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29.公宣からの提案
私、想ちゃんのこと信じてるから
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***
洗濯を済ませてベランダの物干し竿に干して……。
想のボクサーパンツに触れるときはちょっぴり照れてしまったけれど、そこはそれ。
主婦として毎日偉央の下着を扱ってきた経験値がある。
(下着なんてどれも同じ、きっと同じ、何てことない)
心の中でそう唱えながらそそくさと処理していった結葉だ。
ついでに自分の下着もどこに干そう?とやたら迷ってしまって。
結局タオルでぐるっと周りを取り囲んでから、コッソリ部屋の片隅に干させてもらった。
(想ちゃんに見られる前に乾くかな)
それを狙うなら外に干したほうがいいのは分かっていたけれど、それはそれで抵抗があって出来なくて。
一緒に暮らしていくのなら、そういうあれこれはどうしても避けては通れないと分かっていても……やっぱり最初は照れくさいものだ。
(偉央さんにも見せたくなかったもの)
結葉は、マンションでは浴室乾燥のお陰で随分助けられたのを思い出す。
でもここにはそんなものは付いてないから、あれこれ本当に悩ましくてたまらない。
(もしかしたら想ちゃんも私が下着を勝手に触っちゃったの、後で知ったら「恥ずかしい!」って思っちゃう?)
今更のようにそんなことに気がついて、「想ちゃん、ごめん! 私、勝手にやらかしちゃいました」と心の中で謝った結葉だ。
そんな悩ましい洗濯を済ませた後で、気持ちを切り替えるように部屋の掃除をしてから、買い物してきたものの整理をある程度済ませて。
とりあえず買ってきた食器類は全て洗って棚の中に仕舞うことが出来てホッとする。
そこでふと寝室を見て、ベッド横に綺麗に畳まれた想の布団に気が付いた結葉は、いいお天気だし、と彼の布団をベランダの柵に干した。
スペース的に私のは明日かな?と、干す場所がないのを理由に自分の布団は後回しにしてしまったのだけれど。
きっと想がいたならば、結葉の布団を先にと言っただろうが、不在だから誰からも物言いが付かなかった。
マンションにいた時よりも、少し精力的に動き過ぎてしまったかもしれない。
結葉は、ちょっと休憩しようかな?と雪日のケージ前にしゃがみ込んで。
まん丸になって眠る雪日を眺めて癒される。
と、不意にエプロンのポケットに無造作に入れておいたスマートフォンが着信を知らせてきた。
昨夜手にしたばかりのスマホは、まだ着信音などが初期設定のまま。
どこかで聞いたことのある電子音とバイブレーションに、結葉はポケットから白色のスマートフォンを取り出した。
画面を見ると「山波想」と出ていて。
まだこのスマートフォンには想と芹、それから山波建設、そしてアメリカに住む両親の番号しか入っていない。
想と芹ふたりから、「これから少しずつ増やしていけばいいよ」と言われて。
もう自分がスマホに新しい番号を登録することを咎める人はいないんだと思ったら、凄く不思議な気持ちになった結葉だ。
「もしもし?」
初めての着信にドキドキしながら出ると、「結葉、いま大丈夫?」と想の声。
(えっ、嘘っ。もうお昼⁉︎)
そんなに時間が経っているような気はしなかったけれど、家事に夢中になっている間に時間泥棒に遭ったのだろうか。
そんなことを思って壁の時計を見たら、十一時前。ランチタイムと呼ぶには、まだいささか早い時刻だった。
「ごめんな、変な時間に」
家にいる自分に駄目な時間も変な時間もありはしないのに、(ホント、想ちゃんはどこまでも優しいなぁ)と思った結葉だ。
「全然問題ないよ? どうしたの?」
自由人な自分はともかくとして、想はいま、仕事中のはずだ。
それを不思議に思いながら問いかけたら、
「親父がさ、結葉連れて会社に来いって言うんだけど……。いまから迎えに行っても平気?」
言ってから「あっ、けど。もしそこじゃ不安だってんなら別のところで落ち合うんでもいい」と慌てたように言い募る。
想はきっと、山波建設と結葉の実家が隣り合わせなことを気にしてくれているんだろう。
「想ちゃん。私、想ちゃんのこと信じてるから……だから平気だよ?」
ギュッとスマートフォンを握りしめて。
電話の向こうに自分の顔が見えるわけでもないのに真っ直ぐ前を向いて凛とした声音で言ったら、想に「え?」とつぶやかれた。
「ほら。偉央さんは私を連れ戻そうとしてないって言った想ちゃんの言葉。あれ信じてるから実家のそばでも問題ない」
補足するように付け足したら、「ああ」って想が得心が言った様子で吐息を落として。
結葉はそんな想に、小さく深呼吸をしてもうひとつ付け加えた。
「――えっと……それだけじゃなくてね。もしも……もしも予想に反して何かがあったとしても……想ちゃん、全力で私を守ってくれるって言ったから。私ね、その言葉も信じてるの。だから……おじさんが会社で待つって言うなら、私、そこに行くんで全然構わない」
結葉が、少しつっかえながらも迷いのない声音でそう言ったら、想が電話口で息を呑んだのが分かった。
「結葉。俺、お前の信用、絶対裏切らねぇって誓う! すぐ迎えに行くから出れるように支度して待ってて?」
ややして結葉に投げ掛けられた想の声音が、どこか自信に満ち溢れた男らしいものになっていた気がしたのは、きっと結葉の気のせいではないだろう。
洗濯を済ませてベランダの物干し竿に干して……。
想のボクサーパンツに触れるときはちょっぴり照れてしまったけれど、そこはそれ。
主婦として毎日偉央の下着を扱ってきた経験値がある。
(下着なんてどれも同じ、きっと同じ、何てことない)
心の中でそう唱えながらそそくさと処理していった結葉だ。
ついでに自分の下着もどこに干そう?とやたら迷ってしまって。
結局タオルでぐるっと周りを取り囲んでから、コッソリ部屋の片隅に干させてもらった。
(想ちゃんに見られる前に乾くかな)
それを狙うなら外に干したほうがいいのは分かっていたけれど、それはそれで抵抗があって出来なくて。
一緒に暮らしていくのなら、そういうあれこれはどうしても避けては通れないと分かっていても……やっぱり最初は照れくさいものだ。
(偉央さんにも見せたくなかったもの)
結葉は、マンションでは浴室乾燥のお陰で随分助けられたのを思い出す。
でもここにはそんなものは付いてないから、あれこれ本当に悩ましくてたまらない。
(もしかしたら想ちゃんも私が下着を勝手に触っちゃったの、後で知ったら「恥ずかしい!」って思っちゃう?)
今更のようにそんなことに気がついて、「想ちゃん、ごめん! 私、勝手にやらかしちゃいました」と心の中で謝った結葉だ。
そんな悩ましい洗濯を済ませた後で、気持ちを切り替えるように部屋の掃除をしてから、買い物してきたものの整理をある程度済ませて。
とりあえず買ってきた食器類は全て洗って棚の中に仕舞うことが出来てホッとする。
そこでふと寝室を見て、ベッド横に綺麗に畳まれた想の布団に気が付いた結葉は、いいお天気だし、と彼の布団をベランダの柵に干した。
スペース的に私のは明日かな?と、干す場所がないのを理由に自分の布団は後回しにしてしまったのだけれど。
きっと想がいたならば、結葉の布団を先にと言っただろうが、不在だから誰からも物言いが付かなかった。
マンションにいた時よりも、少し精力的に動き過ぎてしまったかもしれない。
結葉は、ちょっと休憩しようかな?と雪日のケージ前にしゃがみ込んで。
まん丸になって眠る雪日を眺めて癒される。
と、不意にエプロンのポケットに無造作に入れておいたスマートフォンが着信を知らせてきた。
昨夜手にしたばかりのスマホは、まだ着信音などが初期設定のまま。
どこかで聞いたことのある電子音とバイブレーションに、結葉はポケットから白色のスマートフォンを取り出した。
画面を見ると「山波想」と出ていて。
まだこのスマートフォンには想と芹、それから山波建設、そしてアメリカに住む両親の番号しか入っていない。
想と芹ふたりから、「これから少しずつ増やしていけばいいよ」と言われて。
もう自分がスマホに新しい番号を登録することを咎める人はいないんだと思ったら、凄く不思議な気持ちになった結葉だ。
「もしもし?」
初めての着信にドキドキしながら出ると、「結葉、いま大丈夫?」と想の声。
(えっ、嘘っ。もうお昼⁉︎)
そんなに時間が経っているような気はしなかったけれど、家事に夢中になっている間に時間泥棒に遭ったのだろうか。
そんなことを思って壁の時計を見たら、十一時前。ランチタイムと呼ぶには、まだいささか早い時刻だった。
「ごめんな、変な時間に」
家にいる自分に駄目な時間も変な時間もありはしないのに、(ホント、想ちゃんはどこまでも優しいなぁ)と思った結葉だ。
「全然問題ないよ? どうしたの?」
自由人な自分はともかくとして、想はいま、仕事中のはずだ。
それを不思議に思いながら問いかけたら、
「親父がさ、結葉連れて会社に来いって言うんだけど……。いまから迎えに行っても平気?」
言ってから「あっ、けど。もしそこじゃ不安だってんなら別のところで落ち合うんでもいい」と慌てたように言い募る。
想はきっと、山波建設と結葉の実家が隣り合わせなことを気にしてくれているんだろう。
「想ちゃん。私、想ちゃんのこと信じてるから……だから平気だよ?」
ギュッとスマートフォンを握りしめて。
電話の向こうに自分の顔が見えるわけでもないのに真っ直ぐ前を向いて凛とした声音で言ったら、想に「え?」とつぶやかれた。
「ほら。偉央さんは私を連れ戻そうとしてないって言った想ちゃんの言葉。あれ信じてるから実家のそばでも問題ない」
補足するように付け足したら、「ああ」って想が得心が言った様子で吐息を落として。
結葉はそんな想に、小さく深呼吸をしてもうひとつ付け加えた。
「――えっと……それだけじゃなくてね。もしも……もしも予想に反して何かがあったとしても……想ちゃん、全力で私を守ってくれるって言ったから。私ね、その言葉も信じてるの。だから……おじさんが会社で待つって言うなら、私、そこに行くんで全然構わない」
結葉が、少しつっかえながらも迷いのない声音でそう言ったら、想が電話口で息を呑んだのが分かった。
「結葉。俺、お前の信用、絶対裏切らねぇって誓う! すぐ迎えに行くから出れるように支度して待ってて?」
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