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家出少女
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「パティスちゃんは本当に元気な子ね。私の小さいころにそっくりよ」
毎朝マリーンが使う鍋の中にカエルを入れてやったって、出かける直前に彼女の靴を隠してやったって、服を泥だらけにして洗濯物を増やしてやったって……何をしたってマリーンは笑って済ませてしまうのだ。
ネジが一本緩んでいるんじゃないかしら?
毎日思いつく限りの悪さをしてみせるのに、ちっとも響かないマリーンを相手にしていると、何だか自分がとっても子供になった気がして悔しくなった。
だから家出してやったのだ。
相手が家を出ないのなら、自分が出ればいい。
そう。そうすればきっと、今度こそマリーンを困らせてやることが出来る。
パパだって、私が家出するくらい悩んでるんだって知ったら考え直してくれるに違いないんだから。
「さて……考え無しに家を飛び出してきちゃったけどこれからどうしようかしら」
ただ、飛び出しただけではすぐに連れ戻されてしまうのが目に見えていた。
そんな間抜けな事態を避けたくて、日頃からコツコツ貯めていたお金で電車を乗り継ぎ乗り継ぎ田舎町まで出てきてしまったけれど……。
「全部交通費に当ててしまったのは浅はかだったわ」
出来るだけ遠くへ。丸一日かけて移動したし、何度も乗り換えたのでそう簡単には見つからないはずだ。
けれど食事や宿のことをすっかり失念していたのは我ながら情けない。
「お腹空いた……」
気が付けば、朝から何も口にしていなかった。
公園に行けば水ぐらい飲めるかも知れない。
年の割に理知的な頭でそう思い至ると、パティスは薄暗い夕闇の中、大通りらしき道を町の中央目指して歩き出した。
大体町の構造なんてどこも似たようなものなのだ。
皆の憩いの場である公園を中心に道が放射線状に伸び、それ伝いに町が広がっていく。
だから大通りを家の多いほうに向かって進んでいけば、大抵の場合公園に行き着ける。
果たしてパティスの思惑通り、二十分も行かないうちに石畳が敷き詰められた広場に突き当たった。
田舎の公園の割に整備されたそこは、真ん中に石造りの噴水があり、その周りを取り囲むようにこれまた石製のベンチが四つ置かれていた。
パティスが歩いてきた通りから噴水を挟んで真正面にある小道は、どうやらこんもり茂った森へと延びているらしい。
そこだけ余り整備されていないのか、道の両サイドから伸びた草がまるで行く手を阻むように絡まりあっていた。
何だか近づくと迷子になってしまいそうだ。
毎朝マリーンが使う鍋の中にカエルを入れてやったって、出かける直前に彼女の靴を隠してやったって、服を泥だらけにして洗濯物を増やしてやったって……何をしたってマリーンは笑って済ませてしまうのだ。
ネジが一本緩んでいるんじゃないかしら?
毎日思いつく限りの悪さをしてみせるのに、ちっとも響かないマリーンを相手にしていると、何だか自分がとっても子供になった気がして悔しくなった。
だから家出してやったのだ。
相手が家を出ないのなら、自分が出ればいい。
そう。そうすればきっと、今度こそマリーンを困らせてやることが出来る。
パパだって、私が家出するくらい悩んでるんだって知ったら考え直してくれるに違いないんだから。
「さて……考え無しに家を飛び出してきちゃったけどこれからどうしようかしら」
ただ、飛び出しただけではすぐに連れ戻されてしまうのが目に見えていた。
そんな間抜けな事態を避けたくて、日頃からコツコツ貯めていたお金で電車を乗り継ぎ乗り継ぎ田舎町まで出てきてしまったけれど……。
「全部交通費に当ててしまったのは浅はかだったわ」
出来るだけ遠くへ。丸一日かけて移動したし、何度も乗り換えたのでそう簡単には見つからないはずだ。
けれど食事や宿のことをすっかり失念していたのは我ながら情けない。
「お腹空いた……」
気が付けば、朝から何も口にしていなかった。
公園に行けば水ぐらい飲めるかも知れない。
年の割に理知的な頭でそう思い至ると、パティスは薄暗い夕闇の中、大通りらしき道を町の中央目指して歩き出した。
大体町の構造なんてどこも似たようなものなのだ。
皆の憩いの場である公園を中心に道が放射線状に伸び、それ伝いに町が広がっていく。
だから大通りを家の多いほうに向かって進んでいけば、大抵の場合公園に行き着ける。
果たしてパティスの思惑通り、二十分も行かないうちに石畳が敷き詰められた広場に突き当たった。
田舎の公園の割に整備されたそこは、真ん中に石造りの噴水があり、その周りを取り囲むようにこれまた石製のベンチが四つ置かれていた。
パティスが歩いてきた通りから噴水を挟んで真正面にある小道は、どうやらこんもり茂った森へと延びているらしい。
そこだけ余り整備されていないのか、道の両サイドから伸びた草がまるで行く手を阻むように絡まりあっていた。
何だか近づくと迷子になってしまいそうだ。
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