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3.今の男は誰ですか?
宣戦布告
***
日織は、羽住から散々誘われたけれど、二次会は固辞させてもらった。
一刻も早く大好きな修太郎の顔を見たかったからだ。
別に羽住に言われたアレコレが引っかかっているわけではないと思いたいけれど、一緒に住めていない現状を鑑みると、2人でいられる時間は極力ともに過ごしたい、過ごさなくちゃいけない!と強く感じてしまった。
羽住からの誘いを断る時、そんなあれこれに捉われていたら、思いのほか表情が曇っていたらしく、やたらと心配されてしまった。
――いわく、「お前、ホントにその旦那と結婚して幸せなのか? お前ばっかり辛いんじゃないのか?」と。
羽住のその問いかけで日織は余計に決心したのだ。
会場を出たら、すぐにでも修太郎さんに連絡を取ろう、と。
大好きな修太郎の顔を見れば、今思い悩んでいることなど些末なことだと流せる気がした。
***
「修太郎さんっ。同窓会、終わったのです」
同窓会会場から出て少し行った先。
長椅子の置かれた辺りまで来たところで、日織は窓外を眺めながらクロークから受け取ったばかりのコートを小脇に抱えて、いそいそと修太郎に電話を掛けた。
コール数回で『日織さん?』という大好きな低音ボイスが耳を震わせて。
離れていたのはたったの数時間なのに、日織はキュンと胸が締め付けられるような切なさを覚えた。
マスオさん状態?じゃなくったって、普通の夫婦みたいな有り様じゃなくったって……修太郎さんと自分は紛れもなく夫婦なのだと、スマートフォンをギュッと握りしめて誰にともなく言い訳をする。
と、そこで――。
「なぁ、日織。ホントに二次会来ねぇの? 俺、お前が来てくんねぇとマジ詰まんねぇんだけど。――ほら、さっきの話ももうちょっと煮詰めてぇしよ。……来いよ」
みんなと一緒に二次会会場に向かったはずの羽住が、何故か窓辺で外の方を向いて立つ日織の肩をポンと叩いてそう声を掛けてきて。
「ひゃわっ」
全神経を修太郎との電話に傾けていた日織は、突然のボディータッチと呼び掛けに必要以上に身体を跳ねさせてしまった。
ビクッとなった反動で、手にしていたスマートフォンとコートが、柔らかなウィルトン織りのカーペット敷きの床に落ちてしまう。
「あー、悪い。電話中だったか」
言いながら、立ち尽くしたままの日織の代わりに、羽住が落としたスマートフォンとコートを拾って「旦那?」と聞きながら手渡してくれて。
それに頷きながら受け取った携帯の電話口からは、『日織さんっ!?』とどこか慌てた様子の修太郎の声が聞こえていた。
「あ、しゅ、修太郎さん、ごめんなさいっ! わ、私っ、今お電話を落としてしまって……それでっ」
修太郎の声にハッとした日織が慌ててそう応えたことに、繋がっている通話の先でホッとしたように吐息を落とす気配がして。
そうしてすぐ、いつもよりも低められた声音で、
『ところで日織。今の男は誰ですか?』
という言葉が聞こえてきた。
日織は、自分を呼び捨てにして問いかけられたどこか冷たい怒りを孕んだ修太郎の声に、ゾロリと背筋を撫でられた気がした。
「い、今の方は……同級生の――」
言おうとしたら、横からいきなりスマートフォンを取り上げられて
「初めまして、塚田さん。――俺、コイツ……あ、失礼。えっと……あなたの奥さんの幼なじみの羽住十升って言います」
まるで宣戦布告みたいに、羽住が日織の電話を奪って、わざとらしくそう自己紹介をした。
日織は、羽住から散々誘われたけれど、二次会は固辞させてもらった。
一刻も早く大好きな修太郎の顔を見たかったからだ。
別に羽住に言われたアレコレが引っかかっているわけではないと思いたいけれど、一緒に住めていない現状を鑑みると、2人でいられる時間は極力ともに過ごしたい、過ごさなくちゃいけない!と強く感じてしまった。
羽住からの誘いを断る時、そんなあれこれに捉われていたら、思いのほか表情が曇っていたらしく、やたらと心配されてしまった。
――いわく、「お前、ホントにその旦那と結婚して幸せなのか? お前ばっかり辛いんじゃないのか?」と。
羽住のその問いかけで日織は余計に決心したのだ。
会場を出たら、すぐにでも修太郎さんに連絡を取ろう、と。
大好きな修太郎の顔を見れば、今思い悩んでいることなど些末なことだと流せる気がした。
***
「修太郎さんっ。同窓会、終わったのです」
同窓会会場から出て少し行った先。
長椅子の置かれた辺りまで来たところで、日織は窓外を眺めながらクロークから受け取ったばかりのコートを小脇に抱えて、いそいそと修太郎に電話を掛けた。
コール数回で『日織さん?』という大好きな低音ボイスが耳を震わせて。
離れていたのはたったの数時間なのに、日織はキュンと胸が締め付けられるような切なさを覚えた。
マスオさん状態?じゃなくったって、普通の夫婦みたいな有り様じゃなくったって……修太郎さんと自分は紛れもなく夫婦なのだと、スマートフォンをギュッと握りしめて誰にともなく言い訳をする。
と、そこで――。
「なぁ、日織。ホントに二次会来ねぇの? 俺、お前が来てくんねぇとマジ詰まんねぇんだけど。――ほら、さっきの話ももうちょっと煮詰めてぇしよ。……来いよ」
みんなと一緒に二次会会場に向かったはずの羽住が、何故か窓辺で外の方を向いて立つ日織の肩をポンと叩いてそう声を掛けてきて。
「ひゃわっ」
全神経を修太郎との電話に傾けていた日織は、突然のボディータッチと呼び掛けに必要以上に身体を跳ねさせてしまった。
ビクッとなった反動で、手にしていたスマートフォンとコートが、柔らかなウィルトン織りのカーペット敷きの床に落ちてしまう。
「あー、悪い。電話中だったか」
言いながら、立ち尽くしたままの日織の代わりに、羽住が落としたスマートフォンとコートを拾って「旦那?」と聞きながら手渡してくれて。
それに頷きながら受け取った携帯の電話口からは、『日織さんっ!?』とどこか慌てた様子の修太郎の声が聞こえていた。
「あ、しゅ、修太郎さん、ごめんなさいっ! わ、私っ、今お電話を落としてしまって……それでっ」
修太郎の声にハッとした日織が慌ててそう応えたことに、繋がっている通話の先でホッとしたように吐息を落とす気配がして。
そうしてすぐ、いつもよりも低められた声音で、
『ところで日織。今の男は誰ですか?』
という言葉が聞こえてきた。
日織は、自分を呼び捨てにして問いかけられたどこか冷たい怒りを孕んだ修太郎の声に、ゾロリと背筋を撫でられた気がした。
「い、今の方は……同級生の――」
言おうとしたら、横からいきなりスマートフォンを取り上げられて
「初めまして、塚田さん。――俺、コイツ……あ、失礼。えっと……あなたの奥さんの幼なじみの羽住十升って言います」
まるで宣戦布告みたいに、羽住が日織の電話を奪って、わざとらしくそう自己紹介をした。
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