【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

文字の大きさ
186 / 228
33.久々の我が家

捨て犬みたいな偉央と、優柔不断な結葉

しおりを挟む
***


 さっきトレイを載せたサイドテーブルは、下がコロになっていて、そのまま高さを調整して向きを変えたら、ベッドに座ったまま食事が出来るようになる仕様だ。

 結葉ゆいは偉央いおから酷く責め立てられて起き上がれなくなった時なんかに、このテーブルでよく食事を摂っていた。

 結葉ゆいはがダウンした時、偉央いおは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたから。
 でも元を正せばその原因を作ったのは偉央いおだったので、罪滅ぼしの気持ちが強かったのかも知れない。

 動くのが辛かった時にはとても便利だったけれど、風邪など以外でこれを使った回数の方が圧倒的に多かったことを思うと、結葉ゆいははどうしても複雑な気持ちになってしまう。

 なるべくそのことは考えないようにして、偉央いおの前にテーブルを設置すると、偉央いおの背後にある枕をムギュッと押し潰して厚みを調整して彼がすがれるようにした。

 これも、偉央いお結葉ゆいはのためによくやっていてくれたのをなぞったに過ぎない。


「辛くないですか?」

 結葉ゆいはの一挙手一投足から目を離したくないみたいにじっと自分の動きを目で追ってくる偉央いおに、何だか居心地の悪い結葉ゆいはだ。

 それを払い除けるみたいに問いかけたら、「大丈夫だよ、有難う」と穏やかに微笑み掛けられて。

 今日の偉央いおは付き合っていた頃を彷彿ほうふつとさせられる柔らかな表情をよく向けてくる。

 そのたびに、結葉ゆいはは胸の奥がざわついてしまう。

 ともすると偉央いおのその雰囲気にほだされてしまいそうな気持ちになるけれど、結葉ゆいははその柔和にゅうわさの奥に秘められた、偉央いおの激情を知っているから。
 だからギュッと拳を握り締めると気持ちを切り替えた。


「あの、熱いので気を付けて食べてくださいね」

 そこまで言って、お茶を忘れていたことに気が付いた結葉ゆいはは、「お茶、用意してきます」ときびすを返す。

結葉ゆいはっ、待って」

 途端、不安そうに偉央いおが呼び止めてきて、出し掛けた足を引き止められてしまう。

「大丈夫です。お茶を淹れてくるだけです」

 捨て犬みたいな目でじっと見つめてくる偉央いおに、自分がこの家を逃げ出した後、偉央いおがどれだけ寂しい思いをしたかを垣間見た気がして、胸の奥がズキッと痛んだ結葉ゆいはだ。

「私も偉央いおさんのそばで一緒にお茶、飲みますから」

 ――それなら不安じゃないですよね?と言外に含ませたら、偉央いおが小さくうなずいた。

 いまの偉央いおには、何だか放っておけないオーラがある。
 だけど、彼が自分にしたことを思い出すと、結葉ゆいははそれでもやっぱりこのままずっとここに居ることは出来ないと思って。

 でも、だったらせめて――。

 偉央いおがご飯を食べて眠りにつくまでの束の間の時間だけは……出来る限りのことをしてあげようと……そんなことを考えてしまった。

 自分はつくづく色んなことに流されやすい性格だと……結葉ゆいはは心の中で小さく嘆息する。


 そうして、そんな自分の優柔不断さがそうに物凄く心配を掛けてしまうことになるだなんて、その時の結葉ゆいはは思いもしなかったのだ。



✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
章の変わり目のため、今回は更新量少なめです。
すみません。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夜の声

神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。 読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。 小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。 柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。 そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。

うちの弟がかわいすぎてヤバい無理!

はちみつ電車
恋愛
3歳の時、弟ができた。 大学生に成長した今も弟はめっちゃくちゃかわいい。 未だに思春期を引きずって対応は超塩。 それでも、弟が世界で一番かわいい。 彼氏より弟。 そんな私が会社の人気者の年上男性とわずかに接点を持ったのをきっかけに、どんどん惹かれてしまう。 けれど、彼はかわいがってくれる年下の先輩が好きな人。好きになってはいけない.......。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完】花火の音が終わるまで抱き締めて(カットページのラブシーンも掲載済2023.4.23、詳細ページは内容欄に記載)

Bu-cha
恋愛
ベリーズカフェにて恋愛ランキング5位 大金持ちの息子で弁護士事務所の所長。 優しくて仕事も出来て顔まで良い。 でも女を見る目が全然ない。 それは過去の判例で証明されている。 そんな先生から頑張られてしまっている秘書の私は、 良い女ではないということになってしまう・・・。 関連物語 『幼馴染みの小太郎君が、今日も私の眼鏡を外す』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高8位 『タバコの煙を吸い込んで』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高30位 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高5位 カットページ:9-7~9-9 カットページ:9-12 カットページ:12-11~12-16 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...