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3.今の男は誰ですか?

そう見えねぇけど、人妻なんだよな

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「二次会に行く人はこのまま私たちについて来て下さぁ~い!」

 会が始まって2時間ちょっとが過ぎた頃、チリンチリンという呼び鈴の音が場内に鳴り響いた。

 高く澄んだその音は、あちこちで盛り上がっていた談笑を途切れさせるには十分で、一瞬シン……と静まり返った隙を逃さず、よく通る女性の声が会場中に響き渡る。

 日織ひおりは彼女の名前を覚えてはいなかったけれど、多分学級委員とかやってくれていた女の子だよね、と思って。

「玉田だよ。ほら、覚えてね? 1年の時同じクラスで学級委員やってただろ?」

 確かその時の男子側の学級委員は――。

 ぼんやりと横にいる羽住はすみを見詰めたら、「ん? 俺もあいつと一緒にやってたって思い出してくれた?」と悪戯っぽく笑われた。

 今の今まで忘れていたけれど、そう言えば小学生の頃は日織ひおり揶揄からかいまくっていたヤンチャ坊主な印象の羽住はすみだったけれど、中学生になった途端、そういう幼稚なことを一切して来なくなった。

 部活や勉強が忙しくなったからかな?と勝手に思って胸を撫で下ろしていた日織ひおりだけれど、そうだ。
 羽住はすみは中学では委員会活動やクラスの役員など、人が敬遠するような役回りに積極的に取り組む熱血漢タイプになっていたのだ。

 小学生の頃から面倒見が良いお節介タイプで、元々そういう素地がある男子だとは思っていたけれど、変に関わってまたようになるのは嫌だったので、日織はそんな羽住はすみと、これ幸いと極力接点を持たないようにしたんだった。

 それで、すっかり忘れていた。


「……な、何となく思い出しただけなのですっ」

 自分から、周りに壁を作っていたことを今更のように気付かされて、ちょっぴり恥ずかしくなってしまった日織だ。

 うつむきがちにそう言ったら「そっか」と笑みを含んだ声で言われてふわりと頭を撫でられた。

 その感触にビックリして思わず身体を引いたら「あ、わりぃ、つい」と苦笑されて。

「私っ、夫がいる身なのでそういうのはやめて頂きたいのです」

 眉根を寄せた日織に、羽住はすみが淡く微笑んで「……そうだよな。お前、全然そう見えねぇけど……人妻なんだよな」と吐息を落とした。
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