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4章
9。噂話だって重要です
しおりを挟む「そもそも此度の件が発覚したのは、事件の三日前に催した茶会にリンドバーク辺境伯の令嬢が参加していなかったことからじゃな」
エリザは小さな胸をえっへん、と反らしてドヤ顔で説明を始めた。
あれ、でも確か城の中にモーリタリアのスパイが紛れていたのに気づいて、そこから読心スキルで今回の計画を知ったって話じゃなかったけ?
「確かに以前から間者が入り込んでいるのは気づいていて、しばらく泳がせていたが。折に触れて心を読んではみたものの、何か企んで潜り込んでいるのは分かっても具体的なことは今ひとつでの」
「エリザベスの場合は読心スキルがあるから尋問はお手の物だけど、指示待ち中の下っ端さんの思考を読んでも大した情報はないわよね~」
マヤさんがお茶を飲みながら補足してくれる。
「そういうことじゃ。ーー件の辺境伯令嬢には仲良しの侯爵令嬢がおっての。茶会には常に二人で来ていたのじゃが、あの日は侯爵令嬢のみが参加しておった。それを不思議に思った別の令嬢が理由を尋ねると『迎えに行ったのだが、体調が悪いと言われ屋敷に入れてもらえなかった』と言うたのじゃ」
「ええと、体調不良なら欠席するのも仕方ないのでは……?」
「貴族のお家って、そういう場合でも一旦中に通した上で執事さんなりが謝罪してくれるのよね~。先触れだってしているはずだし、そこまで行って門前払いっておかしいのよ~」
なるほどね。庶民だと普通にありそうな話に聞こえるけど、貴族同士だとそれだけで何かしらトラブルが発生してるってことになるんだ。
「その話を小耳に挟んでからそれとなく探らせれば、辺境伯の末娘の誘拐が判っての。動き出したことさえ分かれば、あとは城中のネズミ供の前でそれとなく噂を流して、色々考えてもらった情報を集めてーーって感じじゃの」
「本当に貴女のその能力ってズルいくらい便利よね~。むしろ貴女がスパイになったら何処の国でも滅ぼせそうよね! 今度やってみたらいいんじゃなぁい?」
「マヤさん、面白がって自分のとこの女王様を唆さないでください!」
楽しそうに笑いながら物騒な提案をするマヤさんを必死で止める。
ダメですよ、本気にしてエリザが実行しちゃったらどうするんですか!
世界地図が描きかわっちゃいますよ?!
「それにしても……共和国もよくエリザのところにスパイなんて送るわよね……」
読心スキルの存在を信じてないからできることだろうけど、知ってる方からすれば阿呆にしか見えないわ。
「まあ、その方が都合が良かったということもあってスキルの事は広めていなかったのじゃが……今回の件でわらわも反省しての。尋問した後のネズミを一匹向こうに送り返しておいてやったから、もう城に内通者が入り込むこともないじゃろうよ」
「あらぁ、貴女が反省するなんて! 明日は雪が降りそうねぇ~」
「失礼なやつじゃな!? ーー確かに今まではその方が面白そうだから放って置いたが、そのせいで身内が傷つくとなれば考えざるを得ないじゃろうよ」
ーーん? 身内が傷つく?
「まさか人質の中にクロエさんも居たの!?」
どうしよう、全然気付いてなかった。
あの地下牢は暗かったし、外に出てからは逃げるのに必死でちゃんと周りの人達を見ていなかったから見逃したんだわ。
今日いないのも怪我をしてまだ外に出られないとかかもーー
「あー、違う違う。身内とは言うたがそっちではないわ」
「え? じゃあサイラスさん?」
「余計に違うわっ! 何でそうなるんじゃ!」
そう言ってバッタリとテーブルに倒れるエリザ。隣ではマヤさんが面白そうに肩を震わせながら笑っている。
うーん、おかしいわね。私そんなに変な事を言った覚えがないんだけど、二人のこの反応は一体何なのかしら?
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