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2章
25。保護観察つきになりました
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「なにお前、また来てるの?」
「あ、はは…その、お邪魔してます」
前回の訪問から二日開けて。
私はまたお城にーーというか書庫に来ていた。
本当なら次の日にでも来たかったけど、引っ越したばかりで家をなんとかするのが先、と言われればあまりの正論にぐうの音も出ず。
昨日、一昨日は足りない日用品の買い足しやら食材の買い出しなんかで時間を使ってしまい、城に出掛けるほどの時間は残っていなかった。
ーーそれでも二日で生活基盤が整えられたのは、ひとえにエリザにもらったペンダントのお陰でしかない。
街まで何往復してもあれだけ悩まされていた転移酔いにならないというのは、奇跡としか言いようがなかった。
しかもペンダントはあくまで二人を貸し出した私へのお礼だったらしく、シアンとマゼンタは最初の仕事に掛かる前にちゃっかり交渉して、別のお礼をエリザからもらっていた。
それがなんと、家の敷地内に設置された転移魔法陣だとは思わなかったけど。
一昨日は起きてリビングのカーテンを開けたら、ウッドデッキの向こうの庭が綺麗に整地されて公園の広場のよりも二回りほど小さい魔法陣が設置されているのを見て、朝から驚愕させられた。
呼び出しメモ事件に続いて、エリザの仕事が早すぎて軽く怖いくらいなのだけどーーこの国の未来は安泰ってことだから、深くは突っ込むまい。
というわけで、今日は書庫に行くのとあわせてそれらのお礼も言いたかったのだが、エリザは執務が溜まっているようで、直接会うことはできなかった。
本人はクロエさんからお茶会の時間をもらえなかった、と嘆いていたらしい。
女王様の仕事の邪魔はできないので、とりあえずお礼に用意しておいたプレゼントを側付きのメイドさんに渡しておく。
好みが分からなかったから、街で人気という焼き菓子店のお菓子詰め合わせなんだけど…少なくともお茶菓子にはできるから、無駄にはならないわよね?
エリザにはまた改めてお礼を言いに行こう。
仕方なくそのままの足で書庫に来たのだが、前回同様心底嫌そうな顔をしたクレイに迎えられた。
「ほんと邪魔。本借りたらさっさと出てって」
「ーー今日は僕も居るので、この前のようにはなりませんよ」
前回と違うのは、私の後ろにいつも以上に冷えた目をしたシアンがついてきていること。
“また読みに行きたい”とお願いしていたら、本当に連れてきてくれたうえ、「僕も今日は一緒にいますよ」とわざわざ時間を空けてくれたのだ。
ちなみにマゼンタは昼まではお仕事らしく、午後から城に来てくれてこちらと合流、という話になっている。
ガッツリ監視付き、といった感じだけど、まあこれは仕方がない。
こうやって連れてきてもらえるだけ良しとしよう。
「大丈夫よクレイ、今日は借りたら何処か別の部屋に行くわ」
さすがに申し訳ないので、今日はワガママを言わずにクレイの邪魔にならない場所で読んでいよう。
そう思って言ったのだが、何故かシアンに止められてしまった。
「ソフィー、貴女が読みたい場所で読めばいいんですよ。今日は僕が付き合うんですから」
「えっと、でも迷惑そうだから別の場所でーー」
「…本に囲まれているのが好き、と言いましたよね?」
そりゃまあ、確かに言ったけどーーあんなにあからさまに嫌がられてるのに、気にせず居座れるほど私の神経は図太くない。
「それに僕も書庫には興味があるので、しばらく色々探してみようかと…なのでソフィーもここで読んでいてくださいね?」
ニッコリ。
…笑顔で何やら圧を掛けられた。
ええと……ここで読めと、そういう事かしら?この前はあんなに書庫に行くのを嫌がっていたのに、なんで?
頭の中にハテナマークばかり浮かぶが、こうなっては書庫で読むしかない。
まあ私も、できるなら書庫にいたかったし。
何よりこのモードのシアンに逆らう度胸は私にはない。
クレイに時折睨まれる方がはるかにマシだわ。
「分かったわ。じゃあ、私はそこで読んでいるわね」
前回座っていたのと同じ、本棚の間に置かれた背もたれのないスツールを指差す。
ひょっとしたらこれは座るための椅子というより、高い位置の本を取るための踏み台なのかもしれない。移動式の梯子を持ってくるのも大変だものね。
でもま、椅子には違いないのだから、座ってもいいわよね?
「僕も本を探したら戻りますよ。大人しく待っていてくださいね」
そう言ってシアンが指差した椅子までエスコートしてくれ、そのまま座らされた。
「それで…そこの貴方、司書なんですよね。ちゃんと彼女に欲しい本を探してあげてくださいね?」
後ろを振り返り、冷たい笑顔でシアンがクレイにも威圧を掛けている。
というか、名前知ってるのに呼ばないとかどんだけ目の敵にしてるのよ。
そんなシアンの隠す気もない敵対視を受けて、クレイはヤレヤレと言った感じで肩を竦めた。
「言われなくてもやるよ。仕事だからね」
で、今日は?と聞かれてこの前の続きが読みたいとリクエストする。
クレイは無言でひとつ頷くと、本棚の奥に消えていった。
「資料がくるまではどうされますか?」
「適当にこの辺の本を読んで待ってるから、大丈夫よ」
「分かりました。じゃあ僕も本を探してきます」
待っててくださいねと言い残し、シアンも本棚の間を歩いていく。
ーーやっぱり、シアンも本を読むのね。どんなジャンルを読むのかしら。
戻ってきたら見せてもらおうかなと思いつつ、近くの本棚を物色することにした。
「あ、はは…その、お邪魔してます」
前回の訪問から二日開けて。
私はまたお城にーーというか書庫に来ていた。
本当なら次の日にでも来たかったけど、引っ越したばかりで家をなんとかするのが先、と言われればあまりの正論にぐうの音も出ず。
昨日、一昨日は足りない日用品の買い足しやら食材の買い出しなんかで時間を使ってしまい、城に出掛けるほどの時間は残っていなかった。
ーーそれでも二日で生活基盤が整えられたのは、ひとえにエリザにもらったペンダントのお陰でしかない。
街まで何往復してもあれだけ悩まされていた転移酔いにならないというのは、奇跡としか言いようがなかった。
しかもペンダントはあくまで二人を貸し出した私へのお礼だったらしく、シアンとマゼンタは最初の仕事に掛かる前にちゃっかり交渉して、別のお礼をエリザからもらっていた。
それがなんと、家の敷地内に設置された転移魔法陣だとは思わなかったけど。
一昨日は起きてリビングのカーテンを開けたら、ウッドデッキの向こうの庭が綺麗に整地されて公園の広場のよりも二回りほど小さい魔法陣が設置されているのを見て、朝から驚愕させられた。
呼び出しメモ事件に続いて、エリザの仕事が早すぎて軽く怖いくらいなのだけどーーこの国の未来は安泰ってことだから、深くは突っ込むまい。
というわけで、今日は書庫に行くのとあわせてそれらのお礼も言いたかったのだが、エリザは執務が溜まっているようで、直接会うことはできなかった。
本人はクロエさんからお茶会の時間をもらえなかった、と嘆いていたらしい。
女王様の仕事の邪魔はできないので、とりあえずお礼に用意しておいたプレゼントを側付きのメイドさんに渡しておく。
好みが分からなかったから、街で人気という焼き菓子店のお菓子詰め合わせなんだけど…少なくともお茶菓子にはできるから、無駄にはならないわよね?
エリザにはまた改めてお礼を言いに行こう。
仕方なくそのままの足で書庫に来たのだが、前回同様心底嫌そうな顔をしたクレイに迎えられた。
「ほんと邪魔。本借りたらさっさと出てって」
「ーー今日は僕も居るので、この前のようにはなりませんよ」
前回と違うのは、私の後ろにいつも以上に冷えた目をしたシアンがついてきていること。
“また読みに行きたい”とお願いしていたら、本当に連れてきてくれたうえ、「僕も今日は一緒にいますよ」とわざわざ時間を空けてくれたのだ。
ちなみにマゼンタは昼まではお仕事らしく、午後から城に来てくれてこちらと合流、という話になっている。
ガッツリ監視付き、といった感じだけど、まあこれは仕方がない。
こうやって連れてきてもらえるだけ良しとしよう。
「大丈夫よクレイ、今日は借りたら何処か別の部屋に行くわ」
さすがに申し訳ないので、今日はワガママを言わずにクレイの邪魔にならない場所で読んでいよう。
そう思って言ったのだが、何故かシアンに止められてしまった。
「ソフィー、貴女が読みたい場所で読めばいいんですよ。今日は僕が付き合うんですから」
「えっと、でも迷惑そうだから別の場所でーー」
「…本に囲まれているのが好き、と言いましたよね?」
そりゃまあ、確かに言ったけどーーあんなにあからさまに嫌がられてるのに、気にせず居座れるほど私の神経は図太くない。
「それに僕も書庫には興味があるので、しばらく色々探してみようかと…なのでソフィーもここで読んでいてくださいね?」
ニッコリ。
…笑顔で何やら圧を掛けられた。
ええと……ここで読めと、そういう事かしら?この前はあんなに書庫に行くのを嫌がっていたのに、なんで?
頭の中にハテナマークばかり浮かぶが、こうなっては書庫で読むしかない。
まあ私も、できるなら書庫にいたかったし。
何よりこのモードのシアンに逆らう度胸は私にはない。
クレイに時折睨まれる方がはるかにマシだわ。
「分かったわ。じゃあ、私はそこで読んでいるわね」
前回座っていたのと同じ、本棚の間に置かれた背もたれのないスツールを指差す。
ひょっとしたらこれは座るための椅子というより、高い位置の本を取るための踏み台なのかもしれない。移動式の梯子を持ってくるのも大変だものね。
でもま、椅子には違いないのだから、座ってもいいわよね?
「僕も本を探したら戻りますよ。大人しく待っていてくださいね」
そう言ってシアンが指差した椅子までエスコートしてくれ、そのまま座らされた。
「それで…そこの貴方、司書なんですよね。ちゃんと彼女に欲しい本を探してあげてくださいね?」
後ろを振り返り、冷たい笑顔でシアンがクレイにも威圧を掛けている。
というか、名前知ってるのに呼ばないとかどんだけ目の敵にしてるのよ。
そんなシアンの隠す気もない敵対視を受けて、クレイはヤレヤレと言った感じで肩を竦めた。
「言われなくてもやるよ。仕事だからね」
で、今日は?と聞かれてこの前の続きが読みたいとリクエストする。
クレイは無言でひとつ頷くと、本棚の奥に消えていった。
「資料がくるまではどうされますか?」
「適当にこの辺の本を読んで待ってるから、大丈夫よ」
「分かりました。じゃあ僕も本を探してきます」
待っててくださいねと言い残し、シアンも本棚の間を歩いていく。
ーーやっぱり、シアンも本を読むのね。どんなジャンルを読むのかしら。
戻ってきたら見せてもらおうかなと思いつつ、近くの本棚を物色することにした。
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