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9.佳穂とカフェで
忘れててすまない
「きっと、僕の日織さんは和装も洋装もどっちも似合う」
どっちも、を強調してキッパリと言い切った修太郎を見て、佳穂が一瞬驚いた顔をした後、ププッと吹き出した。
「相変わらずの溺愛ぶりね」
そんなことは言われなくても分かっているけれど、他者からあえて口にされると何となく面白くない修太郎だ。
「自分の妻を愛してて何が悪い」
憮然と言い放ったら「悪くないわ。私も愛されてるし」と、ご馳走様なセリフをサラリと言って、
「その修太郎が、よ。何で土曜の午後にひとりでカフェにいるの?」
結局、話が振り出しに戻った。
「僕のことはどうでもいいんだよ。佳穂こそ何でひとり?」
矛先を逸らしたくて言ったら、「健二、いま、お義父さまの外遊に同行中で不在よ?」と何でもないことのように返された。
そう言えば、前に健二がそんなことを言っていたとハッとした修太郎だ。
自分が不在の間、ひとり留守番をする佳穂のことを気遣ってやって欲しいと頼まれていたのに、日織のアレコレが気になりすぎてスッポリ抜け落ちてしまっていた。
「健二から私のこと頼まれてたの、忘れてたでしょ?」
言ってくすくす笑った佳穂に、修太郎は何も言い返すことができなかった。
「まぁ私、ご覧の通り誰かに守ってもらわなきゃいけないようなか弱い女じゃないから……そこは気にしないで?」
そう言われはしたけれど。
「――忘れててすまない。で、体調の方は問題ないのか?」
と聞かずにはいられない。
確か佳穂は今、妊娠初期のはずだ。
二ヶ月ぐらいだったと記憶しているが、何があるか分からない時期でもあるし、健二も心配していたのだ。
「ん~? 平気よ? 幸い私、つわりも全然ないし。本当にお腹に赤ちゃんいるの?ってくらい何にも変化なしで逆に怖いくらい」
今、修太郎の前に座った佳穂が飲んでいるコーヒーは、カフェインレスの無糖ミルクコーヒーだ。
最近のデカフェは普通のコーヒーと遜色ないくらい美味しいらしいが、お酒が好きな佳穂にとっては、飲酒を我慢しないといけない方が辛いとか何とか。
「体調に問題がないんならいいんだ」
自分の前に置かれたブラックコーヒーをひと口飲みながら修太郎が言えば、佳穂がクスッと笑って。
「で、さっきの話。何で今日は日織ちゃんと一緒じゃないの?」
何度はぐらかしても結局佳穂はこの話題をスルーしてくれるつもりはないらしい。
修太郎は吐息と共に覚悟を決めた。
「今、日織さんは同級生のやっている酒蔵へ行ってるんだ」
「酒蔵へ? 何しに?」
まさかお使いじゃないよね?と付け加えられて、「当たり前だろ」と思った修太郎だ。
(酒を買いに行ってくれただけならどんなにいいか――)
そこまで考えて、「まぁその場合は日織さんをひとりで行かせるとか有り得ませんけどね」と即座に思う。
(そうじゃないから困ってるんだ)
思わず舌打ちしたい気分になって、修太郎は手にしたコーヒーをひと口飲んで一呼吸分冷静になる時間を取った。
「――来週末に市の主催で地元の酒蔵を集めた酒蔵祭りがある。日織さんはそこに出店する『羽住酒造』の売り子をすることになってるんだ」
どっちも、を強調してキッパリと言い切った修太郎を見て、佳穂が一瞬驚いた顔をした後、ププッと吹き出した。
「相変わらずの溺愛ぶりね」
そんなことは言われなくても分かっているけれど、他者からあえて口にされると何となく面白くない修太郎だ。
「自分の妻を愛してて何が悪い」
憮然と言い放ったら「悪くないわ。私も愛されてるし」と、ご馳走様なセリフをサラリと言って、
「その修太郎が、よ。何で土曜の午後にひとりでカフェにいるの?」
結局、話が振り出しに戻った。
「僕のことはどうでもいいんだよ。佳穂こそ何でひとり?」
矛先を逸らしたくて言ったら、「健二、いま、お義父さまの外遊に同行中で不在よ?」と何でもないことのように返された。
そう言えば、前に健二がそんなことを言っていたとハッとした修太郎だ。
自分が不在の間、ひとり留守番をする佳穂のことを気遣ってやって欲しいと頼まれていたのに、日織のアレコレが気になりすぎてスッポリ抜け落ちてしまっていた。
「健二から私のこと頼まれてたの、忘れてたでしょ?」
言ってくすくす笑った佳穂に、修太郎は何も言い返すことができなかった。
「まぁ私、ご覧の通り誰かに守ってもらわなきゃいけないようなか弱い女じゃないから……そこは気にしないで?」
そう言われはしたけれど。
「――忘れててすまない。で、体調の方は問題ないのか?」
と聞かずにはいられない。
確か佳穂は今、妊娠初期のはずだ。
二ヶ月ぐらいだったと記憶しているが、何があるか分からない時期でもあるし、健二も心配していたのだ。
「ん~? 平気よ? 幸い私、つわりも全然ないし。本当にお腹に赤ちゃんいるの?ってくらい何にも変化なしで逆に怖いくらい」
今、修太郎の前に座った佳穂が飲んでいるコーヒーは、カフェインレスの無糖ミルクコーヒーだ。
最近のデカフェは普通のコーヒーと遜色ないくらい美味しいらしいが、お酒が好きな佳穂にとっては、飲酒を我慢しないといけない方が辛いとか何とか。
「体調に問題がないんならいいんだ」
自分の前に置かれたブラックコーヒーをひと口飲みながら修太郎が言えば、佳穂がクスッと笑って。
「で、さっきの話。何で今日は日織ちゃんと一緒じゃないの?」
何度はぐらかしても結局佳穂はこの話題をスルーしてくれるつもりはないらしい。
修太郎は吐息と共に覚悟を決めた。
「今、日織さんは同級生のやっている酒蔵へ行ってるんだ」
「酒蔵へ? 何しに?」
まさかお使いじゃないよね?と付け加えられて、「当たり前だろ」と思った修太郎だ。
(酒を買いに行ってくれただけならどんなにいいか――)
そこまで考えて、「まぁその場合は日織さんをひとりで行かせるとか有り得ませんけどね」と即座に思う。
(そうじゃないから困ってるんだ)
思わず舌打ちしたい気分になって、修太郎は手にしたコーヒーをひと口飲んで一呼吸分冷静になる時間を取った。
「――来週末に市の主催で地元の酒蔵を集めた酒蔵祭りがある。日織さんはそこに出店する『羽住酒造』の売り子をすることになってるんだ」
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