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18.臨界点
今日は何かの記念日ですか?
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***
車での移動中、偉央から結葉に何かを問いかけてくることはなくて。
さっき偉央のシャワー後に一悶着あった謝罪の件にしても、結葉自身何が悪かったのか分かっているわけではなかったから。
結局結葉も偉央に何を話しかけたらいいのか分からなくて、ふたりして始終無言のままだった。
***
偉央が予約してくれていたのは、結婚前ふたりが恋人同士だった頃にデートで何度か食べに来たことのあるイタリアンのお店だった。
偉央はかつてはここへ、何かの節目――結婚が決まった時の祝いや、結葉が仕事を退職することになった時など――があるたびに結葉を連れてきてくれていた。
子供が出来たわけでもないのに、結婚後は偉央とこんな風にデートをしたことが、新婚当初を含めても数えるほどしかなかったことに思い至った結葉だ。
結葉が偉央の逆鱗に触れて以降は特に、偉央は結葉を家の中に押し込めて誰にも会わせたくないみたいに外食ですら激減していた。
記念日などにケイタリングを利用することはあっても、店に出向くことはほぼなくなっていたから、久々の外食をすごく新鮮に感じたと同時に〝何故?〟という思いが結葉の中にふつふつと込み上げてくる。
(今日は何かの記念日?)
結葉は、ふとそんなことを考えてしまって。
席についてすぐ、偉央は結葉には食前酒としてスプリッツというほろ苦いソーダ割りのカクテルを頼んでくれて、自分は運転があるからとジンジェリーノというノンアルコール飲料を注文した。
どちらも赤みがかった見た目がよく似ていて、パッと見には偉央の方にはお酒が入っていないだなんて分からない感じ。
「たまには結葉もお酒、飲みたいでしょう? 僕に遠慮せずたくさん飲んでね。僕と一緒だし、少々羽目を外して飲み過ぎたって問題はないよ?」
と微笑む偉央に、結葉はたまらなくソワソワしてしまう。
オロオロと自分を見つめてくる結葉の視線に気付いた偉央が、「結葉、このところ凄く気を張ってるみたいだったから。――ね?」と他意はないのだと含ませてくる。
「乾杯」
偉央にグラスを掲げられた結葉は、訳もわからないままにそれに合わせながら、ずっと疑問に思っていたことを彼に問いかけてみた。
「あの……偉央さん、……今日って何かの……」
――記念日だったりしますか?と続けようとして、もしも重要な何かの日だったとして、それを失念していると明言してしまうのはいけない気がして。
思わずセリフ半ばで言葉を止めた結葉だ。
車での移動中、偉央から結葉に何かを問いかけてくることはなくて。
さっき偉央のシャワー後に一悶着あった謝罪の件にしても、結葉自身何が悪かったのか分かっているわけではなかったから。
結局結葉も偉央に何を話しかけたらいいのか分からなくて、ふたりして始終無言のままだった。
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偉央が予約してくれていたのは、結婚前ふたりが恋人同士だった頃にデートで何度か食べに来たことのあるイタリアンのお店だった。
偉央はかつてはここへ、何かの節目――結婚が決まった時の祝いや、結葉が仕事を退職することになった時など――があるたびに結葉を連れてきてくれていた。
子供が出来たわけでもないのに、結婚後は偉央とこんな風にデートをしたことが、新婚当初を含めても数えるほどしかなかったことに思い至った結葉だ。
結葉が偉央の逆鱗に触れて以降は特に、偉央は結葉を家の中に押し込めて誰にも会わせたくないみたいに外食ですら激減していた。
記念日などにケイタリングを利用することはあっても、店に出向くことはほぼなくなっていたから、久々の外食をすごく新鮮に感じたと同時に〝何故?〟という思いが結葉の中にふつふつと込み上げてくる。
(今日は何かの記念日?)
結葉は、ふとそんなことを考えてしまって。
席についてすぐ、偉央は結葉には食前酒としてスプリッツというほろ苦いソーダ割りのカクテルを頼んでくれて、自分は運転があるからとジンジェリーノというノンアルコール飲料を注文した。
どちらも赤みがかった見た目がよく似ていて、パッと見には偉央の方にはお酒が入っていないだなんて分からない感じ。
「たまには結葉もお酒、飲みたいでしょう? 僕に遠慮せずたくさん飲んでね。僕と一緒だし、少々羽目を外して飲み過ぎたって問題はないよ?」
と微笑む偉央に、結葉はたまらなくソワソワしてしまう。
オロオロと自分を見つめてくる結葉の視線に気付いた偉央が、「結葉、このところ凄く気を張ってるみたいだったから。――ね?」と他意はないのだと含ませてくる。
「乾杯」
偉央にグラスを掲げられた結葉は、訳もわからないままにそれに合わせながら、ずっと疑問に思っていたことを彼に問いかけてみた。
「あの……偉央さん、……今日って何かの……」
――記念日だったりしますか?と続けようとして、もしも重要な何かの日だったとして、それを失念していると明言してしまうのはいけない気がして。
思わずセリフ半ばで言葉を止めた結葉だ。
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