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17.修太郎さん、私、一緒に行って頂きたい場所があるのです
もうゴムがない
「あのね、修太郎さん、私……明日、――あ、正確には今日ですね……。一緒に行って頂きたいところがあるのですっ」
先日の酒蔵祭りが終わって、日織のバイト生活もひと段落。
羽住酒造からは続けて販売所の売り子として来て欲しいと打診を受けた日織だったけれど、ひとまず一旦は辞めさせて頂きたいと申し出たところだ。
いまは、修太郎との結婚式の準備に専念したいという思いが強かったし、結婚式が終われば晴れて夫である修太郎と一緒に暮らせるようになる。
そのための引越し準備も頑張りたい。
それに、何より日織が今回外に働きに出たかった理由の一番大きなものが、今回もらったバイト代で達成できそうだったからだ。
「一緒に?」
付き合い始めてからずっと。時間さえ合えば常に行動を共にしているふたりだ。
最近では週末に日織がお泊まりに来るのは必然のようになっていたし、一緒にいればデートにだって必ず出かけている。
今だって、〝そのルーティン〟の真っ最中なわけで――。
改めてこんな風に問い掛けられるのは、修太郎にとって逆に不思議だった。
「はい。いつもは場所を定めずにお出かけしていますよね? でも今日は……私、修太郎さんと一緒に赴きたい場所があるのですっ」
ベッドの中。
生まれたままの姿の日織が、胸元を恥ずかしそうに片手で隠しながら、すぐそばに横たわる修太郎を見つめてくるのはなかなかに〝くる〟ものがあって。
修太郎は今、眼鏡がベッドの宮棚に置かれていて本当に良かったと思っている。
薄暗いのも相まって、日織の表情がクリアに見えないのもある意味有難い。
でないともう一度、と迫って日織に無理をさせてしまいそうだった。
それに何より――。
(もう避妊具がない……)
六個入りが一箱あったから大丈夫だと思っていたのに、何だかんだで一晩で使い果たしてしまった。
このところバタバタしていて、買い足しそびれていた結果、不覚にもストックを切らしてしまっていた。
こんなこと、日織と付き合い始めて初めてのことだったから、自分が如何に彼女のバイトと結婚式準備のダブルパンチでダメージを受けてそわついていたのか分かる。
(実際羽住兄弟の存在も大きかったんですよね)
苦々しくそんなことを思ったら、特に和装眼鏡の長兄の顔がチラついて、少しイラッとしてしまった。
(眼鏡もそろそろ買い替えないと……)
デザイン的にも何だか向こうのほうが洗練されているように思えたし、何より結構長いこと使って来たので、修太郎の眼鏡はあちこちにガタが来ている。
結婚式が終わって落ち着いたら、と思ってはいるのだけれど。
(ま、その前にゴムですね)
それがないから、いま日織に手を出すわけにはいかないのだ。
(しかし……そうなるとこの状況は結構拷問です)
と思ってしまった修太郎である。
「あの……ダメ、ですか?」
あれこれ考えて返事が遅れてしまったからだろう。
修太郎の気も知らないで、日織がそっと彼の胸元に小さな手を添えてきた。
それだけで思わず切ない吐息が漏れて、修太郎は(日織さん! お願いですからいまは僕を刺激しないでください!)と声にならない悲鳴を上げる。
「だっ、ダメじゃありません! 行きましょう! 日織さんの行きたいところ! ――どこへなりともお供します!」
それを誤魔化そうと彼女の手を引き剥がすようにギュッと握ってそう告げたら、やたらと張り切った感じにまくし立てた言い方になってしまって、日織にクスクスと笑われてしまった。
「おかしな修太郎さんなのですっ」
(ああ、僕の妻は何て凶悪に可愛んだろう!)
自分を見上げて楽しそうに笑う日織を見て、修太郎は、吐息混じりにそう思った。
先日の酒蔵祭りが終わって、日織のバイト生活もひと段落。
羽住酒造からは続けて販売所の売り子として来て欲しいと打診を受けた日織だったけれど、ひとまず一旦は辞めさせて頂きたいと申し出たところだ。
いまは、修太郎との結婚式の準備に専念したいという思いが強かったし、結婚式が終われば晴れて夫である修太郎と一緒に暮らせるようになる。
そのための引越し準備も頑張りたい。
それに、何より日織が今回外に働きに出たかった理由の一番大きなものが、今回もらったバイト代で達成できそうだったからだ。
「一緒に?」
付き合い始めてからずっと。時間さえ合えば常に行動を共にしているふたりだ。
最近では週末に日織がお泊まりに来るのは必然のようになっていたし、一緒にいればデートにだって必ず出かけている。
今だって、〝そのルーティン〟の真っ最中なわけで――。
改めてこんな風に問い掛けられるのは、修太郎にとって逆に不思議だった。
「はい。いつもは場所を定めずにお出かけしていますよね? でも今日は……私、修太郎さんと一緒に赴きたい場所があるのですっ」
ベッドの中。
生まれたままの姿の日織が、胸元を恥ずかしそうに片手で隠しながら、すぐそばに横たわる修太郎を見つめてくるのはなかなかに〝くる〟ものがあって。
修太郎は今、眼鏡がベッドの宮棚に置かれていて本当に良かったと思っている。
薄暗いのも相まって、日織の表情がクリアに見えないのもある意味有難い。
でないともう一度、と迫って日織に無理をさせてしまいそうだった。
それに何より――。
(もう避妊具がない……)
六個入りが一箱あったから大丈夫だと思っていたのに、何だかんだで一晩で使い果たしてしまった。
このところバタバタしていて、買い足しそびれていた結果、不覚にもストックを切らしてしまっていた。
こんなこと、日織と付き合い始めて初めてのことだったから、自分が如何に彼女のバイトと結婚式準備のダブルパンチでダメージを受けてそわついていたのか分かる。
(実際羽住兄弟の存在も大きかったんですよね)
苦々しくそんなことを思ったら、特に和装眼鏡の長兄の顔がチラついて、少しイラッとしてしまった。
(眼鏡もそろそろ買い替えないと……)
デザイン的にも何だか向こうのほうが洗練されているように思えたし、何より結構長いこと使って来たので、修太郎の眼鏡はあちこちにガタが来ている。
結婚式が終わって落ち着いたら、と思ってはいるのだけれど。
(ま、その前にゴムですね)
それがないから、いま日織に手を出すわけにはいかないのだ。
(しかし……そうなるとこの状況は結構拷問です)
と思ってしまった修太郎である。
「あの……ダメ、ですか?」
あれこれ考えて返事が遅れてしまったからだろう。
修太郎の気も知らないで、日織がそっと彼の胸元に小さな手を添えてきた。
それだけで思わず切ない吐息が漏れて、修太郎は(日織さん! お願いですからいまは僕を刺激しないでください!)と声にならない悲鳴を上げる。
「だっ、ダメじゃありません! 行きましょう! 日織さんの行きたいところ! ――どこへなりともお供します!」
それを誤魔化そうと彼女の手を引き剥がすようにギュッと握ってそう告げたら、やたらと張り切った感じにまくし立てた言い方になってしまって、日織にクスクスと笑われてしまった。
「おかしな修太郎さんなのですっ」
(ああ、僕の妻は何て凶悪に可愛んだろう!)
自分を見上げて楽しそうに笑う日織を見て、修太郎は、吐息混じりにそう思った。
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