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2章
閑話1★ 興味深いオモチャ①
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時系列として1章6話-7話の間になります。
*====================*
«マゼンタ視点»
「なーなー、コイツ、本当に迷い子なの?」
「ええ、間違い無いと思いますよ。バッチリ胸から心臓の音がしましたから」
「ふうん……コイツがねえ?」
オレがコイツ、と言ったのはオレの腕の中ですっかり伸びている女の子のことだ。
さっきまで普通に起きていたのだが、街まで送って行こうという話の途中で何故か気絶してしまったのだ。
もっと色々話して遊びたかったのに、と残念な気分になる。
もう一度自分の腕の中を見れば、青い顔で気を失っている女の子はこれと言う特徴もない普通の娘に見えた。
ポニーテールに結ばれた髪は金茶で、中肉中背。顔はまあまあ整ってるがとびきり美人というわけでもなく、普通に街にもいる程度の容姿だった。
服装にしてもフード付きの羽織り物についたギザギザした金属部分だけは見たことのない物だったが、他は特に変わった感じもない。
「……なんかさ、普通じゃね?」
「そりゃそうでしょう。異世界の住人とは言え、人間は人間ですから」
むしろ何を期待してたんですか、と兄弟に呆れられた。
迷い子って、もっと分かりやすく違う生き物なのかと思ってたんだけどなー。つまんねえの。ホント残念。
起きてる間はクルクル表情が変わって面白かったが、寝てるとその辺の人間と変わらない。
「じゃあさ、めっちゃ魔法強いとか、特殊なスキル持ちとかってないかな?」
「迷い子が魔法を使えたとか、スキル持ちだったという例は聞いてませんね」
「マジかー。だったらコイツ、激弱ってこと?森置いてたらすぐ死んじゃわないかそれ?」
「まあよっぽど運が良くなければ、夜の森で獣に襲われてアウト、でしょうね」
置いていくつもりはないのでそうはなりませんけど、という目の前の兄弟はとても機嫌が良さそうだった。
「んー、まあ気ぃ失う前に街に連れて行くって約束したしなー」
確か城の方向の街が良いって言ってたからそっちに…。ああれ、城って言えば……
「迷い子って、見つけたら城に届けなきゃいけないんじゃなかったっけ?」
しかもなるべく早く、って話だったような。
「おや、よく知ってましたね?ええ、迷い子と判明次第、なるべく早く届け出るようにというのが女王からのお達しです」
「げ。やっぱそうかー……じゃあ城行かなきゃダメ?」
女王様かー。オレあのヒト微妙に苦手なんだよなー。
できれば城に行くのは遠慮したいんだけど。
「……届け出ろとは言われてますけど、城に連れて行くようには言われてませんね」
なので、解釈の仕方で色々とやりようはありますよ?とニンマリ笑ってるとこを見ると、コイツ普通に城に行く気ねーよな。
ま、いっか。オレも女王様会いたくないし、任せとこ。
「えーと、じゃあこの後どうすんの?」
「僕は少し必要なモノを取ってこないといけないので、彼女は君が街に運んであげてください」
「連れてくのはいーけど、起きる気配なくない?」
「なら今日泊まるつもりだった宿でもう一部屋借りて、寝かせておけばいいかと。じゃ、あとはお願いしますね?」
「え、ちょい待てってーー」
行っちまった。あっさり置いてきやがったし。
転移すんなら、その前にちょっとくらい説明してけっての。
でもま、城に行かずに済むならそれでいっか。どのみち宿には行く予定だった訳だし。
自分だけなら、森の入り口の魔法陣までちょっと走ってから、広場まで転移すんだけど。
この子抱えて走られるの嫌がってたし、やっぱ直接転移するかな?
疲れるけどしゃーない、と女の子を肩に担ぎ直す。転移中に落ちたらどうなるか分からないから、両腕と頭も使ってガッチリ固定した。
「ーーん?これ……」
頭をくっつけたところから、トクッ…トクッ…トクッ…っと規則正しい音がする。
ーーこれが心臓の音ってヤツ?
興味が沸いて、女の子を肩から下ろして胸の辺りに耳をくっつける。
さっきよりも大きいけど優しい音が鼓膜を揺らしてきた。
……へぇ、これ、気持ちいいかも。
うまく言えないけど……ちゃんと生きてるなーって感じ?
ついでに首筋や髪にも顔を埋めて、スンスン匂いを嗅いでみる。
……前起きてる客相手に同じことをやって、なんでか怒られたけど。
今ならバレないよな?
この子はよく仕事を頼んでくる貴族の女達とは違ってキツい香水のニオイなんかはせず、熟れた果物と花を混ぜたみたいな匂いがした。
なんて言うか、うまそうな匂い。
味見したら怒るかな?
起きなきゃバレないし、ちょっとだけ。
そう思って、そのまま顔や首筋をペロペロ舐めてみる。
「んっ……」
ーーーー!
女の子はくすぐったそうに少し身動ぎしたが、なんとか起きずに済んだ。
……あっぶな……起こすとこだった。
これ、起きたら”勝手に何してんだ”、って怒られるヤツだよな。たぶん。
あー、でも。どんな顔して怒るんだろ?
イジめたら、どんな反応すんのかな。
怒りすぎて顔真っ赤になんのかな、それとも涙目になったりする?
怒られるのは嫌だけど、その表情は見てみたい。
ーーオカシイな、今まで人間にそんなに興味を惹かれたことってなかったんだけど。
ひょっとしたら、迷い子はやっぱり特別な何かがあるのかも知れない。
少なくとも珍しいことは間違いないし。
せっかく拾ったオモチャだから、もう少し色々観察してみたいな。
これからどうやって遊ぼうか、とご機嫌で考えながら、オレは宿まで転移したのだった。
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«マゼンタ視点»
「なーなー、コイツ、本当に迷い子なの?」
「ええ、間違い無いと思いますよ。バッチリ胸から心臓の音がしましたから」
「ふうん……コイツがねえ?」
オレがコイツ、と言ったのはオレの腕の中ですっかり伸びている女の子のことだ。
さっきまで普通に起きていたのだが、街まで送って行こうという話の途中で何故か気絶してしまったのだ。
もっと色々話して遊びたかったのに、と残念な気分になる。
もう一度自分の腕の中を見れば、青い顔で気を失っている女の子はこれと言う特徴もない普通の娘に見えた。
ポニーテールに結ばれた髪は金茶で、中肉中背。顔はまあまあ整ってるがとびきり美人というわけでもなく、普通に街にもいる程度の容姿だった。
服装にしてもフード付きの羽織り物についたギザギザした金属部分だけは見たことのない物だったが、他は特に変わった感じもない。
「……なんかさ、普通じゃね?」
「そりゃそうでしょう。異世界の住人とは言え、人間は人間ですから」
むしろ何を期待してたんですか、と兄弟に呆れられた。
迷い子って、もっと分かりやすく違う生き物なのかと思ってたんだけどなー。つまんねえの。ホント残念。
起きてる間はクルクル表情が変わって面白かったが、寝てるとその辺の人間と変わらない。
「じゃあさ、めっちゃ魔法強いとか、特殊なスキル持ちとかってないかな?」
「迷い子が魔法を使えたとか、スキル持ちだったという例は聞いてませんね」
「マジかー。だったらコイツ、激弱ってこと?森置いてたらすぐ死んじゃわないかそれ?」
「まあよっぽど運が良くなければ、夜の森で獣に襲われてアウト、でしょうね」
置いていくつもりはないのでそうはなりませんけど、という目の前の兄弟はとても機嫌が良さそうだった。
「んー、まあ気ぃ失う前に街に連れて行くって約束したしなー」
確か城の方向の街が良いって言ってたからそっちに…。ああれ、城って言えば……
「迷い子って、見つけたら城に届けなきゃいけないんじゃなかったっけ?」
しかもなるべく早く、って話だったような。
「おや、よく知ってましたね?ええ、迷い子と判明次第、なるべく早く届け出るようにというのが女王からのお達しです」
「げ。やっぱそうかー……じゃあ城行かなきゃダメ?」
女王様かー。オレあのヒト微妙に苦手なんだよなー。
できれば城に行くのは遠慮したいんだけど。
「……届け出ろとは言われてますけど、城に連れて行くようには言われてませんね」
なので、解釈の仕方で色々とやりようはありますよ?とニンマリ笑ってるとこを見ると、コイツ普通に城に行く気ねーよな。
ま、いっか。オレも女王様会いたくないし、任せとこ。
「えーと、じゃあこの後どうすんの?」
「僕は少し必要なモノを取ってこないといけないので、彼女は君が街に運んであげてください」
「連れてくのはいーけど、起きる気配なくない?」
「なら今日泊まるつもりだった宿でもう一部屋借りて、寝かせておけばいいかと。じゃ、あとはお願いしますね?」
「え、ちょい待てってーー」
行っちまった。あっさり置いてきやがったし。
転移すんなら、その前にちょっとくらい説明してけっての。
でもま、城に行かずに済むならそれでいっか。どのみち宿には行く予定だった訳だし。
自分だけなら、森の入り口の魔法陣までちょっと走ってから、広場まで転移すんだけど。
この子抱えて走られるの嫌がってたし、やっぱ直接転移するかな?
疲れるけどしゃーない、と女の子を肩に担ぎ直す。転移中に落ちたらどうなるか分からないから、両腕と頭も使ってガッチリ固定した。
「ーーん?これ……」
頭をくっつけたところから、トクッ…トクッ…トクッ…っと規則正しい音がする。
ーーこれが心臓の音ってヤツ?
興味が沸いて、女の子を肩から下ろして胸の辺りに耳をくっつける。
さっきよりも大きいけど優しい音が鼓膜を揺らしてきた。
……へぇ、これ、気持ちいいかも。
うまく言えないけど……ちゃんと生きてるなーって感じ?
ついでに首筋や髪にも顔を埋めて、スンスン匂いを嗅いでみる。
……前起きてる客相手に同じことをやって、なんでか怒られたけど。
今ならバレないよな?
この子はよく仕事を頼んでくる貴族の女達とは違ってキツい香水のニオイなんかはせず、熟れた果物と花を混ぜたみたいな匂いがした。
なんて言うか、うまそうな匂い。
味見したら怒るかな?
起きなきゃバレないし、ちょっとだけ。
そう思って、そのまま顔や首筋をペロペロ舐めてみる。
「んっ……」
ーーーー!
女の子はくすぐったそうに少し身動ぎしたが、なんとか起きずに済んだ。
……あっぶな……起こすとこだった。
これ、起きたら”勝手に何してんだ”、って怒られるヤツだよな。たぶん。
あー、でも。どんな顔して怒るんだろ?
イジめたら、どんな反応すんのかな。
怒りすぎて顔真っ赤になんのかな、それとも涙目になったりする?
怒られるのは嫌だけど、その表情は見てみたい。
ーーオカシイな、今まで人間にそんなに興味を惹かれたことってなかったんだけど。
ひょっとしたら、迷い子はやっぱり特別な何かがあるのかも知れない。
少なくとも珍しいことは間違いないし。
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