25 / 55
09.どうしたらいいの?/written by 鷹槻れん
3
しおりを挟む
***
先日久遠寺くんと色々あって、精神的に疲れ切ってしまった私は、夜、あまり眠れなかった。
大学では久遠寺くん、ファミレスでの一件なんてなかったみたいに、いつも通りに接してくれて。
でも、それはあの〝提案〟の通りにしてくれているだけに過ぎないって私、知っているから。
だから……このままの平穏がいつまでも続かないと承知している分、心がちくちくと痛んで。
どうしよう。
思うけれど、誰も傷付けないで現状を打開できるなんて都合が良いこと、ないのも分かっているから余計にしんどいの。
***
「なんだ、今夜は肉じゃがか?」
特売のお肉などを買い込んだ買い物袋を手に、ヨロヨロと近所のスーパーから出てきたところで、不意に頭上から声が降ってくる。
顔を上げると、手元の袋を軽く覗き込まれていた。
「隆ちゃんっ」
大好きな隆ちゃんに、こんなボロボロなところを見られるとか最悪っ。
私は慌ててシャキッと背筋を伸ばすと、
「じ、実家、……行ってたの?」
この辺で隆ちゃんを見かけるのは多分そうかなって、恐る恐る問いかけた。
「あー、まぁ、ちょっと」
隆ちゃんにしてはどこか歯切れの悪い物言いに、私はキョトンとする。
「隆ちゃん、ひょっとして何か……私に言いたいこと……ある?」
言って、隆ちゃんの整ったシャープな顔立ちをじっと見上げて小首を傾げる。
彼は、そんな私にひとつ溜め息をついてから、揶揄うように言った。
「良かったな。相手、結構なイケメンじゃねぇか」
って。
え? イケメンって……どういうこと?
思ってから、すぐにハッとする。
まさか……アリアでのアレ、見られてた?
私は隆ちゃんの言葉に、思わず手にしていた買い物袋を取り落とした。
こんなに動揺したら「はい」って言ってるのと同じじゃないっ。
久遠寺くんとのアレを、隆ちゃんに見られていたのかもしれないって思ったら、指先までスーッと一気に冷えていくようで。
「バッカ、お前何やってんだよ。卵とか買ってねぇだろうな?」
言いながら、隆ちゃんが落とした買い物袋を拾い上げて、中身を気にしながら差し出してくれる。
私はそれを恐る恐る受け取りながら、小声でポツンとつぶやいた。
「きょ、協定があって……色々な問題が片付くまで周りにはアレ、内緒なのっ。だからっ」
私はギュッと袋の持ち手を握りしめると、
「隆ちゃんも見なかったことにしといてっ!」
まくし立てるようにそう言って、くるりと踵を返して逃げるように走り去った。
何でっ!?
何でっ!?
よりによって大好きな隆ちゃんにあんなところ、見られてたなんてっ!
告白されてたの?とか聞かれたわけじゃないから、実際にはどの辺りまで知られているのかは分からないけど……。
でも……男の子と2人きりなところ見られたとか……誤解されていても不思議じゃない。
内緒も何も、隆ちゃんと私の大学の友達には接点なんてないのだから、何にも支障なんてないのに。
絶対、なにバカなこと言ってんだよアイツって思われてるよね……。
でもね……。出来れば本当……、記憶から消し去って欲しいの。
隆ちゃん自身の記憶から。
お願いっ。
先日久遠寺くんと色々あって、精神的に疲れ切ってしまった私は、夜、あまり眠れなかった。
大学では久遠寺くん、ファミレスでの一件なんてなかったみたいに、いつも通りに接してくれて。
でも、それはあの〝提案〟の通りにしてくれているだけに過ぎないって私、知っているから。
だから……このままの平穏がいつまでも続かないと承知している分、心がちくちくと痛んで。
どうしよう。
思うけれど、誰も傷付けないで現状を打開できるなんて都合が良いこと、ないのも分かっているから余計にしんどいの。
***
「なんだ、今夜は肉じゃがか?」
特売のお肉などを買い込んだ買い物袋を手に、ヨロヨロと近所のスーパーから出てきたところで、不意に頭上から声が降ってくる。
顔を上げると、手元の袋を軽く覗き込まれていた。
「隆ちゃんっ」
大好きな隆ちゃんに、こんなボロボロなところを見られるとか最悪っ。
私は慌ててシャキッと背筋を伸ばすと、
「じ、実家、……行ってたの?」
この辺で隆ちゃんを見かけるのは多分そうかなって、恐る恐る問いかけた。
「あー、まぁ、ちょっと」
隆ちゃんにしてはどこか歯切れの悪い物言いに、私はキョトンとする。
「隆ちゃん、ひょっとして何か……私に言いたいこと……ある?」
言って、隆ちゃんの整ったシャープな顔立ちをじっと見上げて小首を傾げる。
彼は、そんな私にひとつ溜め息をついてから、揶揄うように言った。
「良かったな。相手、結構なイケメンじゃねぇか」
って。
え? イケメンって……どういうこと?
思ってから、すぐにハッとする。
まさか……アリアでのアレ、見られてた?
私は隆ちゃんの言葉に、思わず手にしていた買い物袋を取り落とした。
こんなに動揺したら「はい」って言ってるのと同じじゃないっ。
久遠寺くんとのアレを、隆ちゃんに見られていたのかもしれないって思ったら、指先までスーッと一気に冷えていくようで。
「バッカ、お前何やってんだよ。卵とか買ってねぇだろうな?」
言いながら、隆ちゃんが落とした買い物袋を拾い上げて、中身を気にしながら差し出してくれる。
私はそれを恐る恐る受け取りながら、小声でポツンとつぶやいた。
「きょ、協定があって……色々な問題が片付くまで周りにはアレ、内緒なのっ。だからっ」
私はギュッと袋の持ち手を握りしめると、
「隆ちゃんも見なかったことにしといてっ!」
まくし立てるようにそう言って、くるりと踵を返して逃げるように走り去った。
何でっ!?
何でっ!?
よりによって大好きな隆ちゃんにあんなところ、見られてたなんてっ!
告白されてたの?とか聞かれたわけじゃないから、実際にはどの辺りまで知られているのかは分からないけど……。
でも……男の子と2人きりなところ見られたとか……誤解されていても不思議じゃない。
内緒も何も、隆ちゃんと私の大学の友達には接点なんてないのだから、何にも支障なんてないのに。
絶対、なにバカなこと言ってんだよアイツって思われてるよね……。
でもね……。出来れば本当……、記憶から消し去って欲しいの。
隆ちゃん自身の記憶から。
お願いっ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる