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■雨の中のふたり/気まぐれ書き下ろし短編
成人の祝い
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三月十六日。
今日は結葉の二十回目の誕生日だ。
今まで未成年だった結葉だけど、今日を境に大人の仲間入り。
「想ちゃん、今日は本当に有難う。ご馳走さま」
二十歳になったお祝いに、隣に住む幼馴染みのお兄ちゃん――山波想が食事を奢ってくれると誘ってくれて。
想のことが大好きな結葉は二つ返事でOKを出した。
結葉より三つ年上の想は、一足先に社会へ出て働いている。
社会人と大学生とではやはり自由になるお金に差があるらしい。
ベージュとブラウンのダブルカラーに染められたツーブロックの髪は、高校生の頃から変わらない想のトレードマーク。
三白眼で目つきが悪く見えるため怖い人だと誤解されがちだけれど、実際はとても優しいお兄ちゃんだ。
家業の山波建設を手伝う形で働いている想は、普段は作業服姿。
その格好も男らしくてかっこいいのだが、今日の想は日頃は見慣れないスーツ姿で。
それが、成人したばかりの結葉の心臓を不必要に跳ねさせる。
想は結葉を五つ年下の実妹芹同様に可愛がってくれる兄のような存在だ。
けれど結葉はそんな想のことを兄として見ているわけではなかったから。
優しくて男気に溢れた想に恋心を抱いて、もう何年になるだろう。
心は千々に乱れるくらい想のことが好きで好きでたまらないのに。
生ぬるい今の関係を崩すのが怖い意気地無しの結葉は、今日も妹の仮面を被って想に微笑みかける。
***
「私、コース料理のお店とか初めてで緊張しちゃった」
「ああ、そうだな」
えへへと笑いながら結葉が言ったら、想がそっぽを向いて「俺もこういう店来たことなかったしな」とボソリとつぶやいて。
そのセリフに結葉は「え?」と我が耳を疑った。
てっきり想のことだから誰か別の女性と来たことがあると思っていたのに。
何だか想の初めてをもらえたことが嬉しくて思わず口元を綻ばせたら、ムスッとした顔のまま想に頭をぐしぐし撫でられた。
「初めての相手が兄貴みてぇな俺で悪かったな」
どこか拗ねたみたいなその口ぶりに、結葉はフルフルと首を振った。
「想ちゃんからのお祝い、私、すっごくすっごく嬉しかったよ? 有難う」
本当は……想ちゃんと来られて、お互い初めての相手になれて….…私、すっごくすっごく幸せだよ!って言ってしまいたかった結葉だ。
だけどそんなことを言ったらきっと、想を困らせてしまうから。
結葉は本音を飲み込んで、兄だと自称する想の妹を演じ続けて。
想も、そんな結葉の前では兄の仮面を被り続ける。
今日は結葉の二十回目の誕生日だ。
今まで未成年だった結葉だけど、今日を境に大人の仲間入り。
「想ちゃん、今日は本当に有難う。ご馳走さま」
二十歳になったお祝いに、隣に住む幼馴染みのお兄ちゃん――山波想が食事を奢ってくれると誘ってくれて。
想のことが大好きな結葉は二つ返事でOKを出した。
結葉より三つ年上の想は、一足先に社会へ出て働いている。
社会人と大学生とではやはり自由になるお金に差があるらしい。
ベージュとブラウンのダブルカラーに染められたツーブロックの髪は、高校生の頃から変わらない想のトレードマーク。
三白眼で目つきが悪く見えるため怖い人だと誤解されがちだけれど、実際はとても優しいお兄ちゃんだ。
家業の山波建設を手伝う形で働いている想は、普段は作業服姿。
その格好も男らしくてかっこいいのだが、今日の想は日頃は見慣れないスーツ姿で。
それが、成人したばかりの結葉の心臓を不必要に跳ねさせる。
想は結葉を五つ年下の実妹芹同様に可愛がってくれる兄のような存在だ。
けれど結葉はそんな想のことを兄として見ているわけではなかったから。
優しくて男気に溢れた想に恋心を抱いて、もう何年になるだろう。
心は千々に乱れるくらい想のことが好きで好きでたまらないのに。
生ぬるい今の関係を崩すのが怖い意気地無しの結葉は、今日も妹の仮面を被って想に微笑みかける。
***
「私、コース料理のお店とか初めてで緊張しちゃった」
「ああ、そうだな」
えへへと笑いながら結葉が言ったら、想がそっぽを向いて「俺もこういう店来たことなかったしな」とボソリとつぶやいて。
そのセリフに結葉は「え?」と我が耳を疑った。
てっきり想のことだから誰か別の女性と来たことがあると思っていたのに。
何だか想の初めてをもらえたことが嬉しくて思わず口元を綻ばせたら、ムスッとした顔のまま想に頭をぐしぐし撫でられた。
「初めての相手が兄貴みてぇな俺で悪かったな」
どこか拗ねたみたいなその口ぶりに、結葉はフルフルと首を振った。
「想ちゃんからのお祝い、私、すっごくすっごく嬉しかったよ? 有難う」
本当は……想ちゃんと来られて、お互い初めての相手になれて….…私、すっごくすっごく幸せだよ!って言ってしまいたかった結葉だ。
だけどそんなことを言ったらきっと、想を困らせてしまうから。
結葉は本音を飲み込んで、兄だと自称する想の妹を演じ続けて。
想も、そんな結葉の前では兄の仮面を被り続ける。
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