【完結】【R18】キス先② 大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!

鷹槻れん

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17.修太郎さん、私、一緒に行って頂きたい場所があるのです

高ければいいと言うわけではないんですよ、日織さん

 ビシッと修太郎に指先を突きつけて「ちゃんと今日という日を選んだ理由はあるのです!」そう宣言する日織ひおりに、修太郎はドキッとさせられてしまった。

 何だかよく分からないが、だから今日貴方にプレゼントを買うのだと断言されてしまって「そう、だったんですね……」と答えるしかない気がした修太郎だ。

 式の日取りを決める際、「せっかくですし、日曜日に大安が来る日に挙式をしましょう。出来れば日織さんが二三歳のお誕生日を迎えられる前がいい」とか何とか言って、修太郎がお日柄を気にしまくったからだろうか。

 日織にも〝何か事を起こすなら大安吉日病〟が伝染してしまったらしい。

「はい。だからなのですっ! なので、修太郎さんは今日、黙って私にプレゼントされなきゃいけないのですっ。分かりましたか?」

 修太郎は、基本的に日織に滅法甘くて滅法弱い。

「……はい。……分かりました。では……遠慮なくお受けいたします。その……あ、有難うございます」

 よくは分からないけれど、そういうことにされてしまった。


***


 冒険してみるのもありかもしれませんよっ?と焚き付けてみても、実際にはなかなか出来ないものなんだな、と修太郎が選んだ眼鏡を見て日織ひおりは思う。

 修太郎が選んだのは、ビジネスライクな横長スクエアと、ウェリントンの意匠をミックスしたモデル。
 休日だけでなく、スーツ仕事にも使える万能タイプという触れ込みの眼鏡だった。

 眼鏡事情に疎い日織には、今まで修太郎が掛けていたウェリントン型の黒縁眼鏡と大差ないように見えてしまう。

 きっとどちらも同じぐらいの太さの黒縁フレームだからかしらと思った日織だ。

(せめてお色ぐらい変えられても)

 そんなことを考えながらソワソワと修太郎を見上げた日織だったけれど、修太郎がその眼鏡を試着してくれた際、キュン♡ときてしまったのは否定できない。


 実際、日織がお願いしさえすれば、修太郎はアレもコレも全て試着してくれた。


 だけど、
「どうでしょう?」
 そう言って修太郎が振り返った際、日織が思わずポォーッと見惚れてしまったのは、今回「これにします」と修太郎が選んだものだった。

 だけどお値段は、日織ひおりが想定していたものの半値ほどしかしなかったから。

「ほっ、本当にそれでよろしいのですか?」

(もっと高級なブランドの、斬新なデザインのものでも大丈夫ですよっ?)

 心の中でそっとそんな言葉を付け加えた日織だ。


 修太郎が選んだものだって、一応名だたるメーカーのお品らしいのだけど。



「眼鏡はね、高ければいいと言うわけではないんですよ、日織さん」

 修太郎が、まるで日織の心中を見透かしたみたいにそんなことを言うものだから、日織は思わず「なっ、んで分かっちゃったのですかっ?」と素直に暴露してしまって修太郎に笑われてしまう。

「分かりますよ。だって日織さん、ショーケースの中を覗き込まれる際、ずっと値札ばかり見ておられるんですから」

 クスッと笑われて、日織はにわかに恥ずかしくなる。

(お、お値段ばかりに囚われてるとかっ、何だかお金の亡者みたいで浅ましいのですっ)

 そう思ったから。


***


「でもね、日織ひおりさん。貴女が僕のためにより良いものを選びたいと思ってくださったお気持ちは誰よりも分かっているつもりです」

 言って、修太郎がしゅんとしてしまった日織の手をそっと握る。

 そのまま日織の顔の前まで持ち上げた彼女の左手薬指にはまった指輪に、わざと見せつけるように指の腹で愛し気に触れて。

「いつも僕のことを第一に考えてくださって本当に有難うございます」

 言って、手の甲にチュッと口付けた。

「しゅっ、しゅう、たろぉ、さっ……!」

 ここはショッピングモールにある眼鏡屋の店内。
 しかも今日は平日ではなく休日。

 結構たくさんの客で賑わっているのに、そんなのお構いなしといった具合にそんなことをすれば、当然だろう。
 日織が真っ赤になって慌てまくる。

 それが可愛くて堪らない、と思ってしまった修太郎だ。

「大好きです、

 今でも十分日織は照れまくり、そわそわしまくりなのに、さらに追い討ちをかけたのは、勿論わざとだ。

 日織は「もっ、もう分かったので手をっ」と、修太郎に掴まれた手を一生懸命引き戻そうと頑張って。

 耳まで真っ赤にして恥ずかしがる日織に、大満足の修太郎だ。

 暗い顔をしている日織より、照れてゆでだこになった彼女の方が数倍いい。

 プレゼントをもらうなら、修太郎のことで頭が一杯になった日織からいただきたい。

 そんなことを思ってしまう自分は、相当に欲張りなんだろうな、と修太郎は思った。
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