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17.修太郎さん、私、一緒に行って頂きたい場所があるのです
日織にドーンとお任せなのですっ!
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***
「ここなのですっ」
県外にある、ちょっと大きめなショッピングモール内。
日織がある店舗の前でニコッと笑って修太郎を振り返って。
修太郎は何故に眼鏡屋⁉︎と思わずにはいられない。
「日織さん、目を悪くされたのですか?」
眼鏡に関しては先輩(?)な自分に、眼鏡選びを手伝って欲しいのかな?と思った修太郎だ。
日織はコンタクトレンズを入れている様子もないし、視力は良かったと認識していたのだが、もしや自分が気付かないうちに視力が落ちてしまっていたのだろうか。
「気付かなくてすみません」
ずっと一緒にいるのに、愛する日織が不便な思いをしていることに気付けなかった、と修太郎はひとり反省しきりだ。
だが――。
「え? 私の目は今でも両目ともに二.〇近くありますよ? 全く問題ないのですっ!」
そう言って日織がにっこり微笑んで。
修太郎は混乱してしまう。
「ではどうしてこんなところに?」
つぶやきながら、次に思ったのは
(日織さん、可愛いサングラスでも欲しいのだろうか)
ということで。
度が必要ないのなら、最近はファンシーショップや雑貨屋などでもUVカットのレンズがハマったサングラスが結構種類豊富に取り揃えられていたはずだ。
そちらの方が安価でいいのではないかと思ったのだけれど。
チラリとサングラスが並べられたコーナーに視線を流したら、
「修太郎さん、絶対また違うこと思っていらっしゃいますよね?」
と、日織に苦笑されてしまった。
「え? サングラスじゃないんですか?」
思わず言ったら、「眼鏡と言えば修太郎さんなのですっ」と言い切られてしまった。
「え? 僕……ですか?」
そんなことを言われるとは思ってもみなかった修太郎だ。
そもそも修太郎の世界は日織を中心に回っている。そこから〝自分〟が抜けていても不思議ではない。
キョトンとして自分を指差したら、満面の笑みでコクッと頷かれた。
「修太郎さん、いま掛けていらっしゃる眼鏡、大分アチコチ傷んできてますよね?」
背伸びした日織の小さな手がスッと伸びてきて、労わるように修太郎の頬を撫でる。
そのまま日織の手が、そっと修太郎の眼鏡のツルに触れて。
「修太郎さん、家ではよく眼鏡を外していらっしゃるでしょう? それで先日、ちょっと手に取って見てみたんですけど……レンズにもフレームにもたくさん傷がついていることに気づいて驚かされたのですっ」
掛けている時には分からないような小さな傷や塗装の削れも、手にしてしげしげと眺めてみればよく見える。
修太郎が眼鏡を取るのは風呂や情事の時が主だから、必然的に日織は修太郎が眼鏡を外しているところに遭遇する機会が多くなるというわけだ。
「まぁ、この眼鏡ももう四年目ですからね」
フレームの寿命は大体二~三年と言われている。
それを思うと、寿命を過ぎていることになるのだからガタがきていても当然なわけで。
最近はフィット感にも違和感を覚えるようになったし、レンズの小傷のせいで光がにじむようになって、眼が疲れやすくなった。
修太郎自身、そろそろ換え時だなとは思っていたところだ。
でも――。
この流れだと、もしや日織が買ってくれようとしているのではないかと不安に思ってしまった。
「僕も丁度換え時だと思っていたところです」
言いながら、「よく分かりましたね」と自分の方へ伸ばされたままの日織の手をギュッと握って彼女の顔を間近で覗き込んだ。
「もしかして……僕のために日織さんが好みのフレームを選んでくださるのですか?」
あくまでも自分自身買い換えようと思っていたのだと触れながら、〝選ぶのだけ〟お願いしたいと言外に含ませたつもりの修太郎だ。
だが。
「もちろん! 私が修太郎さんに掛けて頂きたい素敵な眼鏡を選んで差し上げたいと思っています。でも……お顔につけるものですし、好みもありますよね? だから最終的には修太郎さんご自身が一番気に入ったものを選んでいただきたいと思っています。そこに関しては、私に遠慮は無用なのです。ですが――」
そこでグイッと誇らしげに胸を張ると、
「お金のことは気になさらず選んでいただきたいのですっ! 今回は日織にドーンとお任せなのですっ」
言って、胸をポンッと叩かれてしまう。
「ここなのですっ」
県外にある、ちょっと大きめなショッピングモール内。
日織がある店舗の前でニコッと笑って修太郎を振り返って。
修太郎は何故に眼鏡屋⁉︎と思わずにはいられない。
「日織さん、目を悪くされたのですか?」
眼鏡に関しては先輩(?)な自分に、眼鏡選びを手伝って欲しいのかな?と思った修太郎だ。
日織はコンタクトレンズを入れている様子もないし、視力は良かったと認識していたのだが、もしや自分が気付かないうちに視力が落ちてしまっていたのだろうか。
「気付かなくてすみません」
ずっと一緒にいるのに、愛する日織が不便な思いをしていることに気付けなかった、と修太郎はひとり反省しきりだ。
だが――。
「え? 私の目は今でも両目ともに二.〇近くありますよ? 全く問題ないのですっ!」
そう言って日織がにっこり微笑んで。
修太郎は混乱してしまう。
「ではどうしてこんなところに?」
つぶやきながら、次に思ったのは
(日織さん、可愛いサングラスでも欲しいのだろうか)
ということで。
度が必要ないのなら、最近はファンシーショップや雑貨屋などでもUVカットのレンズがハマったサングラスが結構種類豊富に取り揃えられていたはずだ。
そちらの方が安価でいいのではないかと思ったのだけれど。
チラリとサングラスが並べられたコーナーに視線を流したら、
「修太郎さん、絶対また違うこと思っていらっしゃいますよね?」
と、日織に苦笑されてしまった。
「え? サングラスじゃないんですか?」
思わず言ったら、「眼鏡と言えば修太郎さんなのですっ」と言い切られてしまった。
「え? 僕……ですか?」
そんなことを言われるとは思ってもみなかった修太郎だ。
そもそも修太郎の世界は日織を中心に回っている。そこから〝自分〟が抜けていても不思議ではない。
キョトンとして自分を指差したら、満面の笑みでコクッと頷かれた。
「修太郎さん、いま掛けていらっしゃる眼鏡、大分アチコチ傷んできてますよね?」
背伸びした日織の小さな手がスッと伸びてきて、労わるように修太郎の頬を撫でる。
そのまま日織の手が、そっと修太郎の眼鏡のツルに触れて。
「修太郎さん、家ではよく眼鏡を外していらっしゃるでしょう? それで先日、ちょっと手に取って見てみたんですけど……レンズにもフレームにもたくさん傷がついていることに気づいて驚かされたのですっ」
掛けている時には分からないような小さな傷や塗装の削れも、手にしてしげしげと眺めてみればよく見える。
修太郎が眼鏡を取るのは風呂や情事の時が主だから、必然的に日織は修太郎が眼鏡を外しているところに遭遇する機会が多くなるというわけだ。
「まぁ、この眼鏡ももう四年目ですからね」
フレームの寿命は大体二~三年と言われている。
それを思うと、寿命を過ぎていることになるのだからガタがきていても当然なわけで。
最近はフィット感にも違和感を覚えるようになったし、レンズの小傷のせいで光がにじむようになって、眼が疲れやすくなった。
修太郎自身、そろそろ換え時だなとは思っていたところだ。
でも――。
この流れだと、もしや日織が買ってくれようとしているのではないかと不安に思ってしまった。
「僕も丁度換え時だと思っていたところです」
言いながら、「よく分かりましたね」と自分の方へ伸ばされたままの日織の手をギュッと握って彼女の顔を間近で覗き込んだ。
「もしかして……僕のために日織さんが好みのフレームを選んでくださるのですか?」
あくまでも自分自身買い換えようと思っていたのだと触れながら、〝選ぶのだけ〟お願いしたいと言外に含ませたつもりの修太郎だ。
だが。
「もちろん! 私が修太郎さんに掛けて頂きたい素敵な眼鏡を選んで差し上げたいと思っています。でも……お顔につけるものですし、好みもありますよね? だから最終的には修太郎さんご自身が一番気に入ったものを選んでいただきたいと思っています。そこに関しては、私に遠慮は無用なのです。ですが――」
そこでグイッと誇らしげに胸を張ると、
「お金のことは気になさらず選んでいただきたいのですっ! 今回は日織にドーンとお任せなのですっ」
言って、胸をポンッと叩かれてしまう。
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