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3章
39★※ 末路①
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流血表現があります。苦手な人は回れ右で。
*******************
「おい……本当にこの家に入って行ったんだろうな?」
ソフィアがオルフェントに最初に監禁されていた別荘で、男が黒猫に声を掛ける。
男が人質を捜してこの建物に入ってから十分も経っていないが、もともと部屋数も大したことない家だ。
家具のないがらんどうの家では隠れる場所などないに等しいから、探す場所なんて知れているーーが、見つからないのだ。
森を捜していて、微かにだが女の悲鳴が聞こえた。
状況からして捜していた奴に間違いないし、この建物以外に隠れる場所もない。
目の前の奴隷も「見つけたのか?」と尋ねた時にこの別荘を指し示したのに、だ。
(ーーまさか、ここに入ると見せかけて森に逃げたか? だとしたら厄介だな。)
捜し辛くなるというのもあるし、こちらが見つける前に奥に入り込んだ挙げ句、獣に襲われてしまう可能性もある。
普通の人質なら生きてさえいれば問題ないが、あれは迷い子だと聞いた。
迷い子が心の底から危険を感じるとそのまま元の世界に戻るという話もある。
あくまで噂なので真偽の程は分からないが、もし本当にそうなったら大損だ。
「ちっ……どのみちこの辺には居るはずなんだ。行くぞ、次は裏手の森を捜す」
見切りをつけて踵を返そうとした時、すぐ傍で“パンッ”と乾いた音がなる。
続いて右脚の脹脛に焼けつくような痛みが走り、男は手に持った灯りを取り落としたあげく、床に転がった。
「ーーーー!? グッ、あぁっ!?」
「……ダメじゃないですか、急に外に出ようとするなんてーーびっくりして撃っちゃいましたよ」
クスクスと笑う声とともに、上からそんな言葉が降ってくる。
「おっ、お前!? 裏切ったのか!?」
慌てて顔を上げれば、視界に入ったのは夜空に浮かぶ三日月のような口と、薄く青く光る目。
そして揺らぐ光に照らされた明るい青い髪。
「ーーは? お、前……誰だ……?」
「やだなあ、何時間も前から一緒にいたでしょう?」
「ち、違うっ! ここには黒いメス猫と入ったはずだ!」
「ーー頭が悪い人は嫌いなんですけどね。だから、その黒猫が僕だったんですよ。ちょっと姿は変えてましたがね」
耳だってアンタに切られた傷がついているでしょう? と愉悦のにじむ声で目の前の青猫が告げた。
それを聞いた男は咄嗟に自分の獲物に手を伸ばしたが、今度はナイフを握ろうとした手のひらを撃ち抜かれる。
銃声はそれだけで終わらず、反対の手、肩、左の太腿と続けざまに穴が開く。
飛び散る血が床を濡らし、男が絶叫とともにその上でのたうち回った。
「人間でも転移魔法は使える者もいるでしょうが、痛みで集中できなければ無理ですよね? ああ、でもうるさくて仕方ありませんね。先に喉を潰せばよかったでしょうか」
でもそれだと尋問の時に困るから別の方面が煩くなってしまいますね、と悩む素振りで銃を撫でた。
「て、めっ……何が望み、だ……」
「ちょっとした情報のため、だったんですがーーアンタにはそれ以上に借りを返さないといけなくなったので」
ーーよくもその薄汚い体で、僕の飼い主に触れてくれましたね。
とりあえず、ソフィーの背中に押し付けていた部位は無くしてしまいましょうかーー
そう言って、すっかり正体を現したシアンがにこりと笑い、男の頭を片手で固定すると再び銃を突きつけた。
「ヒッーーゆ、許しーー」
次の瞬間、男の右耳の一部が弾け飛ぶ。
途中で銃弾を補充しながら、耳が全て削り切れるまで弾が撃ち込まれていった。
「グギャアァァァーーーー!!」
「やはり首から上だと出血が多いですねぇ。もう少し嬲れるかと思いましたが……」
急所は全て外しているとはいえあまりやると失血死してしまいますから、ココまでですね。
そう言ってシアンは男を解放すると立ち上がって血で滑りやすくなった床を避けるように後退る。
ーー次の瞬間背後に人影が現れ、銃を持った腕ごとシアンをギリっと締め上げた。
そのまま緩んだ手から銃をはたき落として奪う。
「で、でかしたぞ! お前、サビ柄の奴だな!? ソイツを殺せ!」
仲間の登場に喜色を浮かべた男が唾を飛ばしながら叫ぶと、錆び猫は手に持ったナイフをシアンの首筋に当て、二イッと口の端を吊り上げた。
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「おい……本当にこの家に入って行ったんだろうな?」
ソフィアがオルフェントに最初に監禁されていた別荘で、男が黒猫に声を掛ける。
男が人質を捜してこの建物に入ってから十分も経っていないが、もともと部屋数も大したことない家だ。
家具のないがらんどうの家では隠れる場所などないに等しいから、探す場所なんて知れているーーが、見つからないのだ。
森を捜していて、微かにだが女の悲鳴が聞こえた。
状況からして捜していた奴に間違いないし、この建物以外に隠れる場所もない。
目の前の奴隷も「見つけたのか?」と尋ねた時にこの別荘を指し示したのに、だ。
(ーーまさか、ここに入ると見せかけて森に逃げたか? だとしたら厄介だな。)
捜し辛くなるというのもあるし、こちらが見つける前に奥に入り込んだ挙げ句、獣に襲われてしまう可能性もある。
普通の人質なら生きてさえいれば問題ないが、あれは迷い子だと聞いた。
迷い子が心の底から危険を感じるとそのまま元の世界に戻るという話もある。
あくまで噂なので真偽の程は分からないが、もし本当にそうなったら大損だ。
「ちっ……どのみちこの辺には居るはずなんだ。行くぞ、次は裏手の森を捜す」
見切りをつけて踵を返そうとした時、すぐ傍で“パンッ”と乾いた音がなる。
続いて右脚の脹脛に焼けつくような痛みが走り、男は手に持った灯りを取り落としたあげく、床に転がった。
「ーーーー!? グッ、あぁっ!?」
「……ダメじゃないですか、急に外に出ようとするなんてーーびっくりして撃っちゃいましたよ」
クスクスと笑う声とともに、上からそんな言葉が降ってくる。
「おっ、お前!? 裏切ったのか!?」
慌てて顔を上げれば、視界に入ったのは夜空に浮かぶ三日月のような口と、薄く青く光る目。
そして揺らぐ光に照らされた明るい青い髪。
「ーーは? お、前……誰だ……?」
「やだなあ、何時間も前から一緒にいたでしょう?」
「ち、違うっ! ここには黒いメス猫と入ったはずだ!」
「ーー頭が悪い人は嫌いなんですけどね。だから、その黒猫が僕だったんですよ。ちょっと姿は変えてましたがね」
耳だってアンタに切られた傷がついているでしょう? と愉悦のにじむ声で目の前の青猫が告げた。
それを聞いた男は咄嗟に自分の獲物に手を伸ばしたが、今度はナイフを握ろうとした手のひらを撃ち抜かれる。
銃声はそれだけで終わらず、反対の手、肩、左の太腿と続けざまに穴が開く。
飛び散る血が床を濡らし、男が絶叫とともにその上でのたうち回った。
「人間でも転移魔法は使える者もいるでしょうが、痛みで集中できなければ無理ですよね? ああ、でもうるさくて仕方ありませんね。先に喉を潰せばよかったでしょうか」
でもそれだと尋問の時に困るから別の方面が煩くなってしまいますね、と悩む素振りで銃を撫でた。
「て、めっ……何が望み、だ……」
「ちょっとした情報のため、だったんですがーーアンタにはそれ以上に借りを返さないといけなくなったので」
ーーよくもその薄汚い体で、僕の飼い主に触れてくれましたね。
とりあえず、ソフィーの背中に押し付けていた部位は無くしてしまいましょうかーー
そう言って、すっかり正体を現したシアンがにこりと笑い、男の頭を片手で固定すると再び銃を突きつけた。
「ヒッーーゆ、許しーー」
次の瞬間、男の右耳の一部が弾け飛ぶ。
途中で銃弾を補充しながら、耳が全て削り切れるまで弾が撃ち込まれていった。
「グギャアァァァーーーー!!」
「やはり首から上だと出血が多いですねぇ。もう少し嬲れるかと思いましたが……」
急所は全て外しているとはいえあまりやると失血死してしまいますから、ココまでですね。
そう言ってシアンは男を解放すると立ち上がって血で滑りやすくなった床を避けるように後退る。
ーー次の瞬間背後に人影が現れ、銃を持った腕ごとシアンをギリっと締め上げた。
そのまま緩んだ手から銃をはたき落として奪う。
「で、でかしたぞ! お前、サビ柄の奴だな!? ソイツを殺せ!」
仲間の登場に喜色を浮かべた男が唾を飛ばしながら叫ぶと、錆び猫は手に持ったナイフをシアンの首筋に当て、二イッと口の端を吊り上げた。
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