で。
腕の中の音芽が小刻みに身体を震わせて、俺にギュッとしがみ付いてきた。
恐らく奏芽の目論見通り、音芽は封じた記憶を揺さぶられているんだと思う。
それが奏芽の計算だと分かっていても……それでも俺はやっぱり彼と違って、音芽には辛い思いをさせたくない、諸々のそういう辛いことから遠ざけてやりたい、と思ってしまう。
音芽が苦しんでいるのを見て、それを放置することは俺にはどうしても出来ねぇんだ。
トラウマを乗り越えない限り、音芽がこんな風に何かをきっかけに頭痛に悩まされたりすることは消えないんだと分かっていても尚。
悪いな、奏芽。
俺は音芽の背中を、無言で幼子をあやすように軽いタッチでぽんぽんと撫でてやる。
ややして音芽の身体から力が抜けたのを感じて、心底ホッとした。
なぁ奏芽。
お前、ショック療法は賭けだったのかも知んねぇけど、俺が音芽をなだめること自体は想定の範囲内だっただろ?
だから……文句はねぇよな?
***
奏芽は執拗な嫌がらせを鶴見に残して離れると、片手で口元を拭った。
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