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4章
25。突然迫られても困ります!
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花火の余韻に浸ってそのまま空を眺めていたが、秋の夜は急激に冷える。
火照った顔に最初は夜風が気持ち良く感じたものの、しばらくすると寒気でぶるりと体が震えた。
「寒いですか? 風邪を引いてもいけませんし、そろそろ行きましょうか。今日はもう城には戻らないんですよね?」
「ええ、服とかは次寄った時に返せばいいって言われてるから」
「じゃあ僕らの家に帰りましょう」
ーー僕らのってとこ、微妙に強調された気がするけど。意識しすぎかしら。
言われて傾斜のある屋根の上で慎重に体を起こしてもらい、差し出された手を取った。
そう言えば、これって同棲してることになるのかな。お姉ちゃんに知られたら泣かれるわね。
ああでも、恋人になったわけでもないから同棲とは言わない? 単なるルームシェアかしら。
というか、冷静に考えればマゼンタにはそれっぽいことを言われたこともあったけど、シアンには好きとも言われてないわね。
ーーーーあれ?
すごく、すごーく今さらだけど……シアンって私のこと好きなんだろうか?
元々スキンシップが過剰だった気もするし、これって揶揄われているだけの可能性も捨てきれないようなーー
「好きですよ」
「え、そーだったんだ……って、え……えぇっ?」
普通に会話をしていたかのような返しにこれまた普通に返事をしてしまってから、やっとおかしいと気づく。
あ、あれ。これはひょっとして。
「ええ、声に出てましたよ」
「ーー?! ど、どこからっ?!」
「今さらだけど、からですね。ソフィーはやっぱりお酒は控えた方がいいかもしれませんね」
夕食の食前酒を飲んでからたまに独り言出てましたよ、と言われて顔が真っ赤になる。ううっ、まさかそんな事になっていたとは……
「ふふ、気づいてなかったんですね。可愛い。ーー言うのが遅れましたが、あなたのことが好きです。付き合ってほしいとも思ってます」
「なっーーええっ?! 今それを言うの!?」
思わぬタイミングでの告白に頭がパニックになる。
好きって、シアンが、私を? 本当に?
元から家族とか友人とかとしての親愛の情はあったがーー正直、シアンのことを自分が異性として好きなのかもまだ良く分からない。
キスはーーびっくりするくらい、嫌じゃなかったけど。
「今すぐ返事がほしいとは言いません。時間を掛けてでもおとすつもりですから。ーーだから、まだ帰らないでください」
まだこの世界に居てほしいと懇願する飼い猫に、どう返事をすればいいか分からない。
「……私、向こうに家族がいてーー振られはしたけど好きだった人もいて。だから……」
「それでも、ここに残ってもいいと思ったんでしょう?」
「それはそうだけど、残る方法だって未だに分からないし。何よりその、飼い猫と恋人になるとかは想定外って言うかーー」
「今はそれはいいんです。いいから兎に角残ってください」
んな無茶な。
なんか今日はいつにも増して強引じゃないですか?!
「あ、あなた今まで一度もそんな事言ってこなかったじゃない!?」
「ええ、失敗でしたね。もう少しくらいは意識してくれているものかと思ってたんですが……もっとたくさん言葉にしておくべきでした」
シアンの眼がキラリと光り、すぅっと細められる。
あ、これ。
完全に獲物を狙う獣の目だ。
えっ、今日ってデートよね? なんでこんな身の危険を感じなきゃいけないわけ?!
「ちょっ、シアン落ち着いて!? とりあえず今日は家に帰りましょう?!」
何とか宥めようと声を掛けながら、今捕まったらマズい気がして近づいてくるシアンから慌てて距離を取る。が、悪いことにここは塔の上だ。
座ったままズリズリ下がるもすぐに屋根の端まで着いてしまい、それ以上の逃げ場なんてない。
ちらりと後ろを見ると何もない真っ暗な空間が広がっていて、ヒュッと息を呑みながら屋根についていた手に思わず力を込める。
ーーガシャリ
「…………へっ?」
不穏な音とともに、体を支えていた腕の下がなくなった。
崩れた屋根と一緒に体が落ちていく。
「キッ、キャアアアアァァァーーーー!?!?」
「ーー!? ソフィーッ?!」
咄嗟にシアンが手を伸ばすが間に合わない。
背中から前に強い風が打ちつけられるのを感じながら、私は暗闇の中に吸い込まれた。
火照った顔に最初は夜風が気持ち良く感じたものの、しばらくすると寒気でぶるりと体が震えた。
「寒いですか? 風邪を引いてもいけませんし、そろそろ行きましょうか。今日はもう城には戻らないんですよね?」
「ええ、服とかは次寄った時に返せばいいって言われてるから」
「じゃあ僕らの家に帰りましょう」
ーー僕らのってとこ、微妙に強調された気がするけど。意識しすぎかしら。
言われて傾斜のある屋根の上で慎重に体を起こしてもらい、差し出された手を取った。
そう言えば、これって同棲してることになるのかな。お姉ちゃんに知られたら泣かれるわね。
ああでも、恋人になったわけでもないから同棲とは言わない? 単なるルームシェアかしら。
というか、冷静に考えればマゼンタにはそれっぽいことを言われたこともあったけど、シアンには好きとも言われてないわね。
ーーーーあれ?
すごく、すごーく今さらだけど……シアンって私のこと好きなんだろうか?
元々スキンシップが過剰だった気もするし、これって揶揄われているだけの可能性も捨てきれないようなーー
「好きですよ」
「え、そーだったんだ……って、え……えぇっ?」
普通に会話をしていたかのような返しにこれまた普通に返事をしてしまってから、やっとおかしいと気づく。
あ、あれ。これはひょっとして。
「ええ、声に出てましたよ」
「ーー?! ど、どこからっ?!」
「今さらだけど、からですね。ソフィーはやっぱりお酒は控えた方がいいかもしれませんね」
夕食の食前酒を飲んでからたまに独り言出てましたよ、と言われて顔が真っ赤になる。ううっ、まさかそんな事になっていたとは……
「ふふ、気づいてなかったんですね。可愛い。ーー言うのが遅れましたが、あなたのことが好きです。付き合ってほしいとも思ってます」
「なっーーええっ?! 今それを言うの!?」
思わぬタイミングでの告白に頭がパニックになる。
好きって、シアンが、私を? 本当に?
元から家族とか友人とかとしての親愛の情はあったがーー正直、シアンのことを自分が異性として好きなのかもまだ良く分からない。
キスはーーびっくりするくらい、嫌じゃなかったけど。
「今すぐ返事がほしいとは言いません。時間を掛けてでもおとすつもりですから。ーーだから、まだ帰らないでください」
まだこの世界に居てほしいと懇願する飼い猫に、どう返事をすればいいか分からない。
「……私、向こうに家族がいてーー振られはしたけど好きだった人もいて。だから……」
「それでも、ここに残ってもいいと思ったんでしょう?」
「それはそうだけど、残る方法だって未だに分からないし。何よりその、飼い猫と恋人になるとかは想定外って言うかーー」
「今はそれはいいんです。いいから兎に角残ってください」
んな無茶な。
なんか今日はいつにも増して強引じゃないですか?!
「あ、あなた今まで一度もそんな事言ってこなかったじゃない!?」
「ええ、失敗でしたね。もう少しくらいは意識してくれているものかと思ってたんですが……もっとたくさん言葉にしておくべきでした」
シアンの眼がキラリと光り、すぅっと細められる。
あ、これ。
完全に獲物を狙う獣の目だ。
えっ、今日ってデートよね? なんでこんな身の危険を感じなきゃいけないわけ?!
「ちょっ、シアン落ち着いて!? とりあえず今日は家に帰りましょう?!」
何とか宥めようと声を掛けながら、今捕まったらマズい気がして近づいてくるシアンから慌てて距離を取る。が、悪いことにここは塔の上だ。
座ったままズリズリ下がるもすぐに屋根の端まで着いてしまい、それ以上の逃げ場なんてない。
ちらりと後ろを見ると何もない真っ暗な空間が広がっていて、ヒュッと息を呑みながら屋根についていた手に思わず力を込める。
ーーガシャリ
「…………へっ?」
不穏な音とともに、体を支えていた腕の下がなくなった。
崩れた屋根と一緒に体が落ちていく。
「キッ、キャアアアアァァァーーーー!?!?」
「ーー!? ソフィーッ?!」
咄嗟にシアンが手を伸ばすが間に合わない。
背中から前に強い風が打ちつけられるのを感じながら、私は暗闇の中に吸い込まれた。
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