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4章
38。巡りあう季節
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「ーー今日は少し暖かいな」
秋が過ぎ、冬が来て。
私のちょっとした失踪事件から半年が経とうとしていた。
あれから姉に頼み込んで、毎週のようにあの森に様子を見にきていた。
今度は遭難しかけないように森の浅いところをお姉ちゃんと二人で歩いたり、ガイドさんに頼んで私が落ちたという湖に行ってみたり。
結局これまで、そこにシアンとマゼンタの姿を見つけることはできなかったわけだけど。
ーー今日が、最後のつもりだった。
「雪、そろそろ溶けちゃいそうだね」
「そうね、もうすぐ春だもの。来月からソフィーが居なくなっちゃうなんてまだ信じられないわ。私、寂しくて死んじゃうかも?」
「もう、お姉ちゃん大げさ! ちょっと留学するだけじゃない」
四月から、私はまた日本に戻ることにした。向こうの大学に通うことにしたのだ。
「そんなことないわよ! ソフィーならそのまま海外で仕事見つけちゃって、帰ってこない可能性だってあるでしょ?」
「まあ、それは否定しないけど。ーーもうこの森にもあまり来れなくなるかな」
向こうからはこっちに来れないだろう、というのはエリザから聞いて知っていた。
狙って来れるものでもないそうだし、何よりあの二匹はもう大人だから、世界を渡ることはできないのだと。
それでも、ひょっとしたら。
あの二匹なら、何とかして追いかけてきてくれるんじゃないだろうかと。
そうじゃなくても、何かの間違いでもう一度私が向こうに迷い込めないだろうかと、この数ヶ月試し続けてきたのだけどーー
「さすがにこれはタイムアップ、よね」
「……後悔しない? 吹っ切れそう?」
「うーん……無理、かな。多分後悔するし、結構長く引きずっちゃいそう」
この半年でお姉ちゃんにはある程度話をしていたので、私が何を願ってこの森に通っていたのかーーそしてそれが叶いそうもないことも知っている。
元々あまり見込みがないのも分かった上で今まで根気よく付き合ってくれて、さらにこうして気遣わしげに声をかけてくれるのに、私は歯切れの悪い答えしか返せなかった。
自分でもイヤになるくらい、私は往生際が悪いのだ。
ーーけれど、これ以上は自分ではどうすることもできない。
何より私自身が、もうすぐ大人になってしまうから。
「未練はあるけど、やれるだけはやってみたから……残念だけど、これ以上はもう……」
「おや、ソフィーはもう少し諦めが悪いと思ってましたけど」
「なっ!? 何よその言い方、ホンっと失礼ねーーって、え……」
私をソフィーと呼ぶのは、私の周りでは二人だけ。
一人はお姉ちゃんで、もう一人はーー
「ーーう、嘘ーー」
「嘘じゃありませんよ。全く、なかなかこっちに来れなくて苦労しましたよ」
「ホントだぜ! ていうかこんな大変だと思わなかったし!」
馴染みのある声と共に、少し離れた木の影から現れた目に痛いピンクと水色。
ずっと探していたその色彩を、私は信じられない思いで見つめたのだった。
**************************
次で完結の予定です。
ちゃんと一話に纏められれば…ですが……アヤシイナ ´ཀ`
秋が過ぎ、冬が来て。
私のちょっとした失踪事件から半年が経とうとしていた。
あれから姉に頼み込んで、毎週のようにあの森に様子を見にきていた。
今度は遭難しかけないように森の浅いところをお姉ちゃんと二人で歩いたり、ガイドさんに頼んで私が落ちたという湖に行ってみたり。
結局これまで、そこにシアンとマゼンタの姿を見つけることはできなかったわけだけど。
ーー今日が、最後のつもりだった。
「雪、そろそろ溶けちゃいそうだね」
「そうね、もうすぐ春だもの。来月からソフィーが居なくなっちゃうなんてまだ信じられないわ。私、寂しくて死んじゃうかも?」
「もう、お姉ちゃん大げさ! ちょっと留学するだけじゃない」
四月から、私はまた日本に戻ることにした。向こうの大学に通うことにしたのだ。
「そんなことないわよ! ソフィーならそのまま海外で仕事見つけちゃって、帰ってこない可能性だってあるでしょ?」
「まあ、それは否定しないけど。ーーもうこの森にもあまり来れなくなるかな」
向こうからはこっちに来れないだろう、というのはエリザから聞いて知っていた。
狙って来れるものでもないそうだし、何よりあの二匹はもう大人だから、世界を渡ることはできないのだと。
それでも、ひょっとしたら。
あの二匹なら、何とかして追いかけてきてくれるんじゃないだろうかと。
そうじゃなくても、何かの間違いでもう一度私が向こうに迷い込めないだろうかと、この数ヶ月試し続けてきたのだけどーー
「さすがにこれはタイムアップ、よね」
「……後悔しない? 吹っ切れそう?」
「うーん……無理、かな。多分後悔するし、結構長く引きずっちゃいそう」
この半年でお姉ちゃんにはある程度話をしていたので、私が何を願ってこの森に通っていたのかーーそしてそれが叶いそうもないことも知っている。
元々あまり見込みがないのも分かった上で今まで根気よく付き合ってくれて、さらにこうして気遣わしげに声をかけてくれるのに、私は歯切れの悪い答えしか返せなかった。
自分でもイヤになるくらい、私は往生際が悪いのだ。
ーーけれど、これ以上は自分ではどうすることもできない。
何より私自身が、もうすぐ大人になってしまうから。
「未練はあるけど、やれるだけはやってみたから……残念だけど、これ以上はもう……」
「おや、ソフィーはもう少し諦めが悪いと思ってましたけど」
「なっ!? 何よその言い方、ホンっと失礼ねーーって、え……」
私をソフィーと呼ぶのは、私の周りでは二人だけ。
一人はお姉ちゃんで、もう一人はーー
「ーーう、嘘ーー」
「嘘じゃありませんよ。全く、なかなかこっちに来れなくて苦労しましたよ」
「ホントだぜ! ていうかこんな大変だと思わなかったし!」
馴染みのある声と共に、少し離れた木の影から現れた目に痛いピンクと水色。
ずっと探していたその色彩を、私は信じられない思いで見つめたのだった。
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次で完結の予定です。
ちゃんと一話に纏められれば…ですが……アヤシイナ ´ཀ`
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