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3章
1。二度あることは三度ある
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「じゃ、彼女の事は頼みますね。ーーすぐ戻ります」
ここ数日で耳に馴染んだ声と、目蓋の裏が白く明るく染まっていく感覚に目が覚めた。
微睡の中でゆっくり意識が覚醒していくーーなんて寝覚めのいいことはなく。
頭の割れそうな頭痛と倦怠感に呻きながら目蓋を開けようとするが、固く張り付いたかのように持ち上げられなかった。
うわ、何これ。……体調最悪なような……?
熱っぽいって事はないから、風邪ではないだろうけどーーああでも喉は痛いかも。
今すぐ目を開けるのは諦めて、少しずつ腕や脚を伸ばしていく。と、指先がふかっと柔らかく温かな感触に埋まった。
んっ? これは……ひょっとして、マゼンタの頭かな?
全く、寝ている女性の部屋に忍び込むなとあれほど言ったのに。あろうことか人のベッドに忍び込むなんて。
また注意しないといけないかしら。
そんなことを考えつつも、魅惑の手触りに負けてサワサワと手を動かしてしまう。
はあ、やらかい……ふわふわで最高だ。
……けど、あれ?
なんか、マゼンタしては小さい?
毛の柔らかさはそっくりだけど、一本一本の長さも全然足りてない。
このサイズ感、この手触り。
ーー本物の、ネコ?
……え、ホントに?
「ーーマーティ?」
そっと抱き寄せると、モゾモゾと動いた後で添えた手にスリッと頭らしきものを擦りつけられた。
ーーさっきまでの夢は覚めたと思ったのにな。まだ覚めてなかったのか。
ま、いいか……これ、すごく気持ち良いし……
そのまま猫のお腹らしいところに顔を埋め、もう一度ゆっくり眠りに落ちた。
◇
ようやくしっかりと目を開けると、またもや見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。
これは、アレね。二度あることは三度あるという。
今度は何処に連れてこられたのだろう?
体を半分起こして、周りをゆっくり見回してみる。
清潔感のあるこじんまりとした部屋。家具はほとんどなく、壁もシーツも綺麗に真っ白。
なんていうか……イメージで言うなら、病院の個室?
いやいや、まさかね。
それにしても。
さっきまで、何か夢を見ていたはずなのに思い出せない。
何かとても幸せだったような、でも少し悲しかったような。そんな感情は残っているのに。
細かい内容はサッパリだ。
まあ本来夢なんてそんなものよね。
見ている間にどんなに楽しかろうが、覚めたらそれで終わりだ。
それに子供の頃に見た夢で今でもハッキリと覚えているものなんて、殺人鬼に追いかけられるとか高い所から落ちるとか、どれもこれも悪夢ばかりでロクなものじゃない。
覚えてないなら、今回はそこまで酷い悪夢でもなかったんだろう。
そういえばーー今見ているこの世界も夢なんだとしたら。
マゼンタやシアン、エリザやクレイやマヤさんのことも。全部忘れてしまうのだろうか。
誰も彼もがキャラが濃くて面白くてーー何故だか私に親切にしてくれて。
今は忘れようにも忘れられないと感じているのに。
覚めてしまえばどんな夢を見ていたんだっけとボンヤリした頭で思い出そうとして、でも思い出せず。
首を傾げてはしても、まあ別にいいかとそのまま日常の生活に戻っていくのだろうと、そう思うと。
ーーそれはなんだか、とても惜しい気がする。
……今度書庫に行ったら、夢の内容をしっかり覚えておくための方法がないかも調べてみようかしら。
でも、その前に。
とりあえずここが何処かを確かめないとね。
まずは部屋を出てみるかと、ベッドの端に移動しながらシーツをずらしたところで。
ベッドの中から、もふもふの丸まった毛玉が出てきた。
ここ数日で耳に馴染んだ声と、目蓋の裏が白く明るく染まっていく感覚に目が覚めた。
微睡の中でゆっくり意識が覚醒していくーーなんて寝覚めのいいことはなく。
頭の割れそうな頭痛と倦怠感に呻きながら目蓋を開けようとするが、固く張り付いたかのように持ち上げられなかった。
うわ、何これ。……体調最悪なような……?
熱っぽいって事はないから、風邪ではないだろうけどーーああでも喉は痛いかも。
今すぐ目を開けるのは諦めて、少しずつ腕や脚を伸ばしていく。と、指先がふかっと柔らかく温かな感触に埋まった。
んっ? これは……ひょっとして、マゼンタの頭かな?
全く、寝ている女性の部屋に忍び込むなとあれほど言ったのに。あろうことか人のベッドに忍び込むなんて。
また注意しないといけないかしら。
そんなことを考えつつも、魅惑の手触りに負けてサワサワと手を動かしてしまう。
はあ、やらかい……ふわふわで最高だ。
……けど、あれ?
なんか、マゼンタしては小さい?
毛の柔らかさはそっくりだけど、一本一本の長さも全然足りてない。
このサイズ感、この手触り。
ーー本物の、ネコ?
……え、ホントに?
「ーーマーティ?」
そっと抱き寄せると、モゾモゾと動いた後で添えた手にスリッと頭らしきものを擦りつけられた。
ーーさっきまでの夢は覚めたと思ったのにな。まだ覚めてなかったのか。
ま、いいか……これ、すごく気持ち良いし……
そのまま猫のお腹らしいところに顔を埋め、もう一度ゆっくり眠りに落ちた。
◇
ようやくしっかりと目を開けると、またもや見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。
これは、アレね。二度あることは三度あるという。
今度は何処に連れてこられたのだろう?
体を半分起こして、周りをゆっくり見回してみる。
清潔感のあるこじんまりとした部屋。家具はほとんどなく、壁もシーツも綺麗に真っ白。
なんていうか……イメージで言うなら、病院の個室?
いやいや、まさかね。
それにしても。
さっきまで、何か夢を見ていたはずなのに思い出せない。
何かとても幸せだったような、でも少し悲しかったような。そんな感情は残っているのに。
細かい内容はサッパリだ。
まあ本来夢なんてそんなものよね。
見ている間にどんなに楽しかろうが、覚めたらそれで終わりだ。
それに子供の頃に見た夢で今でもハッキリと覚えているものなんて、殺人鬼に追いかけられるとか高い所から落ちるとか、どれもこれも悪夢ばかりでロクなものじゃない。
覚えてないなら、今回はそこまで酷い悪夢でもなかったんだろう。
そういえばーー今見ているこの世界も夢なんだとしたら。
マゼンタやシアン、エリザやクレイやマヤさんのことも。全部忘れてしまうのだろうか。
誰も彼もがキャラが濃くて面白くてーー何故だか私に親切にしてくれて。
今は忘れようにも忘れられないと感じているのに。
覚めてしまえばどんな夢を見ていたんだっけとボンヤリした頭で思い出そうとして、でも思い出せず。
首を傾げてはしても、まあ別にいいかとそのまま日常の生活に戻っていくのだろうと、そう思うと。
ーーそれはなんだか、とても惜しい気がする。
……今度書庫に行ったら、夢の内容をしっかり覚えておくための方法がないかも調べてみようかしら。
でも、その前に。
とりあえずここが何処かを確かめないとね。
まずは部屋を出てみるかと、ベッドの端に移動しながらシーツをずらしたところで。
ベッドの中から、もふもふの丸まった毛玉が出てきた。
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