【完結】【R18】キス先② 大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!

鷹槻れん

文字の大きさ
5 / 105
1.修太郎さん、まだお話しがっ

果てしなく底なしの

「お行きになられるといい」

 そうして、そのまま吐息を吹き込むように「行けばいい」と告げて、修太郎しゅうたろうの反応を気にして戸惑っている日織ひおりの背中をそっと押してやる。

(本当は行かせたくなんてありませんが――)

 喉元まで出かかった言葉を、理性を総動員してグッと飲み込むと、修太郎は
「ですが……決してお酒は口になさいませんよう」
 言ってから、ふと思い出したように「でも……もしもどうしても、の場合は――」と続けようとしたら、「日本酒にしますっ!」

 日織が迷いなく言い放った。


 そう。
 日織ひおりは何故か日本酒に対してのみ、驚くほどに耐性のある子なのだ。
 酔わないわけではないけれど、他の酒のように微量でフニャフニャになったりせずに、しっかり意識を保っていられる。

 一升瓶を飲み干せばさすがに危ないかもしれないが、1合、2合程度ならばおそらく何の問題もないだろう。

 そう修太郎しゅうたろうが確信してしまえるほどに、日織は日本酒に強い。

 ただひとつ問題があるとすれば――。


「ただし、度を過ぎることだけは控えてください。でないと日織さんは性に対してやけに積極的になられて危険ですから」

 修太郎が溜め息混じりに小さくそう付け加えたのは、過日それで彼自身が日織に攻め立てられて、物凄く戸惑ったのを覚えているからだ。

 あんなエッチな姿は、自分の前でだけにして欲しい。
 修太郎は心の底からそう願わずにはいられない。


「そっ、そんなっ。人を盛りがついた猛獣みたいに言わないでくださいっ。わ、私だって相手を選びますっ!」

(それは、相手が自分だったからあんなに精力的になられたのだと思ったのでいいんだろうか? それとも、好みの男であれば自分じゃなくても襲ってしまうという意味ですか?)

 日織に限ってそんなふしだらなことはないと頭では分かっているはずなのに、ふと思い浮かんでしまった考えに、情けなくも修太郎の心はチクチクとさいなまれそうになってしまう。

 愚かな妄想に不安になって眉根を寄せる修太郎しゅうたろうに、日織ひおりがそっと身体を擦り寄せるようにしてつぶやいた。

「私のは……修太郎さんに対してだけなのに。疑うなんて酷いのですっ。私、修太郎さんしか知らないのにっ!」

 どこかあどけなさを残す愛らしい顔で、日織は時折こんな風に大胆なことをサラリと言って、修太郎を戸惑わせる。
 そこがまた彼女の魅力だと分かっていても、心臓に悪いのは確かだ。


「日織さん……」

 吐息混じりに修太郎がそんな罪作りな若妻の名を呼べば、「なんでしょう?」とキョトンとした顔をする。

「それは……お互い様なのですが」

 修太郎が日織の顔を見つめてつぶやくようにそう言ったら、
「日織は一途な修太郎さんが大好きなのですっ」
 満面の笑みで、日織がギュッとしがみついてくる。

 修太郎が、日織には到底敵わない、と白旗を上げたくなるのは、まさにこういう時だ。


 ギリギリのところで懸命にあれこれ我慢しているというのに。
 日織はそれすらも叩き壊さんばかりに追い討ちをかけてくる。


「貴方はっ。僕をどれだけ煽るおつもりですかっ」

 さすがにもう一度抱かせて欲しいと言ったら、日織は戸惑うだろう。
 それが分かっているから、恨み節のひとつもこぼしたくなった修太郎である。


 日織は分かっていないのだ。

 三十路みそじを過ぎるまで日織を思い続けて、他の女性に見向きもしなかった修太郎にとって、やっと手に入れた日織に対する欲望が、果てしなく底なしだということを。




✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
――
日本酒と日織ひおりのアレコレについては『キス先①』に収録の『相性がいいみたいなのですっ』に詳しく書いてあります。
もしまだの方で「?」と思われた方、おられましたらお暇な折に是非❤️




感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。