【完結】月夜の約束

鷹槻れん

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折り紙

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「明日、日が昇ったら買い物とか一人で出れるか?」
 意を決したように告げられたセリフに、パティスは瞳をしばたたく。

「え? でも……それじゃぁ」
「あ~。やっぱ帰りが一日伸びることになるよなぁ。……そりゃ、まずいか」

 パティスの考えと同じことに思い至ったらしいブレイズが眉根を寄せて再び考え込んだ。
 そんな彼に、パティスは思いっきり首を横に振ってみせる。

「それ、いい! 一日も二日も一緒だよ! 明日町に出たらちゃんと家に電話するし……それならいいでしょう?」
 少しでも長く一緒にいたいパティスの勢いに押されるように、ブレイズはうなずいた。


***

 結局明くる日の日中も、パティスは動かねばならないので今夜はもう寝たほうが良いのではないかという話になった。

「ソファでも眠れるか?」

 部屋の中を見回すと、ベッドもないことはないが、長い間使われてないらしく、埃と汚れがすごい。
 そんなところに寝転んだら一瞬にしてアレルギーが出そうだ。
 年代ものではあるが、そこそこの頻度ひんどで使われて、手入れの行き届いているソファのほうが絶対によさそうだ。

 チラリと両者を見比べて、パティスはコクンとうなずいた。

「お前、今、ベッドとソファ、比較しただろ?」
 苦笑しながらブレイズが言う。

 ちょっとためらい、でも事実だったので恐る恐る首を縦に振ると「そういうの、生きていくうえで大切なことだぞ」と褒められた。

 ブレイズは時に年よりじみたことを言う。これが、見た目とは比べものにならないくらい長い年月を生きてきたことの現われなのだろうか。

 ふとそんなことを思い、彼をじっと見つめてしまった。
「何だ?」
 途端、深紅の瞳がこちらを向いて、パティスの心臓は口から飛び出しそうなぐらい勢いよく跳ね上がる。

「添い寝してくれとか言うんじゃねぇだろうな?」
 どこか揶揄《やゆ》するような口調でそう言うと、ブレイズは出会ったばかりのころのような意地の悪い表情を浮かべてニヤリと笑った。

「だ、誰が――っ!」
 ……添い寝なんて……ゴニョゴニョ。

 真っ赤になって語尾を濁すパティスの頭をブレイズがグシャグシャと撫でる。
「んじゃ、もう寝な?」
「……ブレイズは?」
「だから俺は一緒には……」
「そういう意味じゃないってば!」
 先手を打ってブレイズの軽口を封じると、パティスは少し言葉を丁寧にした。


「ブレイズは私が眠った後、どうするの?」

 それが、何となく気になった。

 別に襲われるんじゃないか、とかそういうことを心配したわけではない。ただ、自分の目の届かないところで彼が何をするのかが心配になっただけ。

「あ~、まぁ、その……」
 ブレイズの、歯切れの悪い物言いにパティスはにわかに不安になる。
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