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2章
27。読書に集中できません!
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「……ねえ、シアン」
「何ですかソフィー。ああ、喉が渇いたのなら今メイドを呼んでお茶をーー」
「違います!そっちじゃなくて、コレどう考えても読みづらいでしょう!?」
分かってて話逸らすんじゃないわよ、と頭の上にあったシアンの手首を掴んで、引っぺがした。
何故かクレイでなくシアンが「あのウサギは忙しいそうですよ」と言って、頼んでいた資料を持ってきてくれたのが小一時間前。
それから私は本棚の間の椅子に腰掛けて資料の一冊を読み込んでいたのだが、現在全く集中できないでいる。
ーーなぜなら私の斜め前にシアンが本棚に凭れながら突っ立っていて、片手で私の頭を延々と撫でながら本を読んでいるから。
「?いいえ、全然平気ですよ。むしろ快適に読書を楽しんでいます」
「立ったままで、片手でページを捲りながら読むののどこが快適ですって?」
「快適という言葉が気に入らなければ、有意義と言い換えても良いですよ。大事な飼い主を片手で愛でつつ、貴重な本を目でも愛でているんですから」
そう言って片手で器用に本を閉じながら、頭のてっぺんにキスを落としてくる。
続けて他の場所にもキスしてきそうな気配を感じ取り、慌てて椅子から立って距離を取った。
このセクハラニャンコ、飼い主にまともに読書をさせる気ないわね?
「ーーアンタが快適で有意義な読書の時間を満喫できていても、こっちはできないのよ!」
「おや、大した事はしていないと思いますが」
普通に頭を撫でているだけでしょう?とニンマリ笑われるが、絶対確信犯だ。
「シアンの撫で方は“普通に撫でる”の範疇に収まってないのよ!」
髪の中に指を差し入れて撫でる、ぐらいまでならギリ普通かもしれないが。
襟足から手をさわさわ這わせてきたり、耳の縁を爪先で何度も擦っていくのは完全アウトだ。
「とにかく!これじゃ私が落ち着いて本なんか読めないの!」
邪魔をするならどこかに行って頂戴!と指を突きつけたが、それはできませんねとアッサリ却下された。
「僕はただ本を読んでいるわけじゃなくて、ソフィーがまた倒れないか見張っているんですよ」
前科持ちなんですから諦めてください、と指で“バッテン”を作られた。
何よその無駄に可愛いジェスチャーは。可愛ければ許されるとでもーー
そこでシアンをきっと睨みあげると、耳をプルルっと震わせながら、首を傾げられた。ーーーくぅっ、確信犯め!
「……一旦休憩するわ。メイドさんにお茶をお願いしてくる」
ダメだ、全く集中できない。
一度シアンから距離を取って、頭を冷やさないと。
書庫は飲食禁止だから、どこか空いてる部屋を貸してもらってお茶を飲ませてもらおう。
「それは良い考えですね。ソフィーはまだその本を読みたいでしょうから、僕が手配してきます。準備ができたらお呼びしますから、待っててくださいね」
そう言ってシアンが読んでいた本を棚に戻し、私の肩を持ってもう一度椅子に座らせた。
そのまま出ていくのかと思いきや、背中をかがめて耳元に声を吹き込んでくる。
「今なら、集中してたくさん読めると思いますよ?」
楽しんでおいてくださいねーーとさっきまで爪でなぞっていた耳の縁にキスを落とされた。
「ーーなっ?!」
バッと顔を上げると、にんまりと笑うシアンの顔。
ーーやられた…またやられた!本っ当に油断も隙もないーー!
やっぱり、さっきまでのも今のもワザとじゃないの!
熱をもった耳を掌で押さえつけながらシアンを睨むが、もう書庫の出口の方へと歩いていった後だった。
結局、これじゃ集中して読書なんてできないじゃない。
どうしてくれんのよ…と思いながら扉を開けて出て行くシアンを見送るとーーー
…あら?
今シアンがチラッと書庫の奥の方を見て笑った気がしたけどーー気のせい、かしら?
なんかドヤ顔っぽいようなそうじゃないような…けど笑うようなこともこれといってなかったし、気のせいよね。
私は頭を振って、なんとかもう一度集中しよう、と本を開いたのだった。
「何ですかソフィー。ああ、喉が渇いたのなら今メイドを呼んでお茶をーー」
「違います!そっちじゃなくて、コレどう考えても読みづらいでしょう!?」
分かってて話逸らすんじゃないわよ、と頭の上にあったシアンの手首を掴んで、引っぺがした。
何故かクレイでなくシアンが「あのウサギは忙しいそうですよ」と言って、頼んでいた資料を持ってきてくれたのが小一時間前。
それから私は本棚の間の椅子に腰掛けて資料の一冊を読み込んでいたのだが、現在全く集中できないでいる。
ーーなぜなら私の斜め前にシアンが本棚に凭れながら突っ立っていて、片手で私の頭を延々と撫でながら本を読んでいるから。
「?いいえ、全然平気ですよ。むしろ快適に読書を楽しんでいます」
「立ったままで、片手でページを捲りながら読むののどこが快適ですって?」
「快適という言葉が気に入らなければ、有意義と言い換えても良いですよ。大事な飼い主を片手で愛でつつ、貴重な本を目でも愛でているんですから」
そう言って片手で器用に本を閉じながら、頭のてっぺんにキスを落としてくる。
続けて他の場所にもキスしてきそうな気配を感じ取り、慌てて椅子から立って距離を取った。
このセクハラニャンコ、飼い主にまともに読書をさせる気ないわね?
「ーーアンタが快適で有意義な読書の時間を満喫できていても、こっちはできないのよ!」
「おや、大した事はしていないと思いますが」
普通に頭を撫でているだけでしょう?とニンマリ笑われるが、絶対確信犯だ。
「シアンの撫で方は“普通に撫でる”の範疇に収まってないのよ!」
髪の中に指を差し入れて撫でる、ぐらいまでならギリ普通かもしれないが。
襟足から手をさわさわ這わせてきたり、耳の縁を爪先で何度も擦っていくのは完全アウトだ。
「とにかく!これじゃ私が落ち着いて本なんか読めないの!」
邪魔をするならどこかに行って頂戴!と指を突きつけたが、それはできませんねとアッサリ却下された。
「僕はただ本を読んでいるわけじゃなくて、ソフィーがまた倒れないか見張っているんですよ」
前科持ちなんですから諦めてください、と指で“バッテン”を作られた。
何よその無駄に可愛いジェスチャーは。可愛ければ許されるとでもーー
そこでシアンをきっと睨みあげると、耳をプルルっと震わせながら、首を傾げられた。ーーーくぅっ、確信犯め!
「……一旦休憩するわ。メイドさんにお茶をお願いしてくる」
ダメだ、全く集中できない。
一度シアンから距離を取って、頭を冷やさないと。
書庫は飲食禁止だから、どこか空いてる部屋を貸してもらってお茶を飲ませてもらおう。
「それは良い考えですね。ソフィーはまだその本を読みたいでしょうから、僕が手配してきます。準備ができたらお呼びしますから、待っててくださいね」
そう言ってシアンが読んでいた本を棚に戻し、私の肩を持ってもう一度椅子に座らせた。
そのまま出ていくのかと思いきや、背中をかがめて耳元に声を吹き込んでくる。
「今なら、集中してたくさん読めると思いますよ?」
楽しんでおいてくださいねーーとさっきまで爪でなぞっていた耳の縁にキスを落とされた。
「ーーなっ?!」
バッと顔を上げると、にんまりと笑うシアンの顔。
ーーやられた…またやられた!本っ当に油断も隙もないーー!
やっぱり、さっきまでのも今のもワザとじゃないの!
熱をもった耳を掌で押さえつけながらシアンを睨むが、もう書庫の出口の方へと歩いていった後だった。
結局、これじゃ集中して読書なんてできないじゃない。
どうしてくれんのよ…と思いながら扉を開けて出て行くシアンを見送るとーーー
…あら?
今シアンがチラッと書庫の奥の方を見て笑った気がしたけどーー気のせい、かしら?
なんかドヤ顔っぽいようなそうじゃないような…けど笑うようなこともこれといってなかったし、気のせいよね。
私は頭を振って、なんとかもう一度集中しよう、と本を開いたのだった。
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