【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

文字の大きさ
144 / 174
4章

17。まったりランチのお味は

しおりを挟む
「ここって……まさかブックカフェ?」

シアンがまずはランチをと言って連れてきてくれたのは、元の世界と変わらぬブックカフェだった。

壁に並んだたくさんの本棚。壁に飾られた本。明るすぎない照明に、邪魔にならない程度に置かれた観葉植物。
手前には適度な間隔でカフェテーブルが並べられ、お客さん達が思い思いに本を読みながらお茶をしたり食事を楽しんだりしていた。


「こちらではそういう名称ではないのですがーーソフィーの世界にも同じような場所があるんですか?」
「ええ、雰囲気もそっくり! お気に入りのお店もあって、結構通ってたの。ーーこのお店もとても素敵ね」
「ふふ、気に入って頂けたようで良かったです。食事も評判がいいんですよ?」
「そうなの? すごく楽しみだわ」

そんな会話をしながら、予約していたという奥の席に通されてメニューを渡される。

パスタにハンバーグにグラタン。キッシュなんかもあって、料理はどれも元の世界と変わらないようなラインナップ。
メインを選ぶとワンプレートにサラダとスープがつくスタイルらしい。

結局私はフレンチトースト、シアンはサーモンとほうれん草のキッシュを選んだ。

料理が来る前にいそいそと本棚に向かい、気になる本を探して戻ればシアンに笑われてしまった。

「本当に本が好きですね」
「あっ……ごめんなさい。予行演習とは言え一応デートなのに、一人で本読んでちゃダメよね……」
「いいですよ。僕も何か探してきますから」

そうしてお互いに本を読み、たまに他愛ない話をしながら料理を待つ。
届いたプレートの感想を言ったり、お互いのお皿を交換したり。

なんともまったりした時間ーーとても落ち着くし私は普通に楽しいけど、これって予定していたデートとは違うような?
どう考えてもこれはシアンのやりたいことじゃなくて、私の好きそうなことに合わせてくれてるわよね?
困ったな、今日はシアンの好みを探ろうと思ってたのに。

出来立てのフレンチトーストを口に運びながら、前に座っているシアンを盗み見る。
足を組んで綺麗な姿勢で本を読む姿は、写真の隠し撮りとかしたら売れそうなくらい様になっていた。


うーん……なんで私こんなイケメンとデートしているんだっけ。
いや、イケメンと言っても猫だし、自分の飼い猫だけど。


あと薄々気づいてはいたが、さっきからカフェにいるお客の女の子達の視線が痛い。

面と向かってジロジロ見てくることはないが、こちらをちらっと見て『なんでこの二人が一緒に居るんだ』って顔をした後、シアンの首輪を見て納得したような笑みを浮かべるのが何とも言えず不愉快だ。

しまいには“あの子飼い猫をはべらして悦に浸ってるんじゃない?“という囁き声までばっちり聞こえてしまって、私は読んでいた本を閉じた。

シアンが無駄に美形なのも、私じゃ釣り合いが取れてないのも元から分かってるけどーーそれにしたって散々な言われようだわ。


こうなっては本とか読む気分じゃないし、折角の料理にも予約してくれたシアンにも悪いけど、一刻も早く食事を終えて店を出たい。

流石にデート中に相手の目の前でため息をつくわけにもいかないから、本を返す体で席を立つ。


硬くなった表情を見せないように横を向きながら本棚に向かおうとした次の瞬間、私はシアンに捕まえられ、あろうことか彼のに座らされてしまった。








*=======================*

upする前に寝落ちしてしまった。。。スミマセン。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...