88 / 174
3章
1。二度あることは三度ある
しおりを挟む
「じゃ、彼女の事は頼みますね。ーーすぐ戻ります」
ここ数日で耳に馴染んだ声と、目蓋の裏が白く明るく染まっていく感覚に目が覚めた。
微睡の中でゆっくり意識が覚醒していくーーなんて寝覚めのいいことはなく。
頭の割れそうな頭痛と倦怠感に呻きながら目蓋を開けようとするが、固く張り付いたかのように持ち上げられなかった。
うわ、何これ。……体調最悪なような……?
熱っぽいって事はないから、風邪ではないだろうけどーーああでも喉は痛いかも。
今すぐ目を開けるのは諦めて、少しずつ腕や脚を伸ばしていく。と、指先がふかっと柔らかく温かな感触に埋まった。
んっ? これは……ひょっとして、マゼンタの頭かな?
全く、寝ている女性の部屋に忍び込むなとあれほど言ったのに。あろうことか人のベッドに忍び込むなんて。
また注意しないといけないかしら。
そんなことを考えつつも、魅惑の手触りに負けてサワサワと手を動かしてしまう。
はあ、やらかい……ふわふわで最高だ。
……けど、あれ?
なんか、マゼンタしては小さい?
毛の柔らかさはそっくりだけど、一本一本の長さも全然足りてない。
このサイズ感、この手触り。
ーー本物の、ネコ?
……え、ホントに?
「ーーマーティ?」
そっと抱き寄せると、モゾモゾと動いた後で添えた手にスリッと頭らしきものを擦りつけられた。
ーーさっきまでの夢は覚めたと思ったのにな。まだ覚めてなかったのか。
ま、いいか……これ、すごく気持ち良いし……
そのまま猫のお腹らしいところに顔を埋め、もう一度ゆっくり眠りに落ちた。
◇
ようやくしっかりと目を開けると、またもや見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。
これは、アレね。二度あることは三度あるという。
今度は何処に連れてこられたのだろう?
体を半分起こして、周りをゆっくり見回してみる。
清潔感のあるこじんまりとした部屋。家具はほとんどなく、壁もシーツも綺麗に真っ白。
なんていうか……イメージで言うなら、病院の個室?
いやいや、まさかね。
それにしても。
さっきまで、何か夢を見ていたはずなのに思い出せない。
何かとても幸せだったような、でも少し悲しかったような。そんな感情は残っているのに。
細かい内容はサッパリだ。
まあ本来夢なんてそんなものよね。
見ている間にどんなに楽しかろうが、覚めたらそれで終わりだ。
それに子供の頃に見た夢で今でもハッキリと覚えているものなんて、殺人鬼に追いかけられるとか高い所から落ちるとか、どれもこれも悪夢ばかりでロクなものじゃない。
覚えてないなら、今回はそこまで酷い悪夢でもなかったんだろう。
そういえばーー今見ているこの世界も夢なんだとしたら。
マゼンタやシアン、エリザやクレイやマヤさんのことも。全部忘れてしまうのだろうか。
誰も彼もがキャラが濃くて面白くてーー何故だか私に親切にしてくれて。
今は忘れようにも忘れられないと感じているのに。
覚めてしまえばどんな夢を見ていたんだっけとボンヤリした頭で思い出そうとして、でも思い出せず。
首を傾げてはしても、まあ別にいいかとそのまま日常の生活に戻っていくのだろうと、そう思うと。
ーーそれはなんだか、とても惜しい気がする。
……今度書庫に行ったら、夢の内容をしっかり覚えておくための方法がないかも調べてみようかしら。
でも、その前に。
とりあえずここが何処かを確かめないとね。
まずは部屋を出てみるかと、ベッドの端に移動しながらシーツをずらしたところで。
ベッドの中から、もふもふの丸まった毛玉が出てきた。
ここ数日で耳に馴染んだ声と、目蓋の裏が白く明るく染まっていく感覚に目が覚めた。
微睡の中でゆっくり意識が覚醒していくーーなんて寝覚めのいいことはなく。
頭の割れそうな頭痛と倦怠感に呻きながら目蓋を開けようとするが、固く張り付いたかのように持ち上げられなかった。
うわ、何これ。……体調最悪なような……?
熱っぽいって事はないから、風邪ではないだろうけどーーああでも喉は痛いかも。
今すぐ目を開けるのは諦めて、少しずつ腕や脚を伸ばしていく。と、指先がふかっと柔らかく温かな感触に埋まった。
んっ? これは……ひょっとして、マゼンタの頭かな?
全く、寝ている女性の部屋に忍び込むなとあれほど言ったのに。あろうことか人のベッドに忍び込むなんて。
また注意しないといけないかしら。
そんなことを考えつつも、魅惑の手触りに負けてサワサワと手を動かしてしまう。
はあ、やらかい……ふわふわで最高だ。
……けど、あれ?
なんか、マゼンタしては小さい?
毛の柔らかさはそっくりだけど、一本一本の長さも全然足りてない。
このサイズ感、この手触り。
ーー本物の、ネコ?
……え、ホントに?
「ーーマーティ?」
そっと抱き寄せると、モゾモゾと動いた後で添えた手にスリッと頭らしきものを擦りつけられた。
ーーさっきまでの夢は覚めたと思ったのにな。まだ覚めてなかったのか。
ま、いいか……これ、すごく気持ち良いし……
そのまま猫のお腹らしいところに顔を埋め、もう一度ゆっくり眠りに落ちた。
◇
ようやくしっかりと目を開けると、またもや見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。
これは、アレね。二度あることは三度あるという。
今度は何処に連れてこられたのだろう?
体を半分起こして、周りをゆっくり見回してみる。
清潔感のあるこじんまりとした部屋。家具はほとんどなく、壁もシーツも綺麗に真っ白。
なんていうか……イメージで言うなら、病院の個室?
いやいや、まさかね。
それにしても。
さっきまで、何か夢を見ていたはずなのに思い出せない。
何かとても幸せだったような、でも少し悲しかったような。そんな感情は残っているのに。
細かい内容はサッパリだ。
まあ本来夢なんてそんなものよね。
見ている間にどんなに楽しかろうが、覚めたらそれで終わりだ。
それに子供の頃に見た夢で今でもハッキリと覚えているものなんて、殺人鬼に追いかけられるとか高い所から落ちるとか、どれもこれも悪夢ばかりでロクなものじゃない。
覚えてないなら、今回はそこまで酷い悪夢でもなかったんだろう。
そういえばーー今見ているこの世界も夢なんだとしたら。
マゼンタやシアン、エリザやクレイやマヤさんのことも。全部忘れてしまうのだろうか。
誰も彼もがキャラが濃くて面白くてーー何故だか私に親切にしてくれて。
今は忘れようにも忘れられないと感じているのに。
覚めてしまえばどんな夢を見ていたんだっけとボンヤリした頭で思い出そうとして、でも思い出せず。
首を傾げてはしても、まあ別にいいかとそのまま日常の生活に戻っていくのだろうと、そう思うと。
ーーそれはなんだか、とても惜しい気がする。
……今度書庫に行ったら、夢の内容をしっかり覚えておくための方法がないかも調べてみようかしら。
でも、その前に。
とりあえずここが何処かを確かめないとね。
まずは部屋を出てみるかと、ベッドの端に移動しながらシーツをずらしたところで。
ベッドの中から、もふもふの丸まった毛玉が出てきた。
0
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる