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2章
26★ 猫と兎の仲は最悪です
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「猫の執着とか見るに耐えないね」
ソフィアの座った椅子からは十分離れた書庫の奥で、シアンにそんな声が掛けられる。
「ーーー仕事をしに行ったのではなかったのですか」
「もう終わってるから」
近くの椅子の上には何冊かの本と、ファイルが積まれている。
まるで最初からそこに準備してあったかのようなそれに、シアンはすっと目を細めた。
「…手際のよろしいことで。ただ、手渡すまでが司書の仕事では?」
ここに置いてあっても意味がないでしょう、と指摘してやれば、ワザとらしく鼻を鳴らされた。
「前回読んでいた本を片付けていなかっただけ。どうせ、また読みにくるとは思ったし。それに、アレはそれ以外の本も読みにきてるから」
だからちょっとぐらい遅くなっても、嬉々として適当にその辺の本を読んでいるはずだと逆に指摘され、シアンは小さく舌打ちする。
「随分と知った風な口を叩くのですね?彼女とは大した交流もないはずですが」
「なら、お前はどんだけ知ってるっていうの?」
聞き返された内容にしばし沈黙してから、シアンはフッと息を漏らした。
「…それをアンタに言う必要はないでしょう。それより、彼女に必要以上に近づかないでくれますか?」
「周りとの交流を制限する気なの?束縛しすぎると嫌われるよ」
ーー自分の方が束縛を嫌う猫のくせに、そんな事も分かんないなんて頭悪いの?
パシュンッーー
その言葉を言い終えるかどうかのタイミングで小さく乾いた音が鳴り、壁に一つ穴が開いた。
「ーーっ!?……あっぶな」
ギリギリで掠めていった弾丸のめり込んだ壁を見て、クレイが眉をひそめた。
「ーー何してくれてんのさ。ケガするところだったじゃない」
「元々当てるつもりはありませんよ。ここでアンタに怪我をさせたら、後でソフィーに問い詰められますからね」
紫煙を吹き消しながら「彼女は優しいですから」と微笑むシアンに、いやそれ問い詰める方が普通だから、と苦々しく呟くクレイ。
「それより、何ソレ。いつも持ち歩いてるわけ?」
サイレンサー付きの小型銃なんて、届け物屋って暗殺業もやってんの?確かに、転移と暗殺って相性良さそうだよね?とクレイは目の前の猫を呆れた顔で睨みつけた。
「いいえ?仕事としては請けていませんよ。そうですね、護身用と思って頂ければ」
「……どうだかね。どのみち、壁の修理代は請求させてもらうよ」
「ご自由にどうぞ。それなりには稼いでますので」
「嫌な奴…本に当たっていなくて良かったね?」
この辺の本は値段がつけられないから、高給取りの猫でもキツいんじゃない?と言えば、ご忠告どうも、と面白くなさそうな顔で返された。
「本当に、ソフィーの知り合いになってなければさっさと〆てあげたんですが」
「殺しは犯罪だけど?」
「おや、そんなこと気にするとでも?」
「気にすると言うか、最低限法律は守ろうと思わないわけ?」
「人間の定めた法律なんて、ヒトにばかり都合がいいものですからね」
国によっては、野良犬・野良猫は捕まった時点で殺処分だそうですから、とシアンは冷笑する。
「あっそ、猫も大変だね」
「まるで自分は関係ないと言いたげですね」
「ウサギは愛玩動物だからね」
ペットとして愛されてんの、舌を出してみせるクレイ。
「ーー粘土、なんて呼ばれているのに、雇い主に尻尾を振って媚びられるとは。おめでたい頭ですね。あ、振れる尻尾もありませんでしたか」
「…うっさいな。呼び名なんて関係ないでしょ。近づいて欲しくないって言うなら、その本お前が持っていきなよ。早く大好きな飼い主の所に戻れば?」
そう言って、クレイは椅子の上の本を指し示す。
「言われなくても戻りますよーーああ、そうだ。僕からも探して欲しい資料があるんですよ」
「…何。さっさと言って」
「では、迷い子が戻らなかった例の資料を」
「ーーは?常識ないの?…迷い子なんて、来て一週間もしないうちに戻るのがほとんどだよ。長ければ数ヶ月居たって記録はあったけど」
戻らなかったなんて例は聞いたことがない、と訝しげに首を捻る。
「アンタが把握していないだけという可能性は?」
「バカにしてんの?この城の蔵書なら、何があるかくらい全部分かってる」
「そうーーですか。記録には残っていない、と」
なら誰かに秘匿されている、という事ですかね、とシアンは胸の内でゴチる。
「結局何の話なワケ?」
「貴方には関係ないでしょう?それでは、これで失礼します」
そう言って資料を抱えたシアンが背を向けるのに、胡散臭げな視線を送ったあと、クレイは書庫のさらに奥に戻っていった。
ソフィアの座った椅子からは十分離れた書庫の奥で、シアンにそんな声が掛けられる。
「ーーー仕事をしに行ったのではなかったのですか」
「もう終わってるから」
近くの椅子の上には何冊かの本と、ファイルが積まれている。
まるで最初からそこに準備してあったかのようなそれに、シアンはすっと目を細めた。
「…手際のよろしいことで。ただ、手渡すまでが司書の仕事では?」
ここに置いてあっても意味がないでしょう、と指摘してやれば、ワザとらしく鼻を鳴らされた。
「前回読んでいた本を片付けていなかっただけ。どうせ、また読みにくるとは思ったし。それに、アレはそれ以外の本も読みにきてるから」
だからちょっとぐらい遅くなっても、嬉々として適当にその辺の本を読んでいるはずだと逆に指摘され、シアンは小さく舌打ちする。
「随分と知った風な口を叩くのですね?彼女とは大した交流もないはずですが」
「なら、お前はどんだけ知ってるっていうの?」
聞き返された内容にしばし沈黙してから、シアンはフッと息を漏らした。
「…それをアンタに言う必要はないでしょう。それより、彼女に必要以上に近づかないでくれますか?」
「周りとの交流を制限する気なの?束縛しすぎると嫌われるよ」
ーー自分の方が束縛を嫌う猫のくせに、そんな事も分かんないなんて頭悪いの?
パシュンッーー
その言葉を言い終えるかどうかのタイミングで小さく乾いた音が鳴り、壁に一つ穴が開いた。
「ーーっ!?……あっぶな」
ギリギリで掠めていった弾丸のめり込んだ壁を見て、クレイが眉をひそめた。
「ーー何してくれてんのさ。ケガするところだったじゃない」
「元々当てるつもりはありませんよ。ここでアンタに怪我をさせたら、後でソフィーに問い詰められますからね」
紫煙を吹き消しながら「彼女は優しいですから」と微笑むシアンに、いやそれ問い詰める方が普通だから、と苦々しく呟くクレイ。
「それより、何ソレ。いつも持ち歩いてるわけ?」
サイレンサー付きの小型銃なんて、届け物屋って暗殺業もやってんの?確かに、転移と暗殺って相性良さそうだよね?とクレイは目の前の猫を呆れた顔で睨みつけた。
「いいえ?仕事としては請けていませんよ。そうですね、護身用と思って頂ければ」
「……どうだかね。どのみち、壁の修理代は請求させてもらうよ」
「ご自由にどうぞ。それなりには稼いでますので」
「嫌な奴…本に当たっていなくて良かったね?」
この辺の本は値段がつけられないから、高給取りの猫でもキツいんじゃない?と言えば、ご忠告どうも、と面白くなさそうな顔で返された。
「本当に、ソフィーの知り合いになってなければさっさと〆てあげたんですが」
「殺しは犯罪だけど?」
「おや、そんなこと気にするとでも?」
「気にすると言うか、最低限法律は守ろうと思わないわけ?」
「人間の定めた法律なんて、ヒトにばかり都合がいいものですからね」
国によっては、野良犬・野良猫は捕まった時点で殺処分だそうですから、とシアンは冷笑する。
「あっそ、猫も大変だね」
「まるで自分は関係ないと言いたげですね」
「ウサギは愛玩動物だからね」
ペットとして愛されてんの、舌を出してみせるクレイ。
「ーー粘土、なんて呼ばれているのに、雇い主に尻尾を振って媚びられるとは。おめでたい頭ですね。あ、振れる尻尾もありませんでしたか」
「…うっさいな。呼び名なんて関係ないでしょ。近づいて欲しくないって言うなら、その本お前が持っていきなよ。早く大好きな飼い主の所に戻れば?」
そう言って、クレイは椅子の上の本を指し示す。
「言われなくても戻りますよーーああ、そうだ。僕からも探して欲しい資料があるんですよ」
「…何。さっさと言って」
「では、迷い子が戻らなかった例の資料を」
「ーーは?常識ないの?…迷い子なんて、来て一週間もしないうちに戻るのがほとんどだよ。長ければ数ヶ月居たって記録はあったけど」
戻らなかったなんて例は聞いたことがない、と訝しげに首を捻る。
「アンタが把握していないだけという可能性は?」
「バカにしてんの?この城の蔵書なら、何があるかくらい全部分かってる」
「そうーーですか。記録には残っていない、と」
なら誰かに秘匿されている、という事ですかね、とシアンは胸の内でゴチる。
「結局何の話なワケ?」
「貴方には関係ないでしょう?それでは、これで失礼します」
そう言って資料を抱えたシアンが背を向けるのに、胡散臭げな視線を送ったあと、クレイは書庫のさらに奥に戻っていった。
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