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3章
33。静かな脱出劇
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牢に入れられてから三十分経ったのか、それとも三時間か。
時間の感覚もなくして完全な暗闇の中で過ごしていたが、ほんの少しだけ明るさが戻る。
光源の方向を見れば、ギシリと木の軋む音とともに男が斜めに掛かった梯子を降りてきていた。
「出てこい、移動だ」
そう言って男が牢の鍵を開ける。
「そのまま上に行くんだ。外に敷いた魔法陣があるから、全員そこで待機しろーー逃げようとすんじゃねえぞ。こっちの仲間も連れてきているからな」
言葉通り、もう一人仲間らしき男が降りてきて梯子の下でこちらを見張っている。
その男も怪しい動きをしたら容赦なく脚を撃ってやると言って、手に持ったランタンの灯りに拳銃をかざして見せた。
囚われていた人達は呻き声を上げたりため息を吐いたりしながら、その言葉に従って牢を出ていく。
捕まえられた際に痛めつけられたのか、身体をフラつかせたり足を引き摺りながら歩く人も多かった。
私も静かにその人達の列に混ざり、梯子の段をひとつずつ上っていく。
大人しく外に出れば、小屋の前の小さな空き地いっぱいに仮設の魔法陣が敷かれていた。
赤茶色の石灰のような粉で描かれたその魔法陣は、オルトさんの説明によれば周囲の"魔素"というものを吸収することで術者の魔力の消耗を抑えるものらしい。
数回も使えば効果がなくなるが常設の魔法陣に比べ費用面でも安く、元々数回しか使う予定のない場所であれば最初に検討されるものだそうだ。
デメリットは準備の手間に加えてあの粉が周囲の魔素を吸収するのに時間が必要なため、転移できるようになるまで待たなくてはいけないこと。
さっきの別荘ですぐに転移しなかったのは、あの周辺の魔素がすでに使い尽くされていたため仮設転位陣の効果がそれ以上得られないから。
それと、今のようにまとめて連れて行く方が効率が良いからだろう。
(大体はオルトさんに聞いていた通りだけど……こんなに見張りが増えるなんて思わなかったわ)
転位陣の周りにはこちらも銃をチラつかせる男がもう一人、他に黒猫のお姉さんと、新しい届け物屋なのだろうサビ猫もいる。
(あとは牢を開けた男と梯子の上下に一人ずつーー計六人ね)
人質は私を含めて十数人。犯人側はほとんどが武装しているし、こちらは怪我人も多い。
まともにやって逃げられる状況じゃない。
ーーそう、まともにやれば。
(大丈夫……誰も気づいていないわ)
私は息を殺して、森の奥に向かって歩き出した。
全身がガタガタと震えるし、心臓は胸から飛び出しそうになっている。正直パニック寸前だった。
だがここで声を上げて仕舞えば、それこそおしまいだ。
一瞬届け物屋の猫達の耳がピクリと動いた気がして悲鳴をあげそうになったが必死で噛み殺し、音を立てないようにゆっくりと歩を進める。
そうやって十分に距離が稼げたところで、私は小屋を背に走り出した。
時間の感覚もなくして完全な暗闇の中で過ごしていたが、ほんの少しだけ明るさが戻る。
光源の方向を見れば、ギシリと木の軋む音とともに男が斜めに掛かった梯子を降りてきていた。
「出てこい、移動だ」
そう言って男が牢の鍵を開ける。
「そのまま上に行くんだ。外に敷いた魔法陣があるから、全員そこで待機しろーー逃げようとすんじゃねえぞ。こっちの仲間も連れてきているからな」
言葉通り、もう一人仲間らしき男が降りてきて梯子の下でこちらを見張っている。
その男も怪しい動きをしたら容赦なく脚を撃ってやると言って、手に持ったランタンの灯りに拳銃をかざして見せた。
囚われていた人達は呻き声を上げたりため息を吐いたりしながら、その言葉に従って牢を出ていく。
捕まえられた際に痛めつけられたのか、身体をフラつかせたり足を引き摺りながら歩く人も多かった。
私も静かにその人達の列に混ざり、梯子の段をひとつずつ上っていく。
大人しく外に出れば、小屋の前の小さな空き地いっぱいに仮設の魔法陣が敷かれていた。
赤茶色の石灰のような粉で描かれたその魔法陣は、オルトさんの説明によれば周囲の"魔素"というものを吸収することで術者の魔力の消耗を抑えるものらしい。
数回も使えば効果がなくなるが常設の魔法陣に比べ費用面でも安く、元々数回しか使う予定のない場所であれば最初に検討されるものだそうだ。
デメリットは準備の手間に加えてあの粉が周囲の魔素を吸収するのに時間が必要なため、転移できるようになるまで待たなくてはいけないこと。
さっきの別荘ですぐに転移しなかったのは、あの周辺の魔素がすでに使い尽くされていたため仮設転位陣の効果がそれ以上得られないから。
それと、今のようにまとめて連れて行く方が効率が良いからだろう。
(大体はオルトさんに聞いていた通りだけど……こんなに見張りが増えるなんて思わなかったわ)
転位陣の周りにはこちらも銃をチラつかせる男がもう一人、他に黒猫のお姉さんと、新しい届け物屋なのだろうサビ猫もいる。
(あとは牢を開けた男と梯子の上下に一人ずつーー計六人ね)
人質は私を含めて十数人。犯人側はほとんどが武装しているし、こちらは怪我人も多い。
まともにやって逃げられる状況じゃない。
ーーそう、まともにやれば。
(大丈夫……誰も気づいていないわ)
私は息を殺して、森の奥に向かって歩き出した。
全身がガタガタと震えるし、心臓は胸から飛び出しそうになっている。正直パニック寸前だった。
だがここで声を上げて仕舞えば、それこそおしまいだ。
一瞬届け物屋の猫達の耳がピクリと動いた気がして悲鳴をあげそうになったが必死で噛み殺し、音を立てないようにゆっくりと歩を進める。
そうやって十分に距離が稼げたところで、私は小屋を背に走り出した。
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