【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

文字の大きさ
12 / 174
1章

7。夢でもお腹は空くそうです

しおりを挟む
「うっ……んんー…」

薄暗い部屋のベッドの上で目を覚ます。
えっと、ここどこだっけ?


とりあえず体を起こして、周りを見渡してみる。

コンクリート?それとも漆喰かな?打ちっぱなしの壁に、サイドテーブルやチェスト、書き物机に椅子といった簡素な家具。
シンプルな薄いカーテンが掛かった窓と、カーテンの隙間からはうっすら明かりが差し込んでいる。
外はもうすっかり暗くなっていた。

自分の部屋ではないし……確か姉の仕事場である研究室の旅行にくっついてきてたハズだから、コテージの部屋?
いや、あのコテージは薪ストーブもついているようなウッド調の内装だった。
泊まっていた部屋もそんな感じだったし、こことは明かに違う。


だとしたら、ほんとにココどこ?

ボンヤリした頭で考えるが、全然思い出せない。


さっきもあまりスッキリしない目覚めだった。

今も頭はぐわんぐわん回っているような感じだし、身体もギシギシいっている気がする。寝る前に激しい運動でもしたっけ?

なんか夢見も相当酷かったような……


首を捻りながらウンウン唸ってると、ドアがガチャリと開いた。

「お、起きてんじゃん」
「気分はどうですか?」


目の前には、ド派手な猫耳お兄さんズ。



ーーうん、今理解した。コレは夢の中だ。

寝て起きたのにまだ夢の中だった。


「控え目に言って最悪です」

言葉が悪くなってるけど気にしない。だって夢だし。


「まあそうなりますよね……転移すると体にかなり負荷がかかるので、大体皆さん体調崩されるんですよ。走っていければ良かったんですが」
「あの場合仕方ないだろー。もう陽が落ちるとこだったし」

……夢から覚めていなかったという悲しいお知らせに対して最悪の気分という話で、そういう意味で言ったわけではなかったのだけど。


「今、何時ですか?」
「ん?ああ、もうすぐ7時だな」

じゃあ気絶してからまだ1時間ってとこか。コテージを出てから半日以上経っちゃってるけど……

きっと実際にはまだお昼くらいで、湖の近くの樹にもたれてうたた寝でもしているところなハズ。

……迷ってる最中に森の中で寝るなんて、どんだけ無防備なことしてるんだろう。
お願い、現実の自分早く起きて!

必死で目をつぶって、体にギュッと力を入れてみる。

夢の中で「ああこれ夢だ」と気づいた時にこうすると、結構目が覚めたりするのだがーー今回はうまくいかなかった。

しかも力を入れた拍子に、お腹から、ぐぅ、と情けない音がして赤面する。
夢なのに空腹を感じるなんて、そんなリアリティは求めてない。


「宿の食堂で軽く用意してもらったんですよ。食べられます?」
いつから持っていたのか、青猫お兄さんがスッとお盆を差し出してくる。

水差しとコップ、それに菓子鉢のような可愛い木のお椀に入った、お粥のようなもの。
暗いからあまり良く見えないな….と眼を細めていたら、赤い方のお兄さんが手に下げていたランプを近付けてくれた。

「レモン水に、トマトリゾットです。食べやすいですよ」
「とりあえず水飲めよ!声だいぶ掠れてるし」

水を注いだコップを渡してくれる。見た目に反して面倒見が良いのかもしれない。

「あ、ありがとう……」

コクリ、と一口飲んでみる。そこまで冷たくないが、爽やかな酸味がおいしい。
それに、たった今自覚したけど、ものすごく喉が渇いていたらしい。あっという間に飲み干してしまった。


そういえば森に入る時、全力疾走しちゃったし。その後も水分補給せずにうろついてたものね。

ーーはっ。寝ている間に脱水症状とか起こさないかしら?早く起きないと大変なことになるのでは?!

嫌な想像に手元のコップをぎゅっと握り締めると、足りないと思われたのか勝手に水が追加された。
なんだか本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。

言動と見た目は色々とヤバいけども、行動はとっても親切よね。

コクコクと二杯目も飲み干して一息つくと、「リゾットはどうしますか?」と聞かれた。

「食べたいです」

素直に言ったら、二人揃って笑われた。
腹が立つのにイケメン達の笑顔は尊くて、それがまた悔しい。

「ゆっくり食べてくださいね」


渡されたリゾットはやや薄味で、少し冷めていて。
それでも半日ぶりの食事は本当にとても美味しくて、お腹と一緒に心まで落ち着くようだった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...