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1.修太郎さん、まだお話しがっ
果てしなく底なしの
「お行きになられるといい」
そうして、そのまま吐息を吹き込むように「行けばいい」と告げて、修太郎の反応を気にして戸惑っている日織の背中をそっと押してやる。
(本当は行かせたくなんてありませんが――)
喉元まで出かかった言葉を、理性を総動員してグッと飲み込むと、修太郎は
「ですが……決してお酒は口になさいませんよう」
言ってから、ふと思い出したように「でも……もしもどうしても、の場合は――」と続けようとしたら、「日本酒にしますっ!」
日織が迷いなく言い放った。
そう。
日織は何故か日本酒に対してのみ、驚くほどに耐性のある子なのだ。
酔わないわけではないけれど、他の酒のように微量でフニャフニャになったりせずに、しっかり意識を保っていられる。
一升瓶を飲み干せばさすがに危ないかもしれないが、1合、2合程度ならばおそらく何の問題もないだろう。
そう修太郎が確信してしまえるほどに、日織は日本酒に強い。
ただひとつ問題があるとすれば――。
「ただし、度を過ぎることだけは控えてください。でないと日織さんは性に対してやけに積極的になられて危険ですから」
修太郎が溜め息混じりに小さくそう付け加えたのは、過日それで彼自身が日織に攻め立てられて、物凄く戸惑ったのを覚えているからだ。
あんなエッチな姿は、自分の前でだけにして欲しい。
修太郎は心の底からそう願わずにはいられない。
「そっ、そんなっ。人を盛りがついた猛獣みたいに言わないでくださいっ。わ、私だって相手を選びますっ!」
(それは、相手が自分だったからあんなに精力的になられたのだと思ったのでいいんだろうか? それとも、好みの男であれば自分じゃなくても襲ってしまうという意味ですか?)
日織に限ってそんなふしだらなことはないと頭では分かっているはずなのに、ふと思い浮かんでしまった考えに、情けなくも修太郎の心はチクチクと苛まれそうになってしまう。
愚かな妄想に不安になって眉根を寄せる修太郎に、日織がそっと身体を擦り寄せるようにしてつぶやいた。
「私のしたい気持ちは……修太郎さんに対してだけなのに。疑うなんて酷いのですっ。私、修太郎さんしか知らないのにっ!」
どこかあどけなさを残す愛らしい顔で、日織は時折こんな風に大胆なことをサラリと言って、修太郎を戸惑わせる。
そこがまた彼女の魅力だと分かっていても、心臓に悪いのは確かだ。
「日織さん……」
吐息混じりに修太郎がそんな罪作りな若妻の名を呼べば、「なんでしょう?」とキョトンとした顔をする。
「それは……お互い様なのですが」
修太郎が日織の顔を見つめてつぶやくようにそう言ったら、
「日織は一途な修太郎さんが大好きなのですっ」
満面の笑みで、日織がギュッとしがみついてくる。
修太郎が、日織には到底敵わない、と白旗を上げたくなるのは、まさにこういう時だ。
ギリギリのところで懸命にあれこれ我慢しているというのに。
日織はそれすらも叩き壊さんばかりに追い討ちをかけてくる。
「貴方はっ。僕をどれだけ煽るおつもりですかっ」
さすがにもう一度抱かせて欲しいと言ったら、日織は戸惑うだろう。
それが分かっているから、恨み節のひとつもこぼしたくなった修太郎である。
日織は分かっていないのだ。
三十路を過ぎるまで日織を思い続けて、他の女性に見向きもしなかった修太郎にとって、やっと手に入れた日織に対する欲望が、果てしなく底なしだということを。
✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
――
日本酒と日織のアレコレについては『キス先①』に収録の『相性がいいみたいなのですっ』に詳しく書いてあります。
もしまだの方で「?」と思われた方、おられましたらお暇な折に是非❤️
そうして、そのまま吐息を吹き込むように「行けばいい」と告げて、修太郎の反応を気にして戸惑っている日織の背中をそっと押してやる。
(本当は行かせたくなんてありませんが――)
喉元まで出かかった言葉を、理性を総動員してグッと飲み込むと、修太郎は
「ですが……決してお酒は口になさいませんよう」
言ってから、ふと思い出したように「でも……もしもどうしても、の場合は――」と続けようとしたら、「日本酒にしますっ!」
日織が迷いなく言い放った。
そう。
日織は何故か日本酒に対してのみ、驚くほどに耐性のある子なのだ。
酔わないわけではないけれど、他の酒のように微量でフニャフニャになったりせずに、しっかり意識を保っていられる。
一升瓶を飲み干せばさすがに危ないかもしれないが、1合、2合程度ならばおそらく何の問題もないだろう。
そう修太郎が確信してしまえるほどに、日織は日本酒に強い。
ただひとつ問題があるとすれば――。
「ただし、度を過ぎることだけは控えてください。でないと日織さんは性に対してやけに積極的になられて危険ですから」
修太郎が溜め息混じりに小さくそう付け加えたのは、過日それで彼自身が日織に攻め立てられて、物凄く戸惑ったのを覚えているからだ。
あんなエッチな姿は、自分の前でだけにして欲しい。
修太郎は心の底からそう願わずにはいられない。
「そっ、そんなっ。人を盛りがついた猛獣みたいに言わないでくださいっ。わ、私だって相手を選びますっ!」
(それは、相手が自分だったからあんなに精力的になられたのだと思ったのでいいんだろうか? それとも、好みの男であれば自分じゃなくても襲ってしまうという意味ですか?)
日織に限ってそんなふしだらなことはないと頭では分かっているはずなのに、ふと思い浮かんでしまった考えに、情けなくも修太郎の心はチクチクと苛まれそうになってしまう。
愚かな妄想に不安になって眉根を寄せる修太郎に、日織がそっと身体を擦り寄せるようにしてつぶやいた。
「私のしたい気持ちは……修太郎さんに対してだけなのに。疑うなんて酷いのですっ。私、修太郎さんしか知らないのにっ!」
どこかあどけなさを残す愛らしい顔で、日織は時折こんな風に大胆なことをサラリと言って、修太郎を戸惑わせる。
そこがまた彼女の魅力だと分かっていても、心臓に悪いのは確かだ。
「日織さん……」
吐息混じりに修太郎がそんな罪作りな若妻の名を呼べば、「なんでしょう?」とキョトンとした顔をする。
「それは……お互い様なのですが」
修太郎が日織の顔を見つめてつぶやくようにそう言ったら、
「日織は一途な修太郎さんが大好きなのですっ」
満面の笑みで、日織がギュッとしがみついてくる。
修太郎が、日織には到底敵わない、と白旗を上げたくなるのは、まさにこういう時だ。
ギリギリのところで懸命にあれこれ我慢しているというのに。
日織はそれすらも叩き壊さんばかりに追い討ちをかけてくる。
「貴方はっ。僕をどれだけ煽るおつもりですかっ」
さすがにもう一度抱かせて欲しいと言ったら、日織は戸惑うだろう。
それが分かっているから、恨み節のひとつもこぼしたくなった修太郎である。
日織は分かっていないのだ。
三十路を過ぎるまで日織を思い続けて、他の女性に見向きもしなかった修太郎にとって、やっと手に入れた日織に対する欲望が、果てしなく底なしだということを。
✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
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日本酒と日織のアレコレについては『キス先①』に収録の『相性がいいみたいなのですっ』に詳しく書いてあります。
もしまだの方で「?」と思われた方、おられましたらお暇な折に是非❤️
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