36 / 174
1章
31。メニュー変更は不可でした
しおりを挟む
「まあ、なんだ。契約書類のチェックで少し時間も掛かるから、お嬢さんも上で休んでいきな」
おじ様が私の代わりに椅子に座りながら、そう勧めてくれた。
「そうだわぁ~!ソフィアさん、ウチで夕ご飯食べていってね!もう五時前だし、今からご飯に行くのも大変でしょう?」
なんなら泊まっていって頂戴!もっと色々お喋りしたいわぁ~♪と期待に満ちた目で見つめられた。
とてもありがたいお話だけど、良いのかしら?と逡巡する。
上の二匹にも相談した方がいい気がするけど、返事が遅くなっちゃうのも申し訳ないわね。
ええと、もし断った場合は……ご飯は外で適当な店に入るとして、宿はどうしたらいいだろう。
お家はもう借りられそうだし、すぐにでも使える感じだったから、寝るだけなら戻れば良いのだけどーー戻るって、まさかまた転移で?
今が五時前ってことは、書類のチェックを待ってる間に夕方になってしまう。
歩いていく時間、はないわよね……。
正直、もう転移は勘弁してほしい。日に三回とか、真剣に無理。
「あの。お言葉に甘えて、晩ご飯ご馳走になってもいいですか?あとお泊りも……実は、今日はこれ以上転移できる気がしなくて……!」
どうかお願いします、と深々と頭を下げた。
マヤさんはそれだけで何か察したのか、ころころと笑いながら、もちろんよ!と頷いてくれた。
「お誘い受けてもらえてとっても嬉しいっ!腕によりをかけて作るわね!これでも多少はできるのよぅ?」
楽しみにしててね、と本日二度目のウインクを頂いた。
マヤさん、料理もできるなんて素敵すぎる……!
尊敬の眼差しで見つめていると、横で作業をしていたおじ様が顔を上げた。
「マヤが作ってくれるのは久しぶりだな。何にするんだ?」
「ふっふ~ん、隣国の支店に行ったついでに、市場で色々珍しい食材を仕入れたのっ!」
今晩はそれを使ってピザパーティーよっ!と拳を突き上げるマヤさん。
ーー支店があるんだ……マヤさん凄すぎて何でもありだわ。
「おい……それ大丈夫なやつだろうな?」
「大丈夫に決まっているわ!ピザならお肉もお魚もお野菜もなんだっていけるし、なんならデザートピザって手もあるのよ!」
ピザは万能なんだから!とマヤさんは力説する。
うん、きっとマヤさんの好物はピザなのね。覚えておこう。
メニュー変更は受け付けないわよ!とビシィッと指を突きつけられたおじ様は、やれやれと言った感じで首を振った後、書類をトントンと揃えて引き出しに仕舞い、鍵を掛けた。
「この人数分の生地を捏ねるのは大変だろうが……手伝ってやる」
「あら、書類はいいの?」
「生地だけ作ったらそっちもやる。発酵の時間で充分終わらせられるから、気にしなくていい」
ほら、作るんだろう?と言って、さっさと扉を開いて奥の部屋に入っていくリュウおじ様。
呆気に取られてマヤさんの方を見ると、目を大きく開いて喫驚した後ーーへらり、と笑った。
ーーーー!
うっわ……うわぁ~。
なに、何なの。二人とも、可愛すぎるわ!!
なんかもう、甘酸っぱいって言うか!見てるこっちがきゅんきゅんしてしまう。
自分よりもはるかに年上の夫婦に、そんな事を思ってこっそり悶えてしまった。
おじ様が私の代わりに椅子に座りながら、そう勧めてくれた。
「そうだわぁ~!ソフィアさん、ウチで夕ご飯食べていってね!もう五時前だし、今からご飯に行くのも大変でしょう?」
なんなら泊まっていって頂戴!もっと色々お喋りしたいわぁ~♪と期待に満ちた目で見つめられた。
とてもありがたいお話だけど、良いのかしら?と逡巡する。
上の二匹にも相談した方がいい気がするけど、返事が遅くなっちゃうのも申し訳ないわね。
ええと、もし断った場合は……ご飯は外で適当な店に入るとして、宿はどうしたらいいだろう。
お家はもう借りられそうだし、すぐにでも使える感じだったから、寝るだけなら戻れば良いのだけどーー戻るって、まさかまた転移で?
今が五時前ってことは、書類のチェックを待ってる間に夕方になってしまう。
歩いていく時間、はないわよね……。
正直、もう転移は勘弁してほしい。日に三回とか、真剣に無理。
「あの。お言葉に甘えて、晩ご飯ご馳走になってもいいですか?あとお泊りも……実は、今日はこれ以上転移できる気がしなくて……!」
どうかお願いします、と深々と頭を下げた。
マヤさんはそれだけで何か察したのか、ころころと笑いながら、もちろんよ!と頷いてくれた。
「お誘い受けてもらえてとっても嬉しいっ!腕によりをかけて作るわね!これでも多少はできるのよぅ?」
楽しみにしててね、と本日二度目のウインクを頂いた。
マヤさん、料理もできるなんて素敵すぎる……!
尊敬の眼差しで見つめていると、横で作業をしていたおじ様が顔を上げた。
「マヤが作ってくれるのは久しぶりだな。何にするんだ?」
「ふっふ~ん、隣国の支店に行ったついでに、市場で色々珍しい食材を仕入れたのっ!」
今晩はそれを使ってピザパーティーよっ!と拳を突き上げるマヤさん。
ーー支店があるんだ……マヤさん凄すぎて何でもありだわ。
「おい……それ大丈夫なやつだろうな?」
「大丈夫に決まっているわ!ピザならお肉もお魚もお野菜もなんだっていけるし、なんならデザートピザって手もあるのよ!」
ピザは万能なんだから!とマヤさんは力説する。
うん、きっとマヤさんの好物はピザなのね。覚えておこう。
メニュー変更は受け付けないわよ!とビシィッと指を突きつけられたおじ様は、やれやれと言った感じで首を振った後、書類をトントンと揃えて引き出しに仕舞い、鍵を掛けた。
「この人数分の生地を捏ねるのは大変だろうが……手伝ってやる」
「あら、書類はいいの?」
「生地だけ作ったらそっちもやる。発酵の時間で充分終わらせられるから、気にしなくていい」
ほら、作るんだろう?と言って、さっさと扉を開いて奥の部屋に入っていくリュウおじ様。
呆気に取られてマヤさんの方を見ると、目を大きく開いて喫驚した後ーーへらり、と笑った。
ーーーー!
うっわ……うわぁ~。
なに、何なの。二人とも、可愛すぎるわ!!
なんかもう、甘酸っぱいって言うか!見てるこっちがきゅんきゅんしてしまう。
自分よりもはるかに年上の夫婦に、そんな事を思ってこっそり悶えてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる