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後日談1。 誕生日
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「ねえねえ~リュウって誕生日いつなの?」
「…繁殖場育ちが知ってるわけがないだろう」
唐突にマヤがそんな事を聞いてきて、俺は首を傾げた。
急にどうしたんだろう、また突拍子もないことを言い出さないといいのだが。
ーーそれにしても、誕生日ねぇ。
ひょっとしたら、奴隷商人に渡された商品説明書的な何かには書いていたかも知れないが。当たり前だが、俺個人はそんなことは知らされてない。
そうだな、マヤと初めて会ったのが俺が生後半年過ぎのことで、あの時が夏だったから。
「まあ、冬生まれだな。十二月か一月じゃないか?」
「うーん、そっかぁ。あ、アタシはね!今月末が誕生日なの!」
「そうだったな。ーープレゼントの希望があるなら普通に言えばいい」
わざわざ俺の誕生日がどうのとかいう話から始めるなんて、まどろっこしくてマヤらしくない。
「違うわよ!そうじゃなくて……“真ん中バースデー”って言うのやってみたかったの」
「……何だソレ」
また訳のわからんことを言い出したな。
「ふっふっふー、真ん中バースデーってのはね!恋人や夫婦の二人の誕生日のちょうど真ん中の日のことよ!」
「そうか。…それで?」
「それで、じゃないわよ!だーかーらー、アタシとリュウの真ん中バースデーを調べて、お祝いしたかったのよ!」
全く鈍いわね!と怒られたが…いや、そもそも何でそんなもの祝いたかったんだ?
マヤの誕生日を祝うのは分かるがーー。
「二人だけの記念日、っていうのが特別感あって良いのよ~。それに、アタシもリュウにあげるプレゼントで悩んでみたいもの」
「…そんなもんか?」
「そんなものなの!」
断言されたがーー知らないものは知らないからな。これはどうしたものか。
「…じゃあ、マヤの誕生日がオレの誕生日ってことにすればいい」
「へ?いやさっき貴方冬生まれって言ったとこじゃない。アタシは春生まれよ?」
「どうせ正確な日なんか分からないんだ。自分で決めたっていいだろう」
数ヶ月なんて誤差だろうと言うと、そんなワケないでしょと呆れられた。
「もうっ、真剣に考えてよぉ~!」
「考えて俺の誕生日が判明するわけじゃないだろう?…それに、ちゃんと真剣に考えた結果だからな」
「…?どういうこと?」
きょとんと目を瞬かせたマヤの目蓋に、キスを落として答える。
「マヤは特別感ってやつが欲しいんだろうーー共にいる二人の誕生日が同じだというのは、特別には感じないのか?」
「えーーえっ?」
「俺と誕生日が被るのは、特別に思わない?」
「そ、それはーー」
特別、かも?としどろもどろになって言うマヤを抱きしめる。
「ま、別に俺はいつでも良いんだけどな」
「ちょっと!さっき言ってたことと違うわ!」
腕の中でむくれたマヤを見て笑う。
「いつでもいいよ。ーー俺の誕生日の日付はマヤにやるから、マヤが俺の誕生日を決めて?」
マヤが決めてくれた日ならいつでもいいと笑うと、そっぽを向かれてしまった。
けれど、その目元はほんのり赤くて。
「誕生日の日付を贈るって、特別なプレゼントにならないか?」
「なによそれ…普通のプレゼントもしっかり強請らせてもらいますからね!」
「好きにするといいさーー何でも聞いてやるから」
「…その言葉、覚えておきなさいよ?」
ニヤリ、となんだか勝ち誇った顔で見られたが…本気で言ったんだがな。
彼女を俺の側に繋いでおけるなら、何を強請られたって叶えるつもりでいる。
そんな事を考えながら見ていたら。
「ーーちなみに、リュウへの誕生日プレゼントって、アタシで良いのかしら?」
そんな反撃をくらってしまい、今度は俺がそっぽを向く羽目になったのだった。
「…繁殖場育ちが知ってるわけがないだろう」
唐突にマヤがそんな事を聞いてきて、俺は首を傾げた。
急にどうしたんだろう、また突拍子もないことを言い出さないといいのだが。
ーーそれにしても、誕生日ねぇ。
ひょっとしたら、奴隷商人に渡された商品説明書的な何かには書いていたかも知れないが。当たり前だが、俺個人はそんなことは知らされてない。
そうだな、マヤと初めて会ったのが俺が生後半年過ぎのことで、あの時が夏だったから。
「まあ、冬生まれだな。十二月か一月じゃないか?」
「うーん、そっかぁ。あ、アタシはね!今月末が誕生日なの!」
「そうだったな。ーープレゼントの希望があるなら普通に言えばいい」
わざわざ俺の誕生日がどうのとかいう話から始めるなんて、まどろっこしくてマヤらしくない。
「違うわよ!そうじゃなくて……“真ん中バースデー”って言うのやってみたかったの」
「……何だソレ」
また訳のわからんことを言い出したな。
「ふっふっふー、真ん中バースデーってのはね!恋人や夫婦の二人の誕生日のちょうど真ん中の日のことよ!」
「そうか。…それで?」
「それで、じゃないわよ!だーかーらー、アタシとリュウの真ん中バースデーを調べて、お祝いしたかったのよ!」
全く鈍いわね!と怒られたが…いや、そもそも何でそんなもの祝いたかったんだ?
マヤの誕生日を祝うのは分かるがーー。
「二人だけの記念日、っていうのが特別感あって良いのよ~。それに、アタシもリュウにあげるプレゼントで悩んでみたいもの」
「…そんなもんか?」
「そんなものなの!」
断言されたがーー知らないものは知らないからな。これはどうしたものか。
「…じゃあ、マヤの誕生日がオレの誕生日ってことにすればいい」
「へ?いやさっき貴方冬生まれって言ったとこじゃない。アタシは春生まれよ?」
「どうせ正確な日なんか分からないんだ。自分で決めたっていいだろう」
数ヶ月なんて誤差だろうと言うと、そんなワケないでしょと呆れられた。
「もうっ、真剣に考えてよぉ~!」
「考えて俺の誕生日が判明するわけじゃないだろう?…それに、ちゃんと真剣に考えた結果だからな」
「…?どういうこと?」
きょとんと目を瞬かせたマヤの目蓋に、キスを落として答える。
「マヤは特別感ってやつが欲しいんだろうーー共にいる二人の誕生日が同じだというのは、特別には感じないのか?」
「えーーえっ?」
「俺と誕生日が被るのは、特別に思わない?」
「そ、それはーー」
特別、かも?としどろもどろになって言うマヤを抱きしめる。
「ま、別に俺はいつでも良いんだけどな」
「ちょっと!さっき言ってたことと違うわ!」
腕の中でむくれたマヤを見て笑う。
「いつでもいいよ。ーー俺の誕生日の日付はマヤにやるから、マヤが俺の誕生日を決めて?」
マヤが決めてくれた日ならいつでもいいと笑うと、そっぽを向かれてしまった。
けれど、その目元はほんのり赤くて。
「誕生日の日付を贈るって、特別なプレゼントにならないか?」
「なによそれ…普通のプレゼントもしっかり強請らせてもらいますからね!」
「好きにするといいさーー何でも聞いてやるから」
「…その言葉、覚えておきなさいよ?」
ニヤリ、となんだか勝ち誇った顔で見られたが…本気で言ったんだがな。
彼女を俺の側に繋いでおけるなら、何を強請られたって叶えるつもりでいる。
そんな事を考えながら見ていたら。
「ーーちなみに、リュウへの誕生日プレゼントって、アタシで良いのかしら?」
そんな反撃をくらってしまい、今度は俺がそっぽを向く羽目になったのだった。
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